第2話
僕の人格は僕だけのもの
僕の優しさは君だけのもの
それは不変。
僕と君が出会った日から──・・・
「ねぇ、ここはどこ?」
僕と2人が使っている部屋より少し狭くて──ベッドしかない古びた部屋。
最初にエディやミャーヌが使う予定だった部屋と変わらない造りだ。
「私の部屋だよ。えーとアリア君? がね、けんちゃんが倒れた事教えてくれて2人で私の部屋に運んだの」
意識を失う前の記憶を朧気に思い出す。
──確かにそうだ。直前にアリアの声が聞こえて・・・
「ごめんね、重かっただろ? ・・・てゆうか、何で俺の部屋じゃなくて桜雪の部屋に運んだの?」
「エレベーターあったから大丈夫・・・や、私もけんちゃんの部屋に運んだ方が良いと思ったんだけど・・・」
「──だけど?」
何やら、微妙な顔で目をそらす桜雪。
「アリア君が、私の部屋で目を覚ました方が賢治も安心するって・・・」
そう言って、頬を桜色に染める彼女。
・・・気を使ったって事?
別に好きとか一言も言った覚えねーんだけど・・・やっぱり鋭い。
何だかんだ言って、アリアには僕の心の内を見透かされているんだよな。
アリアの事を考えてしばらく押し黙っていたが、桜雪がそれをどう思ったのか焦って喋り始める。
「あっあのね? アリア君は深い意味で言ったんじゃないと思うから。ほら、私とけんちゃんは元から一緒だったし、だからよく知ってる人が居た方が落ち着くんじゃないのかなぁー・・・と、か」
別に気にしなくても良いと、フォローするつもりだったんだろうけど
言ってて恥ずかしくなってきたのか、耳まで真っ赤にして逆に桜雪が黙り込んでしまった。
俯き加減で、口をギュッと噤んでいる。
狡い奴──そういう態度取られると、抱き締めたくなるじゃん。
──でも桜雪はあくまで僕の事を幼なじみ位にしか思ってないんだろう。
初めから眼中何かなくて、だから中2になっても相変わらず僕に対する態度は変わらない。
時々、好きだと伝えたくなる時もあったけど、それを僕の理性が止める。
言ったら今までの関係が全部終わっちゃうよ、ってそう聞こえてくる。
「・・・アリアの言う通りだよ。桜雪が無事で良かったって安心した。まぁアリアもそれ以上の意味は無いと思うよ」
「そ、そっか」
僕は何でも無い様なフリして微笑む。
──きっと一生、実を結ぶ事も無く終わるんだろうな。
僕は立ち上がろうと手の平を床に置き、そこで違和感に気付く。
「右手が・・・痛く無い」
包帯さえ巻かれていなかった。
ジッと不思議そうに右手を見つめていると、それはね、と言って桜雪が僕に説明した。
「けんちゃんが眠っている時にね、通り掛かった人が治してくれたの。右手にひびが入ってて痛いだろうからって」
「ど、どうやって? こんな短時間で完治出来るものなの?」
それがねっ、と言って桜雪は目を輝かせる。
「その人、魔法みたいな事したの! 手を2〜3回撫でてたら、もう治ってたんだよっ、魔法とか本当にあるのかなーって思ってたけど感動しちゃったっ」
「・・・それ、ほんと? 俄かに信じ難いんだけど」
桜雪の言う事を疑いたくはないが、生憎僕は現実主義者で魔法とか妖精何かの類は一切信じない。
「ほんとだよ! アリア君も一緒に見てたし・・・だったら後でその人にお礼言いに行こうよっ」
桜雪は何とか信じさせようと少しむきになってるが、僕もその人に興味深々だったので乗ってみる。
一時的だとしても、治してくれた事に対してお礼を言いに行きたいし。
その後しばらく談笑し合い、僕は桜雪の部屋を後にする。
不思議と気持ちは穏やかで、優しい気分になれた。
その足で自分の部屋に向かう。
桜雪の部屋が51号室で、僕の部屋が3号室だから・・・・いや、エレベーターで下りるなら2階を押せば良いだけなのだから、考える必要も無いか。
エレベーターに乗り込んで、2と表示されたボタンを押し、腕を組む。
ふと、今回のゲームで何人が生き残ったのかが気になった。
3回戦も終わったし、そろそろ他の会場にいる人達とも争わなくてはいけないのだろうか・・・?
だとすれば、今までより勝つのは難しくなるだろう。
他の会場にいる勝者達がどれほどの実力かは予測出来ないが、3回戦まで勝ち上がっているのだからそれなりに頭の切れる者達が集まっているに違いない。
──いや、この場合は自分達の会場にいる者達のレベルが1番低いと思って覚悟した方が適切だ。
それに人数が減れば減る程、桜雪と戦う事になる可能性も高くなる。
今までは上手く被らなかったが、次からは分からない。
そうなった場合、僕はどうすれば良いのだろう?
桜雪だけじゃない。出来れば──アリアとも戦いたく無い。
もちろんエディとだって。
途端に何だか気が重くなる──が、あまりマイナス思考に考えるのは止める事にした。
考えたって、仕方ないのだ。
「・・・ん?」
床に何か──光り物が落ちている。
「ネームプレートだ・・・よな?」
取り敢えず拾って、辺りを見回すがそれらしき人はいない。
だからといって、元の場所に置くのは危険かも知れない。
何故なら、持ち主がネームプレートを紛失して他の人がそれを発見し管理人に渡した場合、その人は優遇され逆に持ち主は次のゲームまで食事をとる事が出来ないからだ。
おかしなルールだとは思うが、誰しも優遇されたいだろうから発見してもまず、殆どの人が持ち主に渡さないだろう。
ご飯を抜かされる方は、日数によってはかなり厳しい。
その為、殆どの人がネームプレートを服の一部に縫い付けて貰ったり、アクセサリー状にして身に付ける。
実際、僕も制服の紋章の下に縫い付けて貰ってある。
僕は静かに溜め息を吐いた。
ここでラッキーだと案内人に届けるか、持ち主が困ったってどうでも良いとさっさと部屋に向かう大した性格ならと思うが、生憎そんな事は出来ない。
「19番か・・・」
結局僕はもう一度エレベーターに乗り、19号室へ向かう事になった。
エレベーターの中で恨めし気にネームプレートを見つめる。
「はぁ〜・・・何でネームプレート落とすかな・・って」
───あれ?
瞬間、手でネームプレートを握り締め、改めて後悔する。
──やっぱり拾うんじゃなかった。
静かに溜め息を吐き、自分の中途半端な親切心と責任感を忌々しく思う。
「くそ、何時もこう何だ・・・」
どうせ面倒臭いと思うなら適当にかわしとけば良いのに、偽善的な僕は何時だって、大変そうな奴の仕事や重荷を手伝ってやる。
影で困っている人が居るなら、真面目に協力しようと思う。
──これを世間が『優しい』と評価するなら、そいつらに向かって泥を投げつけてやりたい。
僕は優しく何か無いから。
只、僕は──・・・
・・・僕は?
「・・・ふん」
考える必要性何て、初めからこれっぽっちも無い。
意味何か要らない。
世間が、他人がそう思うなら別に良い。
ネームプレートを捨てたくなる衝動を静かに抑えて、僕は早足で向かったのだった。
部活頑張ってね!って声が多くあったので・・・
小説に関係ないので見たい方だけお進み下さいね。
県の代表として中国大会に出場する事が出来ました!
その後も西部地区で3位入賞して、今はちゃんと引退してるんですよ★
部活一直線だったから更新を停止してたのですが・・・
これからは受験勉強や生徒会の仕事の合間に、楽しくやっていくつもりなので
今まで温かく見守って下さった方、今後も宜しくお願いします!
感謝の気持ちを込めて、お礼を述べさせて頂きました。
では。




