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REAL GAME  作者: 野澤 ちか
30/77

第7話

こんにちは。


休日なのでもうちょっと更新しますが、今から高校の剣道部に出向いて稽古をしてきますので


次の更新は夜頃に出来たらなぁと、思っています。


では。

モノクロの写真のように


世界が色褪せて、時が止まるのを感じた。


息を吸うのも忘れ、只、けんちゃんの顔を見つめる。


「何…?」


たったそれだけ、絞り出すように言うのが精一杯だった。


「…ごめんなさい」


──でも、私は知ってい。


けんちゃんがこんなタチの悪い嘘何て言わないって事。


だから


だから信じたくない


「嘘だよっ何で?何でお兄ちゃんが死ぬの?!」


「さゆちゃ…」


「何でけんちゃんそんな事言うのっ?変な事言わないで!!嘘付く何て大嫌い!!!お兄ちゃんは死んだりなんか…ゲホッゲホゲホ!…ぅえ……っ」


「さゆちゃん!」


痛い 痛い


ズキズキと痛む胸が熱を持ちながら、体に襲い掛かる。


苦しくて涙が出た。


慌ててナースコールを押すけんちゃんと


苦い顔で駆け込んで来たお医者さんを微かに見た気がした。


──ねぇお兄ちゃん


死んだ、何て嘘だよね?信じなくて良いんだよね??


“ごめんな”


何で謝るの…?


謝らなくたって良いから、会ってよ。


そんな言葉を聞きたい訳じゃないんだから……ねぇお兄ちゃんってば。


黙らないで、応えて……



「大丈夫です。安静にしていれば、順調に回復しますよ」


「そうですか…っ本当にありがとうございます!!」


目を赤く腫らしたお母さんの横顔を、私はぼんやりと眺めていた。


痛みは感じない。


「桜雪っ目が覚めたのね!」


意識を取り戻した事に気付いた母が、抱きつこうとするのをやんわりと拒否し、私は訊ねた。


「お兄ちゃん、死んじゃったの?」


「…ぇ?」


お母さんの、一瞬うろたえた表情を見逃さなかった。


「──どうして…どうして黙ってたのっ」


母はまた涙をポロポロと流し、両手で顔を覆い隠しながら、ごめんね、と消え入る様な声で謝り続ける。


「…ぁの子を責めてしまった……桜雪の姿見てっ、お父さんも紅葉の事を殴って…私も酷い言葉を…っ」


──何でお母さんが泣くの?


泣きたいのは、私の方だよ……っ


「桜雪にはどうしても話せれなかったの。許して……ごめんなさいっ」


聞きたくない。


何でみんな…みんな謝るの?


謝るぐらいだったら、始めからしないでよ。


「何で…余計な事するの?私は気にしてなかったのに……っ酷い!!みんな…ぅっ…ケホッゲホゲホッ」


そして今までポカンと眺めているだけだったお医者さんが、我にかえった様に私の背中をさする。


「桜雪ちゃん、もう喋っちゃ駄目だ…」


「…っ大嫌い!!お兄ちゃんに何言ったのっ?ゲホッ…何でお兄ちゃ…んが死ななきゃいけないのっ……」


「桜雪ちゃん、もう止めて!賢治君は自殺したんだ!!」


ビクッ


体が固まる。


「桜雪ちゃんが病院に運ばれてから、2日後に……。ビルから飛び降りて──即死だった。手の施しようも無かったんだよ……」


言った後、目を瞑ったまま片手で顔の上半分を隠して、天を仰いだ。


それは幼い私には難しい内容過ぎて、所々理解が出来ない部分もあったけど


お兄ちゃんが自分で死を選んだんだ、と言う事だけは分かってしまった。


そしてそれは私のせいなんだと言う事も……


気が付けば涙をこぼしていた。


それが何の涙か、私は知らない。


お兄ちゃんの死に?


自分自身に対する無力さに?


お兄ちゃんを追い込んだ両親に対する憤りに?


分からない。


全部かも知れない。


でも、知りたくもなかったの。



大きな声を出して、その場でしゃくり上げる私の嗚咽だけが室内に響いた。


これほどの悲しみを表す何て出来ない。


そしてきっと心が耐えきれない。


奥底に沈めなきゃ


思い出さない様に


存在も忘れて


“始めから私にお兄ちゃんはいない”


そう信じ込ませ、重く蓋を閉じたの。



──じゃなきゃ、世界が壊れそうだったから。



そして次に目覚めた時は、お兄ちゃんとの思い出全てを消去していた。


“じゃあね”


倉庫の中で植え付けられた、暗闇のトラウマだけを心に抱え残したまま─……。

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