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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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二話目 食文化ってすごいよね。③





 さ・あ・て。本日のお昼ご飯は村の皆と愉しく鉄板焼きと参りましょ。


 メニューは、沢山のお野菜と私特製の焼肉タレに漬け込んだミニュウという六本足のプックリした牛柄の豚擬きのお肉。食感は柔らか目の馬肉に近い感じかしら?


 大きめの深皿に沢山の茸とぶつ切りティハを入れて、山羊ミルクから作ったバターとお酒を少々まぶしてからハーブを加え、蓋をしてから中火にかけ暫し待ちます。

 いい臭いがしてきたら様子見して、かるーく混ぜて、シッカリ火が通っているのを確認しましたら『ティハと茸の蒸し焼き』完成。お味噌とミルクに薬草を加えた味噌ダレと柑橘果汁醤油を用意してますからね~、お好みでどうぞ。


 私が寝転げる位の鉄板二枚で、自警団の皆様が総出で交代しながら焼き係を担当。下ごしらえや簡単なお惣菜は、私が火を付け鉄板を温めている間に村の奥様方で完了という超ファイン連携プレーを披露。どこの職人技かしら。更にお勉強の終わった子供達まで参加したから、村祭り並みの賑やかさになりました。


「お昼ご飯なのでお酒は駄目ですよ。午後のお仕事が終わってからにしてくださいね~」


「あいよ、ほらちび竜ちゃんもシッカリ食べな。さっきから配ってばかりじゃねーか」

「子供達まで配り終わったら食べますね、今日はもう一品用意してますからね~。」


 子供が参加すると賑やかさが増すのはどこも一緒なのね~、なんて思いながら給仕してたら。


「この味付け、かぁちゃんと何が違うんだろ。」

「くどくなくて、こくがある。」

「キールさんなら知ってるよね、教えてよ」

「あらあら、自分達で当てたらって条件ですよー。教えてもらったらペナルティがつきまぁす」

「げっ、先生来てたのかよ」

「チビ竜ちゃんのご飯に外れはありませんもの」

「うがぁー、わかんね、チーズじゃねーし、つかこれ、俺らの知ってる材料なのかよ」


…って、会話がきこえるんですけどー。


「マミちゃん、マミちゃん。あれってなぁに?」


 蒸し焼きを配るついでに、イェライトちゃんと話していたマミちゃんにきいたら。


「チビ竜ちゃんのご飯研究会だそうで、今回は味付けに使われたモノを当てるそうですよ」

「…何ですかソレ?」

「子供らが自発的に作った集まりだとよ。因みに一昨日のキーさん宅の朝御飯は難問らしいな」

「なんでそんな事知ってるの~!」

「そりゃ美味しいからだろ」


 答えてくれるのは嬉しいケド、イェライトちゃん。ゲラゲラ笑いながらってのは嬉しくないわー。それと隠れて笑っているの、バレてるからねマミちゃん。


「うがぁー、わかんね、わかんね、わかんね~!」


 分かんないと思うわ。彼らの前に在るのは三種類の柑橘果汁を混ぜて、一晩漬け込んだ出汁醤油と合わせた代物だもの。況してやそのお醤油も幾つか合わせてるなんて、分かんないと思うわ。


 まぁ、自分好みに好き勝手した結果なんだけどねぇ。


「まさか、その前日の夕御飯の内容までやっているの?」

「あれはセンセーがレシピ公開してたから大丈夫だよ。いゃぁ、あのお茶請けは旨かったなぁ~」

「マミちゃん、ほ~んとピクルス好きね。てか、レシピ公開ってなに?」

「ウドンっての、あれだよ」


 イェライトちゃん何で知ってるのよ? 作ったの一昨日だよね?

 昨日麦飯定食作って、二オブさんとステアさんが朝っぱらから訪ねて来たでしょ。んで、二オブさんが爆睡してるから、ステアさんの代わりに見張りながらお喋りしたり、お手伝いしたり、…位よね。


「昨日チビが籠っている間に、センセーがせっせと作って村の人に試食させたんだよ。いやありゃ良いねぇ」

「うや?」

「あ、それとチビ竜ちゃんの庭にあった石材は全部貰ったよ」

「え、全部?」


 正確には全部じゃなくて商品化出来そうな大岩を、マミちゃんとセンセーで分割して運び込み、キーさん宅に運び込んだんだそう。何でもウドンを作る行程で、麦を粉にする石臼に興味が集まったんですって。


 チビ竜ちゃんが考案したご飯作りの道具だと、センセーが声高に伝えたみたいで、何故か奥様方と一部の方々の心の琴線にびびびっときたらしいの。


 とりあえず各家庭に1つ在れば文句は無かろうという安直な考えで、私の庭にあった石材は綺麗に片付いたそう。私の分はセンセーが家に運んでくれたけど、お漬物用の石まで持って行ってないわよね?




       *****




 本当にこの村の皆様は仕事が早いったらないわー。

 あの鉄板山盛りにあった野菜炒めも、大鍋三杯分の蒸し焼きも、副菜に用意された沢山のオカズ達まで、キレーに片付いてしまいました。

 あるのは、未だに目覚めない二オブさんの分と、私の野望第三弾だけという状態なのです。


 小麦粉に刻みキャベツと玉子、だし汁にすりおろした山芋、乾燥させた沼小エビと天カス加え、鉄板の上で均一に広げ焼きます。


「おおぅ」


 別口で一口大に切った燻製肉を炙り、塩胡椒を軽く降っておきます。


「な、何かすっげぇいい臭いすんだけど」


 じうじうじう…、火にかけた鉄板の上で美味しそうな音と、香ばしい香りはたまりません。


「確かに! てか一口くんねーの?」


 そろそろひっくり返して、ちゃんと火を通してから一口サイズに切り分けて、お皿に盛り付けます。


「チビちゃん一口チョーダイ」


お好み焼きのソースはないので、お手製甘辛タレに燻製肉を乗せて、楊子で留めれば『ミニお好み焼き』。いただきまーす。


「おい、誰か酒持ってこい!」


 はむ、もきゅもきゅもきゅ。ちょっと塩味が濃かったかなぁ。じゃあこの前貰った鰹節ならぬ鹿節擬きと、適当に作ったマヨネーズを足して。


「チビ竜ちゃん、それは何ですか!!」


 はむ、もきゅもきゅもきゅ。まぁ、いけるかなぁ。やっぱりソースは最重要事項ね。今回はとりあえずこれで…、うや?


「何でそんな怖い顔してるの?」

「「「「「「ソレなに?」」」」」」

「私の野望第三弾、『お好み焼き』未完成品よ」

「「「おこのみやき?」」」

「今回は燻製肉を載せたけど、別なお肉だったり、チーズや魚の玉子、辛い漬物とか、好みの具材にしてもおいしいの♪」

「その白っぽいものと、木くずみたいなのは何ですか?」

「卵とリオ油とエルルーの果汁で作ったマヨネーズと、貰い物の鹿節を薄削りしたもの。使う?」

「てか、1つ食わせろ」

「あれだけ食べて、未だ食べるつもり?」

「んな、旨そうな臭いさせるのが悪ぃわっ!!」

「一口味見させてよー!」


 そんなやり取りがあって、あれよあれよという間にお好み焼きは皆のお腹に収まりました。玉子があんまり無かったので10枚くらいしか出来なかったけど、味付けは良かったみたい。そうなるとソースの改良、頑張らないとね。

 食後のお茶を啜りながら反省してると、宿屋の二階から何かが落っこちる音と呻き声が聞こえた気が。


「あらあら、ニオブさんの目が覚めたみたいね」


と、宿屋の女将さんことステアさんの一言で「あら」と、私も気が付いたの。



※ミニュウ=六本足のプックリした牛柄の豚擬き。食感は柔らか目の馬肉に近い感じ。この世界の家畜。

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