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REAL GAME  作者: 野澤 ちか
55/77

第8話

その温もりは



長い様にも、一瞬の様にも感じた。


「ありがとう」


そう微笑んで離れる彼の瞳が、何だかとても寂しげで


掛ける言葉が見つからなかった。


どんな言葉も無駄の様に思えたから。


「行こ、時間だ」


座り込んでいる私に手を差し伸べる。


「うん」


そうやって、けんちゃんはまた仮面を被って


何でも無い顔して微笑むんだ。


痛々しくて、苦しんでるなら支えになりたいと思うのに


けして、そんな事を言ったりしない。


ねぇ、けんちゃん。


私、幼なじみとして失格なのかな?


あなたの心は繊細で気を張り詰めてて、私をも上手に騙してしまう。


こんなにそばにいるのに


あなたの小さな違和感やSOSに気付けない。


そうやって誰にも胸の痛みを知らせず


──何度彼は自分の気持ちを呑み込んできたんだろう。


たまに覗かせる彼の本音だけが


手掛かりで


──それを見せてくれるのは私にだけなのに。

























長い長い廊下


2人の靴の響きと会話が静寂を破る。


まるでこの時間を噛み締める様に、肩を並べてゆっくりと食堂に向かった。


「ね。ど、どうしたの?」


食堂に進むにつれ、思い詰めた様な顔してソワソワしてる。


急に立ち止まったかと思えば直ぐにまた歩き出し、とかく落ち着きが無い。


「あー・・・俺走って出て行っちゃったから、さ」



私の不思議気な視線に、恥ずかしそうに髪をクシャクシャさせて笑う。


「・・・もしかして、2人の反応気にしてる?」


けんちゃんはハッとした表情で私を見てから、勘が良いね、とバツの悪そうな先生の様に答えた。


「そんなに無神経な人達じゃ無いと思うけどなぁ」


あまり親しく無い、と言うよりも関わるきっかけが無いというだけであるが、私は2人の事をよく知らない。


けれど遠目から伺うだけでも、2人のけんちゃんに対する温かな気持ちは感じ取れる。


しつこい詮索をする様な人格者には見えない。


「それが問題何だ」


私を少しだけ見て、話を続ける。


「気を遣うのが上手な奴らだからさ、逆にこんな事で心配掛けさせたく無いんだ」


「・・・もう、心配させてあげなよ。けんちゃんが友だちだから心配するんだよ? けんちゃんは周りに気ぃ配りすぎっ! もっと甘えた方が良いよ」


──彼は何も応えずに、曖昧な顔して目を逸らす。


こうされると私にはお手上げだ。


私はささやかな意見を内に引っ込めて、彼の手を引っ張り駆け出した。


「ちょ・・・待て! おい止まれって桜雪っ、転ぶから!」


「歩いてたら置いてかれるよー? ほら急いでっ」


意地悪を込めて笑みを浮かべる。


しきりに、ヤバいを連発する体力不足さんには無視を決め込んだ。


「ふ〜・・・」


「──っはぁ!はっはっ、はぁっ・・・まじ有り得ん」


けんちゃんの『有り得ん』が私の体力についてか、全力疾走させた事についてかは微妙だけど


彼の恨みがましい視線には気付かないフリをして、ドアに手をかけた。


直ぐに時計を確認する──時刻は7時27分を差していた。


「良かったぁ・・・30分には間に合ったねっ、誰も居なかったらどうしようかと思っちゃった」


「・・・ふぅっ」


ね? と後ろを振り返れば、まだ息を整えているけんちゃんの姿があった。


「そ、そんな疲れる距離だっけ?」


「距離の問題じゃない。取り敢えず桜雪がそう思ってる内は理解出来ない」


短く言い切り、じゃあねと脱力した様子で呟いて自分の席へ戻って行った。


うーん・・・何の事だろう?




──と、その時


「皆様、長らくお待たせ致しました。時間になりましたので出発して頂きます。──と申しましても一斉に空間移動を行うだけですので、体力、精神的な負担は掛かりません。では皆様立ち上がって両隣の人の手を繋ぎ、輪の形を作って下さい」


輪の形・・・


話がいまいちピンと来てないのか、突拍子な案内人の命令に素直に立ち上がれないのか


皆、周りの様子を見て座ったまま。


案内人さんは黙ってその様子を観察している感じだ。



うー・・・、これで案内人さんを困らすのは嫌かも。


誰かが行動すれば、済む事だし・・・













場の微妙〜な空気にちょっと躊躇うも、静かに椅子を引いて立ち上がった。


けんちゃん、アリア君、背の高い青年さんがそれに続く。


後はもう勢いに乗って全員が立ち上がり


気まずそうにしながらも手を繋ぎ合って、言われた通り輪の形を作った。



──何か変な感じ。


肌の色も背丈も顔立ちも年齢も性別も


生まれた時代も環境も違う14人が、手を繋いで向き合ってるんだ。


でもまた誰かが──死んでいく。


「では移動します」


それでも


私達は屍を踏みしめ自分が決めた道へ進むしか無い。


生かされた命を無駄にしない様に。


いつか終わりの日が来ても


けして、後悔しない様に。


「あ・・・れ」


目の前に見える人の瞼がフッと閉じる。


他の人も次々と、繋いだ手は離れてないのに瞼だけを示し合わせたかの様に閉じていき


「何でだろ・・・」


──私もその中の1人となった。

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