第4話
美術室には不思議な空気が漂っていた。
隅に投げてある油絵には、既に井戸の絵が消えてある。
REAL GAMEと言う文字を残して……
「選出とか…応募した覚え無いです!」
桜雪はどこか声が怯えてる様に思えた。
仕方ない
僕だって、参ってる。
ガララッ
────え
ガチャガチャッ
「そこに居るんだろ?出て来なさい!」
すっかり忘れてた…
「──参加の取り消しは可能です。その場合は記憶と時間を操作させて頂きますが」
……………
僕は半分ヤケ、半分好奇心で選択を考えた。
別に、ここの世界に未練は無い。
だけど断れば、そこで終わり
この夢みたいな出来事も忘れ、生活指導に親呼ばれて怒られなきゃならない。
「あの生活指導の記憶を操作してくれるなら参加してもいいよ」
「けんちゃん!」
桜雪は泣きそうな顔で首を横に振った。
「桜雪…この事は無かった事にして。生活指導に怒られない様にするから」
「けんちゃんは?何で行っちゃうの??そんなの嫌……」
「桜雪を巻き込ませるつもりは無いから」
「第三者の記憶を操作するなら、参加を1人取り消しにさせて頂きます」
「大丈夫で」
「私参加します」
桜雪はもう悲観な顔も見せず、隣で背筋を伸ばしていた。
「…おいっ何で桜雪まで行くんだ。何があるか分からないんだぞ!」
だけど真っ直ぐに僕を見つめて桜雪は、言う。
「私、けんちゃんの居ない世界で生活するの嫌だもん。恐いけど……一緒に行きたいの」
「桜雪…」
「…では御2方の参加を認めさせて頂きます。この井戸へ入って下さい」
もうドアのぶの音も気にならない。
「行こ、けんちゃん」
「あぁ」
僕らは手を繋いでいた。
お互いの手に汗を感じる。
きっと口には出さないけど、恐いよな。
「何か、アリスみたい…」
「え?」
「アリスも穴の中に落ちたら、異世界にいたでしょ?」
桜雪は笑ってる。
僕も笑う。
──世界は色を変えて動き出した。
・
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「今鍵開けるからな!全く近頃の子供は………」
ガチャ…
「あれ?」
確かに声がしたんだが…
キーン…コーン
カーン…コーン……
「おっと、授業が始まる…」
仕方ない。今回は諦めよう。
バタン…
──そして何事も無かったかの様に
3限のチャイムが鳴り終えた。