第5話
時刻は6時ちょうどを差していた。
空席が目立つのは、それだけ人数が減ったから何だろう。
この場に居る人だけで、ざっと10数人位の顔ぶれで、若干男性の人数が多い様に感じる。
いつの間にか・・・こんなに少なくなってたんだな。
僕は無意識に空を仰いでいた。
「やぁ、賢治」
声を掛けられると同時に背中から抱きつかれた。
僕は酷く動揺したせいか、軽くいなす事も出来ずに馬鹿みたいに慌てる。
「や・・・止めろ。エディ」
頬をほんのり赤くさせ、格好もつかない睨みを利かして言った台詞がこれだ。
全く調子が狂う。
「あはは、これはすまない。でも、何で顔を赤くしてるんだい?風邪?」
「べ、別に何でもないからっ!それと、すまないと思ってるならいい加減に離してくれっ」
全く悪びれた顔もせず離れようとしないエディにしびれを切らし、僕は強引に腕をのけさせた。
一方の彼はと言えば、キョトンとした顔で何で怒ってるの? と訊ねてくる。
僕はかなり不機嫌な顔で睨み付けてから、直ぐに大きな溜め息を吐いた。
「そうだな・・・俺が悪かった。でも今度からそーゆうサプライズは控えてくれないか。心臓に悪いから」
──そうだ、彼にはけして、けして他意はないのだ。
スキンシップは彼にとって友情の表れみたいもの。
だから僕も、それに歩み寄らなければいけない。
それに、あれだ。いちいち目くじら立ててたら神経が持たない。
そしてふと、彼を見て思う。
──何だかエディってダチの直也と雰囲気がタブるんだよな・・・
何にも考えてなさそうで人一倍、努力してたり
結構、おちゃらけてるけど友情に熱かったりする所とか
面白くて華やかで、でもほんとは責任感の強い真面目な奴。
直也は居なくなった僕を心配しているのだろうか?
「う〜ん・・・これは僕の習慣みたいな物何だが、そこまで言うんなら善処してみるよ」
・・・まぁ、エディにも自分の気質があるだろうし
僕だって、友だちの事を本気で嫌がれる訳ないんだ。
「控えてくれれば、構わないから。その・・・生き残っていて良かった」
──やっぱり、似合わないかな? こんな青春ドラマみたいな台詞。
「僕も・・・賢治が居て良かった。すごく安心した! はは、何か嬉しいな。賢治はクールだから、心配してるのは僕だけかと思ってた」
ドキッ
──ごめん、少し前までそうだった。
「・・・そんな事は無いよ。友達何だから」
後ろめたくて思わず嘘を吐いた。
だって、そうだろ。こんな嬉しそうな笑顔で言われたら事実何て言えない。
──いつもの僕を取り戻した今なら理解出来る。
ナツキが表に出てた今までの自分は、本当に残酷で感情に乏しくて、恐い奴だったんだ。
冷や汗で首筋がジットリした。
「多分・・・いきなりこんな世界に来させられて、警戒してたんだと思う。でもいい加減に慣れてきたのかも。俺は元々こんな性格だし」
「ふーん、そういうものかなぁ・・・まぁ、今の賢治の方が親近感あるね」
少し考える様な素振りを見せた後、ニッコリと微笑んだ彼を見て、やはりエディは直也に似ていると感じたのだった。
「そ、それはそうとアリア!」
僕はふと桜雪の話を思い出して、アリアの方を向いた。
「何で桜雪の部屋に運ぶんだよ? 色々とおかしいだろ。一応、男女だしさ」
小さな声で耳打ちする。
アリアが僕の気持ちに気付いてるかどうか分からない今、ここは話を濁らせて尋ねるしか無い。
──だが次の彼の台詞によって、僕のささやかな計算は崩れ落ちる事になる。
「・・・しょ」
「え?」
「好きなんでしょ」
しれった顔して、僕を見るアリア。
僕が何も言えずに黙っていると、彼は元の位置に向き直ってて瞳を閉じた。
──まるで、もうこの話は終わりねって言わんばかりに。
彼の淡白な感情と無関心さに感謝しつつも、僕はこれでもかってくらい顔を赤くさせる。
「鋭すぎ・・・」
自分にしか分からない程、小さく呟いていたのだった。
「皆様、お集まり頂きまして誠に有り難うございます」
瞬間、緊張感が走り談話が止まる。
食堂内に静かでよく通る、僕に突っかかったあの案内人の声が響いた。
「食事の前に、4回戦のゲーム内容について説明させて頂きます」
休息も無く始まる、次のゲーム
僕は波打つ鼓動を手で押さえ、耳を傾けていた。