第5話
限りない静寂だけが
只、僕を包み込む。
自分が何か喋ったり動いたりしなきゃ、ここは本当に無の世界何だろうな
何にもしないせいか、一定の眠気が波の様に襲いかかるが
まだ、眠らない。
寝るなら、もう起きとけられない!って思うぐらい自分を熟睡に追い込まなくちゃ駄目だ。
夜は長いのだから…
僕は気だるげに足を伸ばしたまま、腕を組んで腰を下ろした。
──そういえば、桜雪は大丈夫だろうか
彼女が小学生の頃、暗闇を怖がってお化け屋敷に入るのを頑なに断ってた事を思い出した。
桜雪のお母さんはそれを、剣道のせいでね……、って言ってたけど
本当は違う。
目隠し剣道で起こるフラッシュバックを拒絶しているから
そしてそれは、僕の責任でもある…
「こういう心理ゲームもあり何だな」
ダークネスゲームの内容を聞かされた時は、1回戦と感じが違うな、って思ってたけど
「──誰しもが抱える思いや感情がルールです、…か」
何となくゲームの本質が見えてきた。
穏やかに終わってくれれば良いけど……
ふぅ
左手で口元を隠しながら、小さな欠伸を1つする
一眠りしようか…
瞼を閉じて見えない壁に背を預ける
闇は、仲間。
僕は幼い頃から闇が好きだった
誰の色も寄せ付けない癖に、自分の世界に引き込む闇の孤独感に惹かれた僕は、それを桜雪に言った事があった。
桜雪は不思議そうな顔をしていたが、最後に
「けんちゃんに似てるよね。…あ、別にけんちゃんが苦手って意味じゃ無いよ?!」
そう言ってたのが、印象に残ってたな。
似てる、の意味が分からなくて
「似てるってどこが?」
って訊ねたけど、桜雪は笑ったまま答えなかった。
まぁ今更、そんな事を聞くのは可笑しな話だけど
知りたいな。
──さて、もう寝ようと思考を停止させようとした時
閉じた瞼の内からでも、光が差し込んでいくのが分かった。
…いや、差し込む何て、表現が甘い。
雷の様にピカッと光ったのだ!
──まるで雷鳴が轟いたんじゃないかと錯覚してしまうぐらいに
僕はかなり慌てて瞳を開いた。
暗闇に慣れてしまっていたせいか、目がチカチカして痛いな、と感じていたら
「瑞希 賢治様、2回戦の勝利、そして3回戦の出場決定おめでとうございます。しばらく休憩していらして下さい」
聞き覚えのある無機質な声が耳に触れる。
──そっか
僕は勝ったのか。
正直あまり実感が湧かないけど、事実ならそれで良い
…と言うより、もう少し時間が掛かるものだと思っていたから拍子抜けだったりするんだ
敵意むき出しのあの女性の顔を思い浮かべる
この何とも言えない曖昧な気持ちは何だ?
「可哀想とも思えないや……」
ぽっかりと空いた穴を埋めようともせずに
僕は無表情な顔で水を飲みに言った。
あまり眠らずにこの話を仕上げました、これから部活行って来ます…;