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REAL GAME  作者: 野澤 ちか
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第2話

深い深い底から


手を伸ばす事に精いっぱいの私達は


きっと何か大切な事を忘れてる。


忘れて


無かった事にしようとしてる。


『──約束だ』


でも、何も思い出せないの。


あの人の言う『真実を知る日』が来れば解るのかな?


込み上げる懐かしさの理由も


胸にぽっかりと穴の空いた様な虚しさの理由も



「うぅ・・・ん」


無意識に瞼を手で擦りつけ、うっすらと視界を広げる。


その瞳に映るのは、ぼやけた鼠色だけだった。


「鼠・・・?」


ま、待って、ちゃんと見なきゃ分からない。


さっきよりもゴシゴシと強めに擦り意識をはっきりとさせると、段々と鼠色の正体が浮かび上がってきた。


──それは灰色のコンクリート壁。


すっかり目を覚ましてようやく、いる場所が少し狭い正方形な造りの空間の中だと理解する──と同時に、これもさっきみたいな夢では無いかと疑った。


だって海中に居たのに服も体も濡れてない何て、絶対におかしいもん。


「・・・ははっ、本気で信じちゃって馬鹿だー」


よくよく考えれば、会話が出来たり普通に呼吸出来たり何て有り得ないよね。


単純な自分に恥ずかしさを覚えつつ、そっと頬を触る。


「でも、まだほっぺた痛い・・・」


──変なの。


今回の夢で私が学んだ事は


夢でもほっぺたをつねれば痛みがあるって事と


夢でつねったほっぺたの痛みは、起きても消えないって事でした。


・・・けんちゃんに言ったら絶対馬鹿にされそうだから黙ってるけどね。


「さて、と」


私は立ち上がり、壁に手を当てた。


ひんやりとした感覚が指から伝わって何だか気持ち良い。


だけどここは──まるで牢獄の様。


見る限り出入り口らしき物は備わって居ないし、殺風景な冷たい部屋にあるのは簡易ベッドと木製の机と壁に立て掛けてある鏡だけ。


「てゆーか、どうやってここに入ったんだろ・・・」


出る事が出来ないなら、入る事だって不可能だ。


それに・・・他の参加者はどこに居るのだろう?


みんなも同じ状態なのだろうか。


「・・・駄目。考えたって仕方ないや」


情報が少なすぎる。判断材料が足りないから何を思案したって信憑性に欠けるに決まってるし。



それに──もしそうだとしても何の解決にもならない。


「!? ぅ・・・けほっ」


吐き気を伴った突然の刺激的な感覚に、思わずむせこむ。


「何これ・・・」


肺が苦しくて気持ち悪い。


ジッと背中を丸めていると、すぐにその感覚は消えていった──が、まだ体に何かが残ってる様な気がして、心の内に言いようの無い不安を感じていたのだった。


「──皆様、全員お目覚めの様ですのでゲームの説明をさせて頂きます」


どこからか、あの案内人さんの声が聞こえる。


何を推測する間もなく、淡々とした強弱の無い彼女の説明が続けられる。


「4回戦はエスケイプゲームです。皆様は今、完全密室の個室におられますね? ですが──必ずどこかに抜け道があります。ルールは部屋にある抜け道のヒントを探し出し脱出する事です」


抜け道のヒントを探し出す・・・


「第7・8会場の皆様は今──死刑囚だと仮定して下さい。1時間後に毒ガスで死刑を執行される状況です。しかし──司法取り引きとして1時間以内に脱出に成功すれば死刑に取り下げになります。但し、司法取り引きが行えるのは33名中6名のみ。1時間以内に先着6名が脱出に成功した時点でゲーム終了、残りの者は全員──そのまま死刑を執行されます。尚、1時間以内に6人が脱出に成功しなかった──例えば4人だけが脱出に成功した場合は、その4人が勝者となります」


・・・毒ガス? 死刑? 何それ。


「この部屋は1時間後に毒ガスが充満します。──死刑を待つだけの死刑囚に司法取り引きのチャンス。死ぬも生きるもあなたの頭と運に掛かっています。忍び寄る恐怖と戦って下さい。時計は──皆様の腕にセットしておきました。始まりの合図と共にタイマーが起動します」


個人勝負・・・脱出しなきゃ死んじゃうんだ。


息を大きく吸い込んで、気持ちを落ち着かせる。


「──絶対、負けられない」


「では第4回戦を開始します」


恐ろしいゲームが始まりを迎えた。


この小さな牢獄の中で──・・・

試験が近いので、更新遅めです;

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