第15話
静まり返る空間。
他のグループも、ゲームを始めているのでしょうが
このグループに当たったのは、ある意味かなり不運だったのかも知れない。
幼くて経験も知識もまだ浅い少年達に当たり、始めは3回戦も勝てるかも知れないと内心思っていたが
今はその少年達に恐れを抱いている。
情けない、としか言い様がない。
しかも私はその内の1人に恋をしているみたいで・・・
もう頭の中がグシャグシャだ。
「神さま、私はどうすれば良いのでしょうか・・・」
その時、隣にいたペアの九龍が、大声でウンザリだと怒鳴りながら頭をグシャグシャと掻いた。
「もう・・・もう嫌だっお前らペア、なんか変だっつーのっ! 早くゲーム始めろよっお前が質問するんだろ!? 早くしろよ!!」
かなり苛立っている様子──でも始めの様な単純な怒りでは無く、怯えた感情から逃げている様にも思える。
「良いんですか? ゲームを再開して」
「は?! 当たり前だろ、ゲームするためにやってんだから」
「──本当に再開しても良いの? 代表者は九龍さんです・・・よね?」
彼の瞳が怪しく光った気がした。
「はいはい、そーだよ。だから何だよ! もう喋りたくねぇーんだよっ」
そう・・・と、ため息を洩らす彼。
──彼は一体、何を考えているの?
「なら、仕方ないですね。俺はもう少し遊びたかったんですけど・・・生憎、体も不調だから無理には止めれません」
穏やかな顔で、楽しそうに話す賢治。
──瞬間、笑みが消え、無表情な顔で低く低く呟いた。
「believe・・・」
「は・・・?」
私も九龍も彼のしている事の意味が分からず、間抜けな声を出していた。
後ろの男の子は相変わらず、無表情に樹木にもたれ掛かっている。
「・・・何、ゲームの内容飛ばしてんわけ?」
「再開しろ、って仰ったのは九龍さんですよ」
「ちげぇよ! お前まだ質問もしてねぇじゃねえか。俺も答えて何かいねぇ・・・なのに勝手に終わらしてんじゃ・・」
その時、再び殴り掛かろうとする九龍の後ろから、長身の男性が現れた。
九龍の殴りかける手が止まる。
賢治は冷たい瞳で意地悪い微笑をしていた。
──初めに3回戦を説明してた案内人の男性じゃないの。
その男性は真っ直ぐに私の元へやってきた。
何の用・・・?
「ガーネット様、手持ちのカードをお見せ下さい」
「え?」
それは突拍子も無い発言だった。
男性は、無機質な声で更に言う。
「初めに天使役・悪魔役を決められたはずです。天使役の人はlieのカード、悪魔役の人はbelieveのカードを持つのがルールだと」
あぁ・・・そういえば。
私は内ポケットの中からbelieveとかかれたカードを差し出した。
初めに私は悪魔、九龍は天使と役を決めていたから・・・
案内人は私が差し出したカードをゆっくりと表に返し、無機質な声で信じられない事を言った。
「──結果、勝者は賢治様、アリア様のペア。4回戦終了です」
「・・・な、何それっ。私達はまだゲームの途中ですよ!」
私は案内人に必死に弁明をした。
「そうだよ、ゲームは終わってねぇ! これから続ける所なんだよっ」
九龍も私に続き、喰って掛かる。
しかし案内人は無情にも、私達を絶望に追い込んだ。
「いいえ、私も外界から観察させて頂きましたので・・・。確かにゲームは終わっています」
「う・・・嘘よ! 間違いだわっ私達は負けて何か無い!」
だって、そうだ。
まだ賢治は質問もしていない。
九龍もそれに答えていない。
何故? 何故知らない所で終わっているの?
──頭の中がパニックを起こしているのが、分かる。
「お・・おい、ガーネット。大丈夫かよ?!」
気が付けば、足をふらつかせて倒れてしまっていた。
大丈夫と言いたいのに口が動かず、気持ちの悪さで吐き気がしそうだ。
「・・・・・」
この異様な空間は、何なの?
私はゆっくりと空を仰いだ。
賢治も無口な少年も案内人も、顔色一つ変えず、私を見下ろしている。
九龍の心配する声だけが、空しく森の中に響いて
もう、意識なんか無くなれば良いのに、とさえ思う。
「何で、負けたの・・・?」
でも、その前に理由が知りたい。
──私は口をギュッと噛み、賢治を見据えた。