第6話
こんにちはっ
何時もよりは、久しぶりな更新ですね;
色々、部活で立て込んでたり、思う事があったので思案してました 笑
さて、私事なのでスルーして下さって良いですが、市総体の結果を報告しておきます。
個人は悔しいですが、県出場なりませんでした…;;
でも団体戦は3位に勝ち上がり、1週間後に西部地区大会に出場決定しました!
なので、今は稽古に励む事を優先したいので少し更新遅れるかもです;
ではっ
話は1時間前にさかのぼる──。
刻々と迫る3回戦のタイムリミット。
時計の針がきっちり開始予定の時刻を通り過ぎたと同時に、周りの人びとが瞬間移動した。
いや、正確に言うならば僕もである。
一瞬、視界が真っ白になったかと思えば──そこには、日本の都会に住んでいたら一生お目に掛かる事など出来ない大自然が広がっていた。
祖母が暮らしている島根に遊びに行った時が、1番自然の美しさに触れた時だろうと思うけど……
「すごい…」
若者が使う便利な言葉の1つ、これを言うだけで感動を表せるセリフ。
でも、今使ってもおかしくないはずだ。
だって本当に感動的なのだから。
野ウサギが切り株から顔を出し
円形の湖は有り得ないほど透き通っており、水面から移る森の風景は鏡の様にくっきりと見える。
その木を真下から見上げると、どれだけ長いか分からない。
少なくとも、軽く学校の高さを越してしまうだろう。
緑に溢れた世界
こんな世界も悪くないな、と思う。
「…見えてる?」
「ぇ…ぅうわっ!」
僕にしては、かなりみっともない奇声をあげたものだ。
すっかり安心しきっていた脳が、一気に警戒態勢に入る。
だって仕方ない。
自然に和みきっていた僕の横に違和感なく彼──アリアが立っていたのだから。
素早く一歩引いて、距離を取る。
敵だと見なしてる訳では無いんだけど。只、近過ぎかなと感じたから、ね。
「ううん、見えて無かった…。そして、ちょっと驚いたよ。──ところで、君しかいないみたいだけど……」
他の参加者は、違う場所にいるのだろうか、それとも別の世界にいるのか……。
それに、もしかして……
瞬間、脳裏に不吉な考えが浮かび上がり、冷や汗をかく。
ここの主催者なら、2回戦のように、ここでアリアとゲームをしろと言いかねないからだ。
それは限りなく嫌だと思う自分に、妙な感情を抱きつつも、やはり親近感が有るのは事実だからと納得させる。
僕だって、曲がりなりにも中学生である。向こうにはそんな気持ち、欠片にも無いかも知れないが、正直彼の事、良いなって思ったり──友達の様な感覚させあるのだ。
そして、フッと彼を見やる。
何やら無表情に木をペタペタと触って、感触を確かめていた。
はた目から見てたらちょっと微笑が洩れそうな光景だけど、深く溜め息を吐いてしまう。
きっと彼は、僕がそんな風にアリアを見てる何て思ってもいないんだろうな…
余り深く考えるのは止めにして、取り敢えず、僕は前の放送で伝えられた“ルールの説明は移動してから”って言葉を信じて、しばらく大人しくしようと決めた。
何させられるか分からないし、第一無駄に歩き回って体力を使いたく無いからね。ストンとその場に腰を下ろし、乾いた土の上に座り込んだ。
ズボンの汚れは気にしない。
一方アリアの方はと言うと、周辺の木を観察したり、小枝で地面に文字を書いたりと行動的だ。
散策して、置かれた状況や場所が分かるのだろうか。
そもそも異世界なのだから、情報も役に立たないかも知れないのでは?
でも口は挟まない。
暫くは、彼をそっと見守る事にした。
そして一言。
「──この世界は架空に作り出された可能性が高い」
「へ?」
僕は間抜けな声で聞き返す。
「どういう意味?」
散策した結論がそれなのか…?
どうやら、今の彼の思考回路は、僕には及びのつかない所まで張り巡らされているようである。
「空を見て」
素直に応じて、天を見上げる。
「ちょっと眩しいな……。でも、これといった変化は無いと思うけど……あれ?」
目を凝らして、あれを探す。
「太陽が無い…」
天照す道しるべ、希望の象徴──太陽。
「日食や月食の類いじゃ無い。…他にも気付かない?」
「ぇと……空、に囲み線がある」
意識的に見ないと気付かないだろう。
空にはうっすらと白くて細い線が引いてあり、建物の様に形作っている。
「違和感を感じる……予想では、ログハウスの様な仕組みになっていると推測してる。これは大型の舞台セットだ」
──なる程…。
目ざといと言うか、よく観察してるものだ。
何人の参加者がこれに気付けると言うのだろう。太陽はともかく、線何か本当に薄くて、よく見なければ分からない。
でも、これが舞台セットなら、それはそれで凄いけどね。
僕は無意識にシルバニアファミリーの家を思い出していた。
幼い頃は、あの精巧な造りと細かい小道具に感動していた時もあったな……。
「皆様、声が聴こえますでしょうか?」
もうすっかり定番になった、あの案内人の声だ。
「3回戦はチートゲームです」
僕はパッと意味が解らず、ここの世界に来る少し前に覚えた英単語を何とか記憶から引き出そうとする。
何で欧米化といえ、日本語に変換しないのだ!と心の中で突っ込みを入れつつ……。
チート…チート
──思い出した。
“cheat”─詐欺・ずるの行為。
騙し討ちしろって意味か?
──僕は自然と、頭をクールダウンさせていく。
自分の脳みそが冷えていくくらい、機械的に起動していくのが分かる。
冷静に、冷静に…。ゲームをよく理解して、穴が無い完璧な手段を考えるのだ。
僕とアリアは、案内人の次の言葉を静かに待った。
風はソヨソトと漂って
澄んだ空気に満たされながらも
僕らには、もう、それを有り難む緩みも無かった。
──ゲームは只、無情に始まりを迎えるから。
参加者の気持ちも経験も思い出も、総てを呑み込んで
比べて優劣を決め、敗者は簡単に切り捨てる。
──あぁ
何て、何て虚しいんだろう。
でも、それは現実の世界とそう変わらないでしょう?
甘い言葉で夢や希望を見せようとさせるのは大人なのに
現実を見てね、って囁くのは矛盾じゃないの?
「…………」
笑顔でごまかす母親に諦めたのはいつからだろう。
大人になるって、そう言う事かもね。
──いや、そんな事どうだって良いじゃないか。
今更、だ。
僕は一瞬、綺麗で少し見栄を張る母親の笑顔を思い浮かべて、消し去った。
瞼を重く伏せる。
人工の光がリアルな熱を持ち、僕の背中を照りつけた。