表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REAL GAME  作者: 野澤 ちか
23/77

第6話

ね〜桜雪ちゃん♪


──誰かが私を呼んでる。



やめて やめて


思い出したくないんだから


私は夢の中で、喉まで出掛かった記憶を思い切り拒否する



その夢の中には表面に記憶って書かれてある、オルゴールの様な物体が有るんだけど


その辺にある海に、さっきからずっと放り投げてるのに


気付けばまた、手元に置いてあるのだ。


チャポンッ


それをまた投げ捨てる


……でも、その行動が全く意味を成さないって事に自分は感づいてる。



この夢が自分の意志で創られてるんだとしたら、こんな事させて何がしたいんだろ?


こんなエンドレス、疲れるだけじゃん。


私は本当に久しぶりに、滅多に無い感情──自分が苛立ってる事に気付いた。



…ううん、私は分かってる


本当は潜在意識の中の自分が、開けて!って願ってるんだ。


でも従えない



─知るのが怖いよ。




瞼が熱を持ってる


涙がこぼれ落ちてるのが分かった。


目眩が激しくてクラクラする感覚──気絶してしまいそうな程、頭が重たい。



「…思い出した」


暗闇の中で叫んでた


あの日の事


思い出すには痛すぎて、無意識に忘れてたんだ。



バクバクバクバク


「…──痛…ッ」


肺が折れるんじゃないか、って思うぐらい心臓が暴れだして


涙が溢れて溢れて止まらない。


──もうダメ


これ以上ここには居られない、って思った



気が狂っちゃう位なら、普通のまま死んだ方がマシだよ。



「ごめんなさい……けんちゃん」


ポケットから、ネームプレートを取り出す。


ゆっくりとそれを窪みに近づけて


「え?」


瞬間、何が起こったか理解出来なかった


まだ何もしてない筈なのに


暗闇は消え、眩しい光があたりを包んでいる。


思わず手で顔を隠しながら、目を細めた



「白崎 桜雪様、2回戦の勝利、そして3回戦の出場決定おめでとうございます。しばらく休憩していらして下さい」


…どういう事?


訝しけに見つめる私に気付いた女性は、いつも通りの無機質な声でゆっくりと


「対戦相手が危険したからです。あなたより前に」


あなたより前に、って言葉が強められてる気がした。


この人は多分、私の事を見てたんだ。


私は倒れる様に、近くにある長椅子に座り込んだ。


目は虚ろで焦点が合わない


既にゲームを終わらせた参加者の姿がぼやけてて、ぐにゃりと波をうってる



気持ち悪い…


吐き気が止まらない


「桜雪」


それが自分の名前を呼ばれているんだと言う事に気付いたのは、肩を触られてからだった。


「桜雪…顔色が悪いよ。それに目も赤い……どうしたの?」


心配そうに気を遣ってくれるけんちゃんを、まともに見る事が出来ない。


『──負けてたのは、私の方だったかも知れない』



そんな事、言えれる訳ないよ


──涙がまた溢れ出す。


痛い 痛い 痛い




心が痛い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ