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REAL GAME  作者: 野澤 ちか
18/77

〜第2章〜第1話

さゆちゃん


──誰?


さゆちゃん、遊ぼう。



ああ…昔のけんちゃんだ。


これ夢だな


私は、クスリと笑った。



近所に友だちがいなかった私たちは、毎日遊んでたっけ


海で潮干がりしたり


山でキャンプしたり


公園の砂場でお城作ったり



楽しかったな……



「さゆちゃん、大好き」


もうわすれちゃった?


私ね、あの頃から…






「─…………」


灰色の空間


光も差し込まない


木製の硬いベッド



「そっかぁ…、やっぱ現実なんだ……」


起きたら全て夢だった、って話はよくあるけど


都合よく現実に戻れる訳無いよね…



私は軽いため息を吐いて、髪を整えた。


時計も無いから、今が何時か分からない


「てゆうか……」


顔を洗いたくても、洗面所が無い。


トイレも部屋に設置されてない


着替えだって、昨日のままだ。



「異世界って不便だなあ…」


現代人の女子なら、間違いなくキレる生活だが


桜雪にはある程度の適応能力があるし、基がのんびり屋だから


不便、って言葉で片づけてこれからの事を思案した。



「…とりあえず出ようかな?」


汚れた靴下で歩く気になれないから、制服に不釣り合いかとも思ったが、裸足で行く事にした。


ネームプレートを内ポケットにしまい、シャツのしわを軽く伸ばす。



「行ってきまぁす」


別に誰も返してくれないと分かってはいるけど、毎朝の習慣だから続ける。


私は小さなあくびを1つして、静かにドアを開いて部屋をあとにした。


ドアを閉め終えた瞬間、朝なのに廊下は昨日の夜の時と同じに薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていたので、やっぱり大人しく部屋に残っていようか…、と思わず逃げ腰になったが


目の前の壁に白い紙が貼り付けてあるのに気付き、近寄ってみる事にした。



“皆様、お早うございます。朝食が用意されていますので横の時計で8時までに食堂に集合して下さい。


8時半以降に食堂へ降りた場合は、食事が支給されませんのでご了承下さい。


REAL GAME主催者より”


横に置いてある時計を確認する。


まだ7時前であった。


「焦ったぁ…」


じゃあ朝食にはまだ早すぎって事なのかな?


……てゆうか、何で紙で連絡するんだろう。


夕食の時に説明すればいいのに、これじゃあ食べれない人が出るかもじゃん…



そして、30分には食堂に降りて所定の席へ腰掛けた。


室内にはまだ2〜3人しか集まっておらず、シーンとした空気が漂っていたが


50分くらいには人が増え、けんちゃんも姿を表した。


隣には、大人しそうな男の子


その後ろにはおじさんと少しカッコイい男性が並んでいる。


そういえば、昨日も一緒にいてたなぁ…




私に気付いたけんちゃんが、こっちに近付いてきた。


「お早う。部屋の様子はどう?」


「おはよ〜っ部屋は…あんまり快適とは言えないかな。小さくて、ベッドしか置いてないよぉ」


はは…、と苦笑する私にけんちゃんは、そっか…、としか言わなかった。


「どうしたの?」


「いや…俺の部屋はちょっとまともだからさ。何か後ろめたくて」


すまなそうに、呟くけんちゃん


私はその態度にちょっと笑ってしまった。



「けんちゃんのせいじゃ無いのに〜気にする必要ぜんぜん無いよ?」


普段はちょっと冷たそうなイメージあるって、思われがちだけど


本当はすごく優しくて穏やかな人


彼は目を少し細めて、うん、と言ってから席に戻った。



ふと、思う


だから昨日のけんちゃんに違和感を感じたのかな?


勝つ為の手段を考えていただけなのに


冷静に生き抜こうとする彼を、別人みたい、って思った自分が恥ずかしい。



この世界で勝ち残りたいなら、自分の感情を押し殺す何て当然の事。



「考えが甘かっただけ…」


私は自分に言い聞かせる様に、小さく呟いた。

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