第4話
頭がボーっとする
「…真っ暗ぁ」
軽く目を擦り、パチパチとさせる。
当たり前だけど、瞼を閉じても開けても見える景色は変わらない。
「ん〜……っ」
肩を上下させて、腕を軽く回す
「痛ぁ…」
腕を枕代わりにしてたせいか、慣れない体勢で寝たせいか、体の節々が痛くて痺れてる。
──どれくらい眠っていたんだろ?
何時間も眠っていた様な気もするし
数十分しか経って無い様な気もする
「……あ」
一面に広がる暗闇を見て、脈絡も無く思い出した
私は暗闇と戦っていた事がある。
余りにも日常から離れすぎて、すっかり忘れてたのだ。
──目隠し剣道。
私は2年生ながら剣道部のレギュラーだけど
幼い頃から、全国でも名が知られている道場に通ってる。
そこで年齢がある程度いったら、先ほど言った目隠し剣道をするのだ。
もちろん遊びじゃ無くて、本気の試合である
目が見えないのにどうやって試合するんだろう、って初めは思ったけど
経験しないと分かんないなぁ、って、今なら思えます。
──でも、あの頃は暗闇の中で戦うのが怖かった。
負けても悔しいと感じないし
勝っても嬉しいと感じない。
幼い私は目隠しで感じる、闇に囲まれる様な何とも言えない威圧感が堪らなく不気味だったのだ。
──呑み込められちゃダメだよ
そんな時、道場の先輩が教えてくれた。
暗闇はただの暗闇。それを別のものに変えちゃうのは自分自身何だよ。引きずり込まれちゃダメ。
それから年を重ねるにつれて、目隠し剣道への拒絶は無くなったけど
「何で今更、ぶり返したりするんだろ……」
肩が小刻みに震えるのを抑える事が出来ない
「私……ゎたし」
自分の手が闇の中で白く映るのが確認出来るのに
いつか闇と同化して見えなくなるんじゃないかと怯えてしまう自分がいる
──そんな事あり得る訳ないのに…
「眠りた…ぃ…」
眠らなきゃ、きっと不安に押し潰されちゃう。
私は体育座りのまま顔をうつ伏せて、瞼を閉じた。
「けんちゃん…」
嫌な汗が頬を伝って、スカートにジワリと広がる。
逃げる様に、私は意識を手放した。