第6話
ね〜桜雪ちゃん♪
──誰かが私を呼んでる。
やめて やめて
思い出したくないんだから
私は夢の中で、喉まで出掛かった記憶を思い切り拒否する
その夢の中には表面に記憶って書かれてある、オルゴールの様な物体が有るんだけど
その辺にある海に、さっきからずっと放り投げてるのに
気付けばまた、手元に置いてあるのだ。
チャポンッ
それをまた投げ捨てる
……でも、その行動が全く意味を成さないって事に自分は感づいてる。
この夢が自分の意志で創られてるんだとしたら、こんな事させて何がしたいんだろ?
こんなエンドレス、疲れるだけじゃん。
私は本当に久しぶりに、滅多に無い感情──自分が苛立ってる事に気付いた。
…ううん、私は分かってる
本当は潜在意識の中の自分が、開けて!って願ってるんだ。
でも従えない
─知るのが怖いよ。
瞼が熱を持ってる
涙がこぼれ落ちてるのが分かった。
目眩が激しくてクラクラする感覚──気絶してしまいそうな程、頭が重たい。
「…思い出した」
暗闇の中で叫んでた
あの日の事
思い出すには痛すぎて、無意識に忘れてたんだ。
バクバクバクバク
「…──痛…ッ」
肺が折れるんじゃないか、って思うぐらい心臓が暴れだして
涙が溢れて溢れて止まらない。
──もうダメ
これ以上ここには居られない、って思った
気が狂っちゃう位なら、普通のまま死んだ方がマシだよ。
「ごめんなさい……けんちゃん」
ポケットから、ネームプレートを取り出す。
ゆっくりとそれを窪みに近づけて
「え?」
瞬間、何が起こったか理解出来なかった
まだ何もしてない筈なのに
暗闇は消え、眩しい光があたりを包んでいる。
思わず手で顔を隠しながら、目を細めた
「白崎 桜雪様、2回戦の勝利、そして3回戦の出場決定おめでとうございます。しばらく休憩していらして下さい」
…どういう事?
訝しけに見つめる私に気付いた女性は、いつも通りの無機質な声でゆっくりと
「対戦相手が危険したからです。あなたより前に」
あなたより前に、って言葉が強められてる気がした。
この人は多分、私の事を見てたんだ。
私は倒れる様に、近くにある長椅子に座り込んだ。
目は虚ろで焦点が合わない
既にゲームを終わらせた参加者の姿がぼやけてて、ぐにゃりと波をうってる
気持ち悪い…
吐き気が止まらない
「桜雪」
それが自分の名前を呼ばれているんだと言う事に気付いたのは、肩を触られてからだった。
「桜雪…顔色が悪いよ。それに目も赤い……どうしたの?」
心配そうに気を遣ってくれるけんちゃんを、まともに見る事が出来ない。
『──負けてたのは、私の方だったかも知れない』
そんな事、言えれる訳ないよ
──涙がまた溢れ出す。
痛い 痛い 痛い
心が痛い。