第10話
食堂室の中には、すでに多くの人達が座っていた。
木製の細長いテーブル3つが中央に並び、その奥には第1回戦にあったものと同じモニターが設置されている。
「ねぇケンジ。この番号って何かな?」
青年が不思議そうに指を差した先には、番号がかかれた白いカード
よく見れば、テーブルの上に均等にカードが横に並べてあった
そしてカードの前にはイスが置いてある。
「第1回戦で自分がなった番号の所に座れって意味じゃないですか?」
多分そうであろう
僕はポケットからネームプレートを取り出した。
「では」
3人と離れ、自分の番号のカードが有りそうな所へ向かう。
3番………3番
──有った。
確かにはっきり3と明記されたカードが有った。
でも何故かその左横には1が、右横には6のカードが有る。
ストン
「あ……」
僕の左横に座ったのは、同居人の無口な少年だった。
そして気付く
何の事は無い、ネームプレートを持った100人の内の42人は、もういないんだ。
例えネームプレートで59番の人がいたとしても、カードは58人分しか無いのだから、数が順番通りにならないのは当然である。
そして部屋の順番は、勝ち残った人のネームプレートが若い順だったんだろう。
その証拠に
「やぁ、偶然じゃないか。僕のネームプレートは6番何だ」
初期では右隣の部屋になっていた青年もこちらに腰掛けたから。
「…そうですね」
ハァ……
僕はこの人に会ってから前文が口癖になるような気がしてならない
気付けば軽いため息をついていた。
そしてチラリと目だけを左に向ける
相変わらず表情を変えず、一言も喋ろうとしない少年
只意外なのが、この少年が1番にネームプレートを受け取っていたと言う事実
何も考えてないのか
恐ろしく賢いのか
眉ひとつ動かさないその状態から、彼の心理を読み取る事は不可能だし
あえて先読みしようとは思わなかった。
──これは直感だけど
彼はたぶん僕に危害を加えない
信用出来るとか出来ないのレベルじゃなくて
遺伝子レベルで脳に刷り込まれてる
そんな気がしてならないのだ。
「君の名前をまだ聞いて無かった」
無意識に言葉を発していた
少年と目が合う。
僕は目を逸らさずに聞いた
「名前、教えて」
少年は置物みたいに体を静止させて、僕をジッと見つめ続ける
数秒の事だろうけど、僕には長い沈黙のように感じた
「…アリア」
呟くように発した彼の瞳はまるで─…
「皆様、お集まり頂きまして有難うございます。食事の前に幾つか話しをさせて頂きます」
フッと我にかえる
食堂室には全ての人が集まっていた。
その中に桜雪の姿も
「まずは、第1回戦の勝利を心から歓迎致します。早速あす2回戦を開始しますが、その前に説明しておきます」
黒いロングワンピースを着た女性は、無機質な声で続ける。
「目の前にいる方が第2回戦で争う方です」
ザワッ
僕はまだ正面を見ていなかった事に気付き、顔を向けた。
目の前にいたのは、変わった民族衣装を着た若い女性であった。
と言う事は、2回戦で半分が落とされるって事か……
「よろしく」
女性は明らかに敵意と怯えの目でこちらを見続ける
挨拶を返す余裕も無さそうだ。
「ゲーム内容はあす説明します。では食事をお運びします」
可笑しな話だ
この状態で何人の人がまともに食事をとれると思ってるんだ?
それでも僕の頭は妙にクリアだ。
淡々と彼女を観察するだけ
僕は彼女を倒す事より、運ばれる食事の中味の事を考えていた。