第11話
ピリピリとした空気が辺りを包んだ。
2メートル近い身長が僕の空間に影を作って、良い日なた避けになってくれる。
「お前さぁ、今何つったの?」
極細い眉毛を思いっきり寄せて顔を凄ませてるが、全然怖くない。
不思議なものだが、路上で見れば恐れられる若者だって、自然の中にいれば滑稽な単細胞に見える。
でも、仕方ない事だと思う。たった20年そこら生きてただけの薄っぺらい人間が、何世紀もの時を経てきた自然にかなう訳が無い。
既に、存在感に差があり過ぎる。
僕は酷く小さく見える目の前の相手に、無表情に言ってやる事にした。
「うるさすぎて世の中の迷惑なので、どうか静かにして頂けませんか、って言ったんです。日本語通じましたか?」
にっこりと爽やかな笑みを送る自分。
相手の男性は、何だコイツって目で僕を見つめていたが、すぐに顔を険しくさせて更に距離を詰めてきた。
「…おい、ガキ。口の聞き方に気を付けろ。その顔グシャグシャにすんぞ?」
下品に笑う馬鹿の声だけが森の中でこだまする。
その態度から、やはり短気な上に頭も悪いのだと確信した。
只、もし彼を弁明してあげるとすれば、こんな人間は街にゴロゴロいる。こいつが特別最悪って訳では無い。
でも、その理由はここでは通用しないだろう。何せこれは生死がかかったゲーム何だから。
…そう、これはゲーム
だから、同情なんかしてやらない。
僕は愉快そうに、笑ってやった。
「社会のクズが偉そうに……」
馬鹿の眉が微かに上がる。
「あなたのような方は、ここで死んだ方が地球のためです。貴重な酸素が無駄になりますから…」
ゆったりとした、柔らかな口調に似合わないセリフ。
顔だけは、にこやかに笑みを浮かべる。
そして、噛み締めるようにゆっくりと言ってやるのだ。
「ゲームに勝つのは俺たちだ。お前らはここで負けるしか……無いな」
更に口角を上げて、蔑む様に笑った。
絶対の自信と、容赦ない布告。
目の前にいる2人は、酷く強張った顔で口をパクパクとさせていた。
強気な顔を青白くさせ、ゴクリと喉を鳴らす女性。
今の発言を理解するのに時間が掛かるのか、呆けた顔を益々馬鹿っぽくさせて、僕を見る男性。
──火種は作った。
後は、美しく消える花火を点火してやるだけ。
勝利は、最後まで冷静にいられた者のみが手にする事が出来るのだ。
このゲームはもう、僕達のもの。
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