第10話
すみません。
受験生という事で、更新停止させて頂きました;
入試終了までほぼ更新出来ないと思いますが、勉強頑張りますね!
今回も何時もゲームだって心の中で思っていたんだ。
常に忍び寄る恐怖は・・・虚しい様な、胸が詰まる様な思いも何度なく押し寄せてきたけど
次のゲームを待つ事が習慣の如く、何時しかそれを自然に受け止めている自分がいた。
躊躇する余裕さえ、そう思う事すら死に繋がる気がしていたし
何より、桜雪と一緒に元の世界に帰る、という大義名分があったから一々深く考える何て面倒臭い行為をしたくもなかったのだ。
だけど、別に本当に情を無くした訳じゃない。
「ナツキ」とかいう訳の分からない存在のせいで色々と振り回されたり悩んだりしたけど
僕は平凡な中学生で
元の世界に帰れば、きっと普通の日常が待っていて
──僕は知らない。
この夜が特別な日になる事を。
膨らみきった風船が弾ける様に、僕の中で何かが音を立てて弾ける事を。
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「・・・もうこんな時間か。そろそろ移動しようかな」
あれから夜は更に深まり、時計を見やれば午前12時半を過ぎていた。
朝方まで起き続けるのも辛いし、特に急かされるゲームでもないので適当な木の幹を利用して暫く仮眠を取っていたが、目覚めた後の眠気は無く、これ以上の仮眠も必要ない様に思えた。
首を2〜3回捻った後、すっかり慣れた手つきで幹にロープを巻き付ける。
木から木への移動を思い付いた時は上手くいくか少々不安だったが、同じ作業を繰り返す内にコツを掴んでいたし、案外と簡単だった。
そして時間潰しの為に移動を終えてから暫くはジッと休むのだが、そこで周りの様子を観察しても特に目立った動きはなかった。
──案内人は範囲100平方キロメートルに100匹の狼が潜んでいると言っていたけど、上から見下ろす限りではゲームが始まってから一度もそれらしき姿を見ていないのだ。
範囲が広いからなのだろうか──否、狼の移動の速さを考えれば充分に狭い。
「・・・運も良いって事か」
出来る事なら、このままゲームが終われば良い。
気を抜いた訳ではないが、この状況に切迫感を持つ事は出来なかった。
「賢治?」
瞬間──僕は小さく肩を揺らす。
長時間静まり返った空間に措かれたせいか、どうも人の気配に敏感になっているのかも知れない。
「エディか」
「やっぱり・・・月の光に照らされてるとちょっと賢治に見えないね」
そういうものか? という表情でエディを見れば、彼は察した様に続けた。
「本当だよ。賢治は元々顔が整ってるから・・・今みたいに前髪を斜めに分けたら大分印象が変わるんじゃないかな」
「それ、友達にも言われた」
「個人的に言えば、視力の低下を招くから切った方が良いと思うけどね」
「・・・自意識過剰と思って欲しくはないけど、余りモテたくないんだ」
中1の秋頃まで前髪を伸ばしたりしなかった。
だけど顔のせいで何かと騒がれるのに気付いてから、オタクの様な髪型はしないまでも、目が見え隠れする程度に隠す事に決めたのだ。
友達は、普通モテたいもんだろって笑ってたけど、別に桜雪以外に好かれたいと考えた事もなかったし、目立つ行為自体が苦手だから仕方ない。
「自意識過剰とは思わないよ。それに賢治らしいね」
そんな僕の言葉に真面目顔で納得してくれたエディに、何故か少しだけホッとしてる自分がいた。
「ところで、賢治はそこで何をしてるんだい?」
「あぁ・・・ここならもし狼が現れたとしても対処しやすいだろ」
「──なる程」
エディは感心した様に目を見開いて、何度か頷いた。
「それで君は狼に遭遇したの?」
「否、エディは?」
「遭遇したよ」
「・・・・・」
多分してないんだろうな、と思って聞き返したというのに、予想外の返答に言葉が詰まる。
「どうしたの」
「・・・そんな感じには見えなかったから」
あぁ、とエディは少し微笑んだ。
「狩りは趣味の一つだからね。本来なら1人でするものじゃないし、仕留めるには危な過ぎるけど慣れてるんだ」
そう言って猟銃を持ち上げ、これでも腕はかなりのものだと得意げにする。
「それなら大丈夫そうだな」
僕はそれが何だか可笑しくて、口元を隠しながら何時もより少しだけ柔らかく微笑んだんだ。
だけど・・・この違和感は何なのだろうか。
普段の彼と何一つ変わっていないというのに、時折僕を見る瞳や物憂げな表情がまるで──まるで他人の様で。
「あ、そう言えば気になってた事があるんだ」
「っえ、何?」
──何故、平凡が望めないのだろう。
世の中は、人の人生は平凡で溢れているというのに、何故僕が思う平凡は望めないのだろう。
「あ、別に大した事でもないんだけどさ・・・」
それは僕自身に何か大切なものが欠落しているという事なのだろうか。
「賢治って、桜雪ちゃんと付き合ってるのかな?」
後天的に──それとも先天的に?




