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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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三話目 ちび竜のオトモダチ♪②



 相変わらず景色が見えない状況ととゴトゴト揺れる感覚が続いております。埃臭い麻袋は何やら仕掛けがあるようで火が全く吹けません。ってことは私を火吹き竜と確信して捕獲しているって事ね。

ただ詰められてぶーらぶらしてるだけで縛られてないしどこも痛くはないから、多分下から網だか投げ縄を投げつけて、墜落して気絶した私をどっかの金持ちだとか収集家とかに密売するんだわ。ふふふふふ、私が何も持ってないって本気で思っているのかしら?

 それにしてもいま何時かしら。森の中みたいであんまりよくわからないのよ。あんまり遅いと飲み会に間に合わないわ。うん、暴れちゃおうかしら?


『くそ、あいつさえ捕まっていなければ…』


 あらあら、なんか物凄く近くで声が聞こえるんですけど?


『あの。だれか居ます?』


 取り敢えずひそひそっと話かけてみます。定番のお約束ですね、マミちゃんの言語解析魔法のお陰で羊達とのコンタクトは勿論、昔は魔物さんとお話した事もあるんですよ。


『誰だ』

『麻袋に入ってます火吹き竜です』


 まぬけな自己紹介だって認識はあるからね。


『火吹き竜? その大きさで?』

『何せ80に満たないので』

『…にしても小さすぎるだろ。出られないのか?』

『何故か火が出せないだけです。ちょっと刃物を使いたいんですが、貴方と私の距離はあります?』


 刃物と言っても刃渡り10㎝もない小刀です。里山で便利道具と云えば前世の子供のころ、文房具屋や駄菓子屋で扱っていた鉛筆削り用の小刀一択でした。私は使い勝手の良いこれをグレーちゃんにお願いして作ってもらったら、マミちゃんが持ち運びしやすいようにと、お手製の魔法をかけたスカーフを作成。このスカーフに小刀を巻いてしまうとあら不思議。ナイフが消えて細く丸めたスカーフだけが手元に残るのよ~。


 これのおかげであちこち飛んで行っても邪魔にならないからとっても便利。カバン代わり使っているの。


『…俺の真上にお前がいる。お前の入ってる袋位の高さだな』


 ってことは、このまま麻袋を切ったら下落。


『ちょっと落っこちますけど、いいですか?』

『かまわん。その大きさではお前の方が怪我しかねん』


 了承を得たので小刀出して、目の前の横糸をぶっつり!

そのまま縦糸に沿って足元に向かって下ろすんですけど、不安定な足場でこの作業って切りずらいって!


『ふんぬぬぬぬ!』

『……お前、非力だな』


 ええ非力です。でも諦めちゃったらそこで終わっちゃいます!ふんぬぬぬぬぬぬぬ!


『…じっとしてろ』

『やです!ふんぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!』


 やた!少し切れた。あともう少し、と思ったら。

すぱ!って足元がいきなりなくなりました。


ぽふ!

『うや?』


一瞬のうちに背中から体を包み込んだのは茶色のふわふわ~な感触。あれ?


『まだ赤子じゃないか、何を意地になる』


 視界に移ったのは薄茶の大きなスカンク、そう。


『…ルムック?』

『物知りだな。火吹き竜』


 中型犬位のルムックがフワフワ尻尾で受け止めてくれたようです。

この大きさなら、まだ親元で暮らしている筈です。ちょっとひねた言い方してますが何か安堵した顔が、強がり発言しているだけだとわかります。


『ここがどこか分かるか?』

『私が居たのはカーバイト国のウェルド山脈近くにあるタングステン村よ。捕まって直ぐなら村からあまり離れていない筈ね』


 ちょっと詳しく話を聞かせてもらったら、彼、なんと生まれてまだ6か月のお兄ちゃんでした。二週間ほど前に突然人間達にに襲われて一緒にいた仲間も捕まったらしいの。私ルムックの詳しい生態はわかんないけど、仲間って弟分らしいわ。


『もうすぐ日も暮れる、あいつらも止まるから静かにしろ』


 え、もうそんな時間なの? あ、毎月恒例の飲み会…つぶれちゃったかしらね、今頃大騒ぎになってたりして。ルムック兄ちゃんの言う通りゴトゴトした音が止んだので、思いっきり息をひそめてます。


『…息、止めなくていいから』




       *******




 外から聞こえる音と匂いから、密猟者の人数は五人、冒険者モドキと思われる。途切れ途切れに聞こえる彼らの会話から連想すると、おそらく高額報酬に目がくらんで、どこぞの貴族様の“珍獣コレクションを充実させたい”という依頼を受けた模様。しかも他にも複数の“珍獣捕獲”に動いている冒険者モドキがいて、中には捕獲と運搬に別れて参加している連中もいるらしい。早い者勝ちで報酬を受け取れるから、そろそろ急いで依頼主のもとに行くかと相談しているの。


 彼等の話しぶりからすると、現在私を含めて八頭の珍獣が、彼らによって捕獲されている状態。

他の珍獣達の声とか気配が全くしないのは、何かしらの方法で積み荷が魔獣と悟られないようにしているから。なんか聞けば聞くほどむ~か~つ~く~!


『おちつけ』


 私は血生臭いもの、生肉、虫全般が苦手。だから火を通した物とか、お野菜果物を食べている。

他の火吹き竜はどうなのかは知らないけれど、餌と称して投げ込まれた血まみれ生肉に気絶し、それを見たルムック兄ちゃんが慌てたのも仕方ないと思うの。


 何がムカつくって、その様を見た密猟者がげらげら笑いながら馬鹿にした事が許せないのよ!

“火吹き竜が生肉見て気絶した”だの

“それ見てルムックが慌てた”だの

“がきんちょ”だの

だからそれが何なのよっ!そのがきんちょ捕まえて金稼ごうとしてる輩に言われたくないわっ!


『馬鹿に付き合う必要はない。機会があったら纏めて返してやるさ』


 器用に生肉を外に蹴り出して気絶した私を介抱してくれたルムック兄ちゃんは、かなり我慢しているんだと思うの。ごめんね、こんな頼りないオバちゃんで。せめてルムック兄ちゃんのお仲間さんの事が分かれば少しはイライラも収まるのに。


『お前、怖くねえの?』

『怖がってたら美味しいご飯は食べられないの』

『生肉であっさり気絶した癖に』

『血の匂いに弱いだけよ。後、虫全般、生のお魚も苦手よ』

『…怖くはねーんだな?』

『怖いのは知人が居なくなる事かな…、隣にいた人が急に居なくなるのは怖いわ』

『お前、人に大事にされてんだな。仲間は居ないのか?』

『旅の途中で火吹き竜に何度か会ったぐらいかしら。南の火山の近くに生息しているとは聞いているけど、他は知らないの。初めて会った生き物がマミちゃんだったし』


 そういえば、タングステン村以外の場所でマミちゃんと離れるのってこれが初めてじゃないかしら?

マミちゃん、きっと心配してるわね。




       *******



 フィヨッ フィヨッ フィヨッ フィヨヨヨヨヨヨヨヨッ


 日没からおよそ二時間くらいに聞かれる、アラスラの声がするってことはもう辺りは暗がり。木々が少ないタングステン村では滅多に聞くことはないけど、アラスラのいる処は豊かな森って云われるくらい安全の目安にもなるわ。

 アラスラは小さな猿?の身体にチワワみたいな耳がついていて、私の苦手な虫が好物なんですって。私には益虫ならぬ益獣として是非とも身近に居て欲しいけど、タングステン村には彼等が暮らせる森が無いからねー、残念だわ。こっちの世界で黒いヤツを見かけた事は無いけど、二本の触手を持ったマミちゃんサイズのムカデなら見た事はあるの。見た途端、私は気絶。マミちゃん曰くどこかに逃げましたって言っていたけど、本当はどうなのやら。


『アラスラの声が近いって事は、その近くに魔物は居ない』

『ルムック兄ちゃん、物知りね』

『森に暮らす生き物なら常識だ。それより穴開いたか?』

『勿論。後は任せたわよ?』

『やるぞ』


 ばきゃっ! っと情けない音を立てて壊したのは、私たちの入っている木箱の奥壁。誘拐犯達が静かになったと思ったのは間違いで、音消しの魔術がかかった網が荷馬車に掛けられたんですって。要するに私達の立てる声や音は一切外部に漏れないようにするので、荷馬車に固定された木箱に入った私たちがよその人にばれないようにするための仕掛けなんですって。んまー、なんて中途半端に賢しいのかしら。


 なので逆にこっちが脱出の為にばきばき木箱を壊しても、あっちは気がつかない訳。ルムック兄ちゃん蹴りの強さは半端なかったわ~、うん。


 開けた穴から出てみれば、隣に似たような木箱が四つ。この中にルムック兄ちゃんの仲間がいるかと思うと居ても立っても居られない。


『ルムック兄ちゃん、どの箱あければいいの?』

『分からないから片っ端から開ける!』


 この木箱、底面はかなり狭く壁面はその三倍は有るのよね。その内側はやたらとツルツルしていて引っ掻く事が出来なかったの。でも外側から見たら木の幹をぶった切った丸太に、太い網縄が掛けられて台車にくくりつけられているの。


 よくもまあ考えたわね、傍目にはただ木材運びされているとしか思われないじゃない。音消しの魔法が掛かって居るなら、余計バレない可能性高いもの。


 さてさて、まずは小手調べでかるーく火を噴くわよ。


ぼっ!!


 よし。続いて近場の木箱に近付いて、細いブレスで壁面に線を引く。引いた線に小刀を直角に当てて引く。うりゃあっ!


ガリリリリリリッ!

ガリリリリリリッ!

ガリリリリリリッ!


 ある程度繰り返してバッテンをしっかりと刻んだら、中に向けて危ないから下がってねーと、一言掛けてからルムック兄ちゃんにバトンタッチ。


 ルムック兄ちゃんはトトンッと踏み込んだと思ったら、なんと華麗に後ろ回し蹴りを披露。正確には属性を持たせた攻撃と足技の二連撃だって!


 音も『シャ、カラン』ていう軽い音を立てて呆気なく空いた穴にヨッシャーと、拳を振り上げたのは見なかったことにしてね。


 そのまま次の木箱にバッテン刻んでは、ルムック兄ちゃんにお任せ。ちらっとみたところ中にいたのは兄ちゃん位の真黒な狐さん。次の箱にいたのは何と亀。更に別の箱には三羽の鳥?みたいのが出て来てびっくり。みんな次々に夜の森に飛び出していきました。この調子でさっさと解放するべきと頑張っていたら有ることに気が付いたの。


 荷台に乗っていたのは小さな木箱三つに大きな木箱に二つ。つまり残りは一つなんだけど、何だかやな予感~。この箱だけ色違いでなんかどよーんとしてむずむずするの。私の苦手って言ったら虫とか、生臭いのとか、おばけとか、かなりあるわよねえ…。


 うん、今回は我慢。後悔…、したくない。気絶してもいいから、おばちゃん我慢!


『火吹き竜。何して、る?』

『私は出来る子、頑張れる子、気持ち悪くても我慢出来る子。血生臭くても頑張れる子。虫が出てきても我慢できる子。お化けが出てきてもやると決めたらやるのが私!』


―――うりゃぁぁぁっ!

 根性よ、気合いよ、今だけ私に勇気をぷりぃず!

 後で吐いても気絶してもいいから、後悔だけはさせないでっ!


 かなり執念と気合いを込めて刻んだバッテンから、さっきよりも濃密でいやんな気配が漏れ出す。ゾワゾワしていたのが、ぞわわわわっと、すればルムック兄ちゃんも何か気がついたみたい。


『…なん、だ?コレ…』

『ルムック兄ちゃん、早く壊して!』


―――覚えがある、これ。


『人が獰猛な魔獣を捕まえて置くための仕掛けよ。コレに掛かると、くらくらして気持ち悪くなって動けなくなるの。』


 コレってかなり危険な代物で、国の許可がないと持つことを禁止されているんじゃなかったっけ?

裏ルートで紛い物はあるけど、あまりいい話は聞かない。例えばかな~りヤバイ値段で取引されてるとか、物理的強度は無いけど魔術強度が半端なくて、術が安定してないので捕まえた魔獣が拷問かけられたかのような暴れ方をするとか、ひどいものは一日で狂い死にしたしたとか、とにかく悪評以外聞いたことがないの。


 もっとも情報元はマミちゃんとかせんせーとか、ニオブさんとかだからね。紛い物自体、見たことないから判断は出来ません。


『前に試させて貰ったから判るの。それよりもコレ、ひどいから早く…』

『下がってろ‼』


 言うか早いかルムック兄ちゃんの蹴りが飛ぶ。これで助け出せると思いきや、壊れた木箱の中にはまた壁がある!?


『ぶち破る‼』


 ルムック兄ちゃんは全身に風を纏って突貫した。うわぁぁぁ?!

 




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