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REAL GAME  作者: 野澤 ちか
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第11話

参加者たちは、ギクシャクした雰囲気で食事を待っていた。


目の前にいる人が対戦相手と分かってるのに、和やかになれる訳がない。


誰もが口を噤み、正面を見ない様にしている



「息が詰まる…早く部屋に戻りたいよ」


右隣の同居人は、窮屈そうに首を振った


「……あなたの名前も知らなかったです、伺ってもよろしいですか?」


それには応えずに、僕は質問する事にした。


正直、青年とか同居人、って言葉でまとめるのが面倒くさいし


「あぁ、そういえばそうだったね。僕の名前はEdward Alice。(エドワード アリス)エディって呼んでくれ、イギリス出身だよ。」


「エディ…」


「君のfull nameを教えてくれないか。どこから来たの?アジアだよね?」


エディは人懐っこいのかも、と、ぼんやり思った。


表情豊かな好青年



僕がエディを鬱陶しいと感じないのは絶やさない笑顔のせいだろうな。


「瑞希 賢治、13歳。出身は日本です」


淡々と言い終わって、ふとエディが日本自体を知っているのか疑問に感じた。


「日本…あぁ知ってるよ!中国の隣だよね」


「はい」


でも、エディは知っているみたいだ。


「ねぇ賢治」


エディはにんまりと笑って


「敬語は要らないよ。僕、君が好きだから」


「えっ?」


僕は驚いて肩を震わしながらイスを引いた。


瞬間、イスがアリアの方に当たってドンッと鳴る


「ごめん、アリア」


僕は慌てて謝るが、アリアは別に気にする風でも無く体勢を整えて、座り直した。


「どうしたの?」


エディは悪びれもなく訊いてきた。


「いや…ちょっと驚いて」


先ほどの彼のセリフをどう受け止めればいいんだろう?


「国籍も年齢も関係ない。友達として僕は君と接したいな」


「…………」


うん…そうだよな。


僕も何かメディアに毒されてたのかもしれない。


「ごめん。ありがとう」


「?」




それから数時間、食事を終わらせて僕らは部屋に戻った。



部屋でおじさんの名前を知ったが


何とコングマングレアだそうだ。


そして姓が無いそうだが、おじさんの話によると他の人々にも姓は無いそうだ。


「でも愛称はミャーヌだ。生まれた時から愛称を付けられ、ずっと愛称で呼ばれる。だからみんなもミャーヌと呼んでくれ」


雑談の中で僕が知った事は、エディは後に産業革命と呼ばれる程の機械を発案した1人だそうだ。


でも巨万の富と名誉を受けているだろうに、エディの態度から偉そうな所が見えない。


「僕は工場で働く彼女の負担が軽くなれば、と思って考えたんだ。お金が欲しくて協力した訳じゃ無い……」


でも機械が常用された時には、もう彼女はいなかった。


「…働き過ぎて過労死した。彼女は微塵も困った様子何か見せなかったのに…っ、何で彼女が弱音を言わなかったのか今でも分からない。話しても無駄だと思われていたのだろうかと思うと……胸が苦しいんだ」


エディは痛々しい程、悲しそうに顔を歪ませて語った。



そしてエディが寝よう、と言ったので話を打ち切る事にした。


電気を消し、それぞれベッドに潜り込む



「……………」


話しても無駄だと思われていたのだろうか……


違うよ、エディ



彼女は只、君を愛していたんだ。


少なくとも僕は、そう思う。



君が彼女を愛しいと思うのなら


彼女も君の事をそれ以上に愛しかったと思っていても



それぐらい考えても罰は与えられないだろう?


追い込むなよ


そんな風に自分を責めるなよ。



胸の奥がチクリと痛んだ。


「眠れない…」



そうなんだ


僕は昔から苦しい想いを抱える人を見ると、関係ない所で悩んで胸を痛めるクセがある。


初めは同情なのか、と考えた事もあったけど


時が経つにつれてそうでは無い事に気付いた。


──そんな生易しい感情じゃ無いんだ。


情けじゃない


優しく何かない


この世界でなら尚更、甘さ何か見せれない。



「桜雪……」


スッと眠りにつく



愛されなくてもいいから


壊れないで


実を結ぶことなく枯れたって構わない。


どうか













そばにいて。

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