第1話
僕は限りなく平凡だと思う。
「賢治、今日は塾でしょ?コンビニでご飯買ってきときなさいよ」
「うん」
容姿も成績も中の上。
部活で卓球をしてるけど、実力もそこそこだ。
中2になったからか最近、母は少し勉強にうるさくなったけど
サラリーマンの父親と教育的な母親の極一般的な家庭のもと
僕は普通に暮らしています。
「ねぇ、この前参観日だったんだって?何で言わなかったのよ」
「いや、この年で参観日は無いだろ。俺、今年で15だよ?」
…ただ、母親の干渉は時折、面倒くさかったりします。
別にグレたりはしないけど、思春期の息子の気持ちを少しは悟って欲しい。
自分で思うほど大人では無いかもしれないけど、母親が思うほど子供でも無いんだから。
「遅刻するから」
「…あ、ぇえ……行ってらっしゃい」
母親はまだ何か言い足りげな顔でこっちを見ていたが、構わず家を出た。
眩しい。
外は5月らしい爽やか天気だ。
軽く瞬きをしながら足を進ませれば
ス──ッと風が通り抜けて心地よい。
こんな日に授業は面倒くさいな…
そんなバカらしい事考えてた。
「おはよ〜けんちゃん!」
フッと後ろを向くと、桜雪が笑顔でこっちに走って来ていた。
「元気だなぁ…いっっつも」
「ぇえ、何その小馬鹿な態度!けんちゃんが暗いんだよ〜っ」
僕の横にいるのは、家が隣で幼なじみの白崎 桜雪。
桜の雪で、さゆって言う春らしい名前だ。
「ね、数学の宿題やった?」
「上目遣いされても、見せないから」
「!お願いしますっ!!今日当たるんだよぉ〜」
そう言って両手を合わせて、僕の方を向く。
僕は彼女のこれに果てしなく弱い。
そう
僕は桜雪が好きなのだ。
もちろん、桜雪に言う気は無いし片思いで終わらせる気だ。
桜雪はモテるし、俺を好きにはならないだろうから。
「どうしたの?けんちゃん」
「ん…何でも無い」
平凡な僕の生活に色を付けるなら、君の存在くらい。
こんな風に緩やかに時は進むはずだったんだ──…
なかなか展開は遅いですし更新もムラがありますが、よろしくお願いします。