〜第2章〜第1話
──ある日、どこにでもいる主人公の前に
異世界へ繋がる道を用意されました。
好奇心に駆られた主人公は
お別れも言わず冒険に行って
知らない世界に迷い込むのでした。
──子供の時にこんな話を読んだ気がする。
当時の僕は冷めてる子供で
子供ながらにその展開に大きな疑問を抱いたものである。
まず異世界とか、リアルティの無い設定にダメ出し
しかも異世界に行ける話は決まって子供
何で大人は選ばれないんだ?
見た目や年齢だけで選別するなんて、それこそ偏見じゃ無いか?
しかも、その招待に主人公があっさり乗る所が有り得ない。
普通は、恐がるとか存在を否定するってもんだろ
何で知ってたかの様に簡単について行くんだ!
……とまぁかなりのひねくれたガキだったと言う事が分かるだろう。
人生は分からない。
平凡な僕が、自分が昔否定してたのと全く同じ展開になっているとは……
ただ違うとこと言えば
扉の奥にはファンタジックな雰囲気が全く無いと言う事。
「……………」
灯りこそあるものの、壁一面は真っ黒で中央に木製のテーブルが並んであるだけ
そこに居る人びとはざっと100人くらい。
そう、部屋自体はとても広いのだ。
「でもさあの大型スクリーンはファ…ンタジック、かな?」
「それは…ファンタジックと言うか?」
大きな疑問である。
あぁ…でもそこに居る人々は多種多様で
国の違いはもちろん
生きてきた時代が違いそうな人が殆どだ。
例えば桜雪の隣に居るのゎ紫色の煌びやかなドレスを着た女性だ。
多分ヨーロッパの貴族あたりだろう。
そしてテーブルに手をついてキョロキョロしてるのは
昔の神様が着てるような白い布を着こなす、白髪で太っちょなお爺さんだ。
感じから古代のギリシャ・ローマあたりだろうか?
「ねっあの人は今時っぽくないかな?」
指を指した方をよく見ると
なる程、現代に近いかもしれない。
赤い横じま模様のポロシャツにジーンズ、茶髪の頭を掻きながら床を足で叩いている様子は
昔のアメリカ映画のワンシーンだ。
多分、80〜現代のアメリカ・カナダ人……
個性が多すぎる…
中には僕たちよりずっと未来っぽい人も何人かいた。
さすがにロボットや二足歩行の動物はいなかったが
本当に異世界に来たんだって実感する。
どの顔も戸惑っていたり、興味津々だったり…
恐らく僕たちと同じ体験をしたって事何だろうな。
と、ぼんやり判断していたら
「皆様こんにちは、先ずはお集まり頂きましたこと心から歓迎致します」
この建物には全く不釣り合いな大型モニターから音声が聞こえた。
そして僕は驚く。
他の参加者たちは何の違和感も無くこの説明を聞いているのだ。
さて、この意味が分かるだろうか……
つまり僕が日本語として普通に聞いてる言語を、この人達も理解出来ているという事なのだ。
明らかに日本語何か分からないだろう?という人が、うんうんと日本語で頷いて いる。
「ん?」
…数人がちらほら周りの様子を見てる?
信じられないけど、もしかして……
「お気づきの方も何人かいらっしゃると思いますが、私達・参加者内でコミュニケーションを取るために自動的に言語が自国語に変換されます」
「───やっぱり」
仲良く会話してる人もいたもんな。
「それから国の文化の違いがあると思いますが、お互いに尊重し合いトラブルは起こさないで下さい」
──感情のこもらない機械的な声。
この人は誰何だろう?
このゲームの首謀者なのか??
「それではREAL GAMEについて説明します」
どちらにせよ、もう戻れない……
僕は首筋に冷たい汗をかいていた。