表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REAL GAME  作者: 野澤 ちか
60/77

〜第7章〜第1話

──たどり着くのは容易だったんだ。


独りで生きていく事には慣れている。


自分を偽る事も誤魔化す事も何でも無かった。


──だけど死の恐怖に立ち向かう術を、僕は身に付けていない。


ずっと、ずっと僕は逃げていたから。


だから負けが確定する瞬間まで、レバーを引く事を躊躇っていたんだ。


時計とレバーを交互に見やるたび僕の心は鉛の様に重たくなり、陰を落とす。


それは次第に苛立った焦りに変わり、いっそのこと床に叩き付けて壊そうかとも考える──狂気にも似た恐怖感に襲われるんだ。


あの大き過ぎる賭けを前に何人の者が正常を保てられる?


目の前にある現実を受け止めるには──僕は恐怖から逃げ過ぎていた。


そしてこんな時、ナツキなら──と考える自分に見苦しさを感じ、酷く情けなく思えたんだ。


あの決意はどうしたんだ、それじゃお前何にも変わって無いじゃないか、と。


弱く脆く、小心者で情けない自分。


──だけど君を守りたい。


自分を好きになれない僕でも、君を好きでいる時の自分なら許せるから。


例えこんな僕でも、人は大切な誰かの為なら強くなれるし、優しくなれる。


偽善でも綺麗事でも無く、本気で思ってるんだ。


それでも君の眩し過ぎる光に時々目が眩むこともあるけど、それさえ貴い程に──そう、君の美しさに痛々しく突き刺さる罪悪感さえも、僕の心を穏やかにしてくれるんだ。


僕にとっての絶対


僕の神


「──何度も彼女は君に違和感を抱いている」


だけど僕が変わらなければ、彼女は離れてしまうから。



だから僕は恐怖に震え怯え、ゲームに勝ち続けなければならない。


──彼女を失う恐怖の方が怖いんだ。



「僕としても不思議と言うか・・・や、こんな言い方は可笑しいね。只、凄く嬉しいな」


──ゲームは終わりを告げた。


新たに移動した今現在の場所で衣食住をする事、次のゲームの説明は明日の朝食の時にする事を端的に案内人に説明されてお開きという形になった。


そして案内人に、各自それぞれの部屋に案内される。


「各自って言っても俺達はこのままですけどね」


真顔で、呟く様に本音を洩らす。


僕達は今回新たに3人で共有する広めの部屋で談笑に花を咲かせていた。


ゲームに勝ち続けているからか、部屋は各段に広く完備もしっかりしており、居心地良い。


何せ洗濯機に冷蔵庫まであるのだ。


「え、賢治は嫌なのかい? バスルームが付いてても僕は今更1人で居るのは嫌何だけどなぁ。だって僕達ずっと一緒に居たんだよ。ねぇ、アリアもそう思わない?」


「・・・別にどーでもいい」


エディが同調を求めようとアリアに話を振るが、視線さえ向けず釣れない態度で返された。


冷たいとかでは無くほんとに気にしない性分何だろう。


「何か喜んでる僕の方が子供っぽく思えてきた・・・」


「い、いえ安心感もあるし喜ばしい事だと思ってますよ」


悲し気な態度で段々声を小さくされたので、慌ててフォローを入れる。


相変わらずアリアは表情を変えずに、遠くの方を見つめていたが。


「・・・ほんとかい?」


「えぇ、勿論」


「アリアも?」


「別にどーでも・・・痛」


「ほんとは嬉しいんだって。エディなら解るだろ?」


アリアが律儀に同じ台詞を吐きそうだったから、少し強めに背中を叩く。


ごめんアリア、でももう少し気を使ってくれ。


微笑みを浮かべてエディを見れば、納得いったのか、そうだね、と少し目尻を下げた。


にしても、とエディは遠い目で窓を見つめる。


「第7・8会場で残った顔ぶれに、僕はすごく驚いたな。自分が残ってるのも凄いんだけど・・・君達を見た時は胸が高鳴った」


彼が高揚してるのか穏やかなのか、よく解らなかった。解るのは只、彼の目に強い何かが感じ取れた事だけだ。


「一生出逢う事など、同じ時代の空気を吸う事さえ有り得なかった僕達が、こうして顔を合わせ友となった。これってとても不思議な話だと思わないかい?」


「・・・・・・」


アリアは夕暮れの空を静かに見ている。僕も只黙って先を待つ。


「この地球上には多すぎる位沢山の人で溢れているのに、もう何度となく誕生と死を繰り返しているのに、何故その過程の中であの日僕達が選ばれたのか。何故このゲームをするのか。疑問に思わないか? ──僕はこれを偶然と思えない。ねぇ・・・・・・強い何かを、運命を感じないか・・・?」


金色の光が部屋の中を包みこむ。


太陽が西の空に沈むのを暗澹とした気持ちで眺めていた。


太陽が必ず東から上り西に沈む様に、僕達の未来も決まっているのだろうか。


僕と桜雪があの日美術室であの絵を見つけたのも、決まっていた事?


アリアやエディと仲良くなった事も?



──ならば僕達の意志は何なんだ。


人に定められた運命を只こなすだけの世界を、何故造る意味がある。


神も四次元も魔法も運命も、あるとするなら何故世界を正さない。


「運命・・・か」


口から洩れた小さな呟きが、溶け込む様に部屋に消えた。

期末がやっと終わりました;

ですが5日後に実テがあるので、更新は不定期になると思います 汗


失礼しますっ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ