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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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四話目 おねだりされました⑤



※注意喚起:この話は架空の作り物の話です。作中、非常に偏見と独断に満ちた持論展開がありますが、あくまでもちび竜の思い込みですので、くれぐれも読者の皆様は毒されませんようお願い致します。by作者




「いいですか、人生における最大級の祝い事は生誕、成人、婚姻です。


 誕生とは家族となる存在との出会いの場。

これから庇護する存在の傍らで、人として生活する様々な決まりや常識を学んで、人として生きて行くのに必要な様々な事柄を、失敗して悔しさや悲しさを身体を張って覚え、成功して嬉しさや楽しさを実感しながら自身の感情や体験を繰返して、社会の在り方や人としての付き合い方を学習していくんです。


 成人は、庇護される存在から自立出来る存在になった証。謂わば世間から認められた【一個人としての存在】となった事。

今まで学んできた事柄が、十分その身に付けられたと、傍らで誰かの指導が必要ないと認められた。ぶっちゃけて云えば、保護者が居なきゃ出来なかった事柄をひとりで出来るってふんぞり返れるって事…よね。


 婚姻はうがった見方をすれば血筋の掛け合い、出会いの場。

先祖伝来連面と続く血族の連なりを新たな血筋に混ざることで、新たな血統の可能性を生まれさせる家同士の思惑! クッソ重いガッチガチな思想を持つその一族の有力者たちのはためーわくな思い込みと、悲願とか故人の願いだとか血族のご立派大層な思い込みだとか、やたらめったら本人の意思に関係なく決められた事だからとか言って愛の無い結婚したりされたりの誰得話、かと思えば本人同士の思い込みで駆け落ちしたり心中したりした周囲にとってのはた迷惑、そんな愛憎どろっどろ溢れる悲喜交々なドラマティックな展開が、今をときめく社交の場を飾るご婦人方の主な会話内容だと聞きました」

「誰がそんな事をちび竜ちゃんに聞かせたんでしょうね」

「私のタングステン村における情報収集能力は村のお喋りさん達ですから。真偽はともかく結婚に夢を持つのが男であれ女であれ、相手に希望を持つのは悪くないの。男なら庇護欲抱く相手とか、女なら包容力ある相手とか。ぶっちゃけこんな相手と結婚したいって希望が有るのは当たり前。無い人いてもいいと思うけど。

 大人でもこんな感じで人との付き合いは難しいと感じているのよ、無論そうじゃない人だってい居るでしょう。それが大人よりも好奇心の強くて自我の調整が出来ていない幼子なら尚更憧れだって強いはず」

「…、なぜ幼子の話に?」

「幼子達はそういう思考は、格好いいとか、すっげ~とかダイレクトに心に来た強い感情は大人になっても残っているもの。憧れとかはそんな強烈な印象から派生することだってある訳でしょ?

 憧れから夢を抱いて将来を目指す、そんな風に大人になった人は沢山いると思うの。理想を胸に懐いだきつつ大人になった人は、其までに培った経験やら思想やらに染まりつつ、時に否定されて、時に肯定されて、自分だけの「格好いい」の定義誰もがそれぞれに持っている筈だもの」

「まあ、そうだね」

「結婚に夢見るのは世の大人にのみならず、幼子だってあこがれる訳で、勿論私だって憧れます。素敵な旦那様とかわいい子供たちに囲まれた幸せな生活、実りある豊かな畑、仲良く茶飲み出来るお友達やご飯を一緒に食べてくれる仲間たち。」

「ちびちゃんの旦那~ってところ以外は、今の処、叶ってない?」

「女の子ならそんな未来に夢見ることも決してない訳じゃないわ。好きな人の花嫁さんになりたいって憧れとか」

「うちの娘は難しいと思うわ。婿さんに期待しましょうか」

「その方が現実的ね」

「…、ミーナおねえちゃんの個人的嗜好はこの際置いておいて。

ともかく、女の子の憧れる結婚は綺麗な衣装、カッコイイ花婿、互いの家族や多くの人の祝福と美味しい料理と楽しい時間に満たされた宴なんです。

 一村人ですらこんな憧れを抱く宴ですよ、それが一国家の姫君結婚式なんて、どれだけ華やかな演出が施されるか解かってるんですか?」

「国内流通の1.8割上昇が現在進行形で確認はされてるわね。最終的には3.4割にまで跳ね上がると予想されてます」

「詳しい情報をご提供頂きありがとうございます。

そんな一世一代の晴れ舞台とも言える宴出される茶色いド田舎飯、どんびきですよ、どんないじめですか。人生最大級のイベント、しかも自分自身の結婚式ですよ。主役の一人ですよ。最愛の旦那さまと手に手をとって、大勢の人々に祝福されて、これからこの人とささやかでもあたたかい家庭を築いていきます、どうぞ皆様よろしくお願いいたしますと、幸せ一杯で微笑んでる新郎新婦と、そんな大事な晴れ舞台の宴に参加する人に、さあどうぞと振る舞われるのが茶色に染まったド田舎飯なんて、笑えませんよ」

「あら、この軽食すてきよ」

「普通に店に出してもおかしくないと思うが」

「どどんと振る舞われる王宮のきらびやかな料理に慣れてる皆様からしたら、こんなド田舎飯なんて、そりゃぁまさに珍品でしょう。色鮮やかな前菜、芳醇な汁物、焼き色も美しい肉料理、あっさりとした箸休めに、量も味も満足するメインディッシュ、食後に出される爽やかな甘味と茶の一杯。そんな素晴らしいコース料理に野暮ったい見た目の田舎ご飯が混ざるなんて、王宮に居る超一流の料理人が意地と根性と誇りにかけても許すわけ無いでしょうが」

「この団子料理なら汁物と合わせてもいけるだろう」

「この煮物の味わいなら魚料理との組み合わせはどうです」

「この肉饅頭のレシピ使えるわ」

「結婚式における幸せな二人の姿と料理は、まさに宴を飾る最大の見せ場。参列者には最高のおもてなしなんですよ。そんな女の子の一生に一度の人生の晴れ舞台に、大好きな旦那様とご一緒に、祝いに集まって下さった方々との、宴に出される料理が茶色一色の田舎料理なんてどんな仕打ちかって泣き崩れますよ。況してや一国の王女さまのお輿入れの宴ならもっと彩りも味も品も相応しい品がどどどぉーんと有るでしょ~が!」


 力説する私を冷やかすでもなく冷静に突っ込むのはマミちゃん、宰相さん、村長にセンセ-、ワイフちゃんにミーナおねえちゃん。話さえぎらないでくれてありがとね。

知らない女官さん、国内流通ってどうやって出してるの?

壁際にいたのって料理人さんですか、 なにど田舎料理堪能してんですか。


「姉さんうどんがうまいって言ってたぞ」

「油揚げ乗せたうどんだね。僕もあれ好きだな」


 レン君とセス君、王族の宴に出されるきつねうどんってどんな罠よ。せめて小えびと豆の入ったかき揚げうどんにしようよ、あれなら少しは華あるよ。てか、王女様うどんすきってなに。これ罠なの?


「盛り付け次第で見映えなぞ幾らでも変えられますが、あの味と、料理方法はかなり独特です。私も目新しさに引かれましたしね」


 宰相さん、目新しさに引かれたんだ。ってか、参列者が揃ってお箸でズルズルいただく光景なんて想像したくないわ。駅の立ち食いそばじゃないのよ。


「そもそも私、結婚式事態参加したことも見たこともないのよ。どんな定番のご馳走があるか、どんな料理が良いかなんて知らないし、いつ頃の式になるのかも知らないわ。春先までなら雪で間違いなく村に引きこもるし、初夏を迎えるまでは愛しの家庭菜園から離れる気は一切無いわよ。況してや今年は幼い子供達もいるもの。お家を留守にする気は無いから引き受けません出来ませんやりません」


 背負いきれないでっかい責任はおばちゃん、背負いません。潰れて回りに迷惑掛けるのがオチだもの。


 それに雪の積もる季節は、引き込もってじっくり土を捏ねて、焼き物をするのにうってつけなのよ。お水がチョーッとだけ冷たすぎるけど。

 3日に1度は村に降りて、昼間だけお喋りしたりご飯食べたりお散歩したりするけど、基本はお家に引きこもり。今年はコーヒーカップとソーサーを作って増やすのよ。あと鍋焼うどんもしたいから専用の土鍋も作るのよー、おほほっ。

 火吹き竜は冬眠しないって聞いてるし、今年こそは村の広場にかまくら作って、御座を敷いて火鉢を載せて、その上で鍋焼うどんを作って食べるのよー。お餅はないから、団子を入れた善哉もいいわ、あ。チーズフォンデュも捨てがたいわね。ひまわりサイズのタンポポをこっそり珈琲にもしたのよ。春のお祭りでお披露目するの。ゼラチンか寒天が有ればゼリーにして、ホイップクリーム添えたら良くない?


「なにそれ食べたい!」


 あとは朝作ってもらった橇を見ていてわかったけど、ハンドル付きの橇って結構材料が必要なのよ。数を作るのは事前にある程度の材料を確保しないと、最悪壊れた家屋の修繕が疎かに成りかねないわ。コース設置用の網も杭も必要だし、旋回コース用のポールだって欲しいわ。だとしたらスキーとかスノボの方がいいのかしらね。でもそっちの方がスピードも危険も遥かに多いのよねー。取り敢えず保留かしらね。


「なんじゃそりゃ。詳しく話さんかい」


 そもそも雪積もった村内の移動は基本的に歩き。坂道ばかりの村の中で移動手段にスキーみたいな物が無かったのも、よくよく考えてみれば頷ける話なのよね。理由はタングステン村に傾斜のない場所が殆ど無いのと、小さな台車位しか通らない小路では、危険しかないもの。

 お家の中と村の広場と斜面に有る段々畑を除くと、勾配に緩急差は有れどほぼ坂道。なので雪靴と呼んでいる滑り止めの付いたシュロみたいな木の皮と板を張り付けた靴を履いて、深雪の上をのっそりのっそり歩くのが殆どなの。だから雪掻きは生活必須だし、そうでなくても雪道は気を付けて歩かないと危ないからに欠かせない

 まあ健脚な方々ばかりで、寝たきりなんて方は居ないのはこの村の自慢話第3位。1位は豊かな自然とモコモコ羊の群れよ。2位はチーズと人情。勿論私の独断ランキングだけどね。


「よくわかっておるのぅ」


 橇遊びが無かったのは、多分単純に手に入る物資が少ないのと、雪降る量が半端無いし、あったら危険だからじゃないかしらね。無ければ興味も湧かないだろうし。


「そりゃそうだろ」


 皆様に改良を重ねて、数を増やして、子供達と競争するのも考え中よ。でもライオンサイズの風ちゃんと雷ちゃんが乗るにはかなり大きな橇でないと無理だし、何よりもそれを移動したり保管したりは私では無理難題。いざという時に使うにしたって、先ずは当人達がやりたいかどうか確認よね。そして材料と保管場所の確保が出来なきゃ無理って話。


「うちの娘達より二回り位大きくなってもまだガキか?」

「ルムックは生まれてから三年ほどで成獣になりますが、生き延びるために身体の成長は一年でほぼ大人と同じになるそうですよ。それまでに大体親離れしますが、身体はかなり華奢で、徐々に身体が作られ、狩りの技術が身に付いて一人前になるそうです。なので希少なルムックの幼年期の姿を見れるのはまさに今だけ。幸運とも云えますね」

「うや? オーレ爺ちゃん、見た目と中身が一致しないのは目の前にいる王子様達でしょーが。うちの子にケチつけるなんてしないでね。娘達に蹴られるわよ? ゼプス宰相さま、ほんとーにお詳しいですね。マミちゃんが舌を巻いてますよ、ってなんで独り言に突っ込みしてるの」

「面白いからに決まってるじゃない」


 うやゃゃぁぁぁ~。穴に埋まりたい。


「今更なのですが、王女様の披露宴のお料理は如何様な品を考えておられるのですか?」


 マミちゃんが私の気にしてた事を改めて聞いてくれました。

 村人の結婚式は長いので簡単に言っちゃうと、大体七品くらいのコース料理プラスデザート。それに歌だの舞踊だのがついた、飲み放題みたいな宴会って感じだけど。まぁ、楽しければいっかと云うスタイル。衣装とかは特にないけど、求婚する旦那さんから奥さんになる人に靴を、奥さんは婚姻後に旦那さんにスカーフを贈る風習があるわ。


 靴は旦那さんの独占欲で生涯を共に歩きましょうって意味で、スカーフは奥様の独占したい気持ちなんだとか。ラブラブな新婚さんには物足りないでしょうが、元日本人のおばちゃんにはこっぱずかしい風習です。うやぁぁ。


「外洋に面した国なので魚介類を主食材にした料理になります。春先の予定ですから、旬のものを取り入れた料理になるかと思いますが、カーバイト国はどのような食材がありますか」  

「カーバイト国は御覧の通り海に面していない分、薬草などの資源に恵まれてますが、とりわけ名物になる食材や調理方法はないのが実情でした。近年ここタングステンン村から発祥された数々の料理が王都ではかなりの評判だと言われていますね」

「まあ、そうなんですの」

「確かに先ほどの差し入れはどれも美味しかったな」

「見た事ない料理ばっかりで楽しいしな」


 この話の流れからその場の私に視線が集まり、夕刻近い時間からお夕飯を作る事に成りました。ええ、食堂のおばちゃんとしては文句ありませんが、国のトップがそれでいいのかと頭を抱えたくなります。メニューはこの集まりの司会進行を、当たり前のごとく仕切っている男前な王妃様の「うどんが食いたい」の一言で決定。うやー。


 ご存知の通り、非力な私ではうどん打ちは無理。分かっている村の人から提案で、腕力有りそうな護衛の方々を何名かお借りして、村人指導の大人数でうどんを打ってもらいました。その間に私は急いで帰宅。自宅にある夕飯用と明日の差し入れ分のお揚げをかき集め、自家製醤油に干し茸を引っ張り出し、さて運ぼうとしたところで、雷ちゃんがひょっこり戻って来たので簡単に説明。

 そしたら雷ちゃん、麓まで運ぶのお手伝してくれるっていうの。ぅやぁん、ホントにうちの子良い子よねー。も、自画自賛でも贔屓目でものたうち回って自慢して惚気たいわ〰️。


 私は干し茸は風呂敷にくるんで背負い込み、醤油の小壺を抱えて準備オッケー。お揚げは大きな籠に並べて重ね、雷ちゃんの尻尾で器用に引っ掻けて私もろとも運んでくれるそう。うぅ、頼もしいやらありがたいやら。雪道なのに軽やかに進む雷ちゃんのおかげで、あっという間に村の広場までに到着! 大きな籠を持って飛ぶのは、ホントは危険なの。どーしてもやむを得ないって場合のみの手段だから、ホントに助かっちゃったわ。お礼に夕飯メニュー1品増やすからね。


 戻った私は干し茸を戻しながら、特製ポン酢を仕込む。村の奥様方有志はザカザカお野菜やら寒干し豆腐やらお肉やら運び込んだと思ったら、さっさか洗って下ごしらえ。お鍋に水を張って火を着けて湯を沸かして肉を切ったり、出汁を取ったりまぁ手際が良すぎ。

 其々の家庭の分のご飯の支度しながら、たったの二時間足らずで会議参加者プラス20人分位のお代わり迄キッチリ用意。味付けは私がしたけど、それ以外の作業をすぱぱぱぱぱって終わらせて、じゃっ。って帰って行くのよ。私がしたのは献立と必要な材料を告げて、味付けやら一寸したお手伝い位なのよね。上がったうどんもホントに良い出来で、個人的には醤油と生卵で食べたかったわ。ルムックちゃんはこの食べ方がお気に入りだけどね。


 そんな訳で配膳の際にはくまなく「お残しは許しまへんで!」をきっちり告げましたとも。本日のメニューは冬に嬉しいお野菜たっぷりのほうとうモドキ。勿論味噌仕立てです。副菜は寒干し豆腐と鳥挽き肉のハンバーグとポン酢を掛けた温野菜サラダ。このハンバーグは、マミちゃんもうならせた自慢の品。ごぼうと戻し茸を細かく刻んで入れてあるからお肉は半分ぐらいしかないけどボリュームあるわ。


 そして村の奥様方有志が指導し護衛さんが手がけた手掛けたうどんは、出来立てだった事もありとても満足感ある仕上がりに。もっちりとしたシコシコ麺は食べ応え十分の代物ですので、司会進行は満足したみたいで豪快にお代わりされました、うやぁ!

 勿論ルムックちゃんと私の分はしっかり確保済み。持ち帰るの伝えてあるし、ご褒美の茶碗蒸しも作ってあります。えっへん。


 ただ、みなさん揃ってスプーンとフォークでうどんを食べる光景は、個人的には凄まじく違和感が。暇が出来たらレンゲ、作ろうかしら。


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