第7話
「こちらです」
僕に用意されたのは10畳くらいの広めな洋室だった。
奧にはバス・トイレが完備されてあり、娯楽用品は無いものの生活するには不自由ない現代的な造りである。
「みんなこんな感じ何ですか?」
だとしたらこの標高が高すぎる建物も、58人の方が生活すると考えれば納得がいく。
だけど、返ってきた返答は僕の考えと違うものであった。
「いえ」
…どういう意味だ?人によって違うって事?
?
と、要領が掴めないでいた僕の耳に突然知らない男の声が響いた。
「おい、どういう事だ?何で扱いがこんなに違っているんだ!」
後ろを振り返ると、何となく会場で見たような男達3人が別の案内人に講義をしていた。
真ん中にいた、黒い髭を生やしていて腹が出ている人が先程のセリフを発し
右にいるスレンダーで目が青い、顔が整っている青年が不満そうに
「僕らだって皆が同じ待遇なら別に構わないさ。だけど、こちらの少年の部屋と僕らの部屋とでは差が出過ぎているんじゃないかな。フェアじゃないね」
そして左にいる僕と年があまり変わらなそうな男の子は、2人の様子を無言で見ているだけで何も喋っていなかった。
…そして明らかに青年が言ってた〈こちらの少年〉とは、僕の事である。
「あの…どうされたんですか?」
こうなっては見ないフリ何て出来ない。
返事を返したのは、やはり右の青年。
「やぁ。いや、すまないね。君に責任が有る訳じゃ無いんだよ?ただ部屋の格差の理由は何かと、尋ねているだけさ」
部屋の格差……
「部屋を見せてもらって良いですか?」
「ああ、構わないよ。君の隣さ」
部屋を出て、右隣のドアのぶを回して覗いた。
ドアの造りが同じだったから分からなかったが、開けてみるとなる程、確かに僕の部屋とは違っていた。
4畳くらいの部屋にはバス・トイレは完備されておらず、奧に木製のベッドが置いて有るだけだったのだ。
「…多少の部屋の質の差は気にしないけどね、君の部屋を見てあんまりだと思ったんだ。他の2人も僕と同じ造りだったよ」
…うん。それなら文句も付けたくなるかも。
後ろにいた案内人に尋ねる。
「どうして、扱いが変わるのですか?」その質問に案内人は僕を見てゆっくりと
「あなたが今日の第1回戦で代表者となったからです」
と答えた。
「…代表者、ですか?」
「はい。今回の代表者はゲームで敗者となる確率が他の方より高く、危険な条件です。それに勝利した方にはそれなりの優遇が与えられる様になっているのです」
──なる程…
確かに、そうだ。僕と桜雪は一緒にいるから簡単に勝てた訳で、単独では負けやすい様になっている損な立場だ。
「瑞希 賢治様の他にも、もう1人の代表者、それと他の会場で代表者となって勝利された方々も同じ様な扱いを受けています」
それを聞いた2人は、しょうがないな…と言いながら諦めた顔をしていた。
男の子だけは相変わらず無表情で聞いてたけど。
──そして僕も同じく、しょうがない、と思っていた。
他の人の事までは知らないけど、こんな事情を聞いてじゃあ部屋に戻ります、と言う程僕は酷い奴では無い。
彼らの部屋の状態を見た時から、考えてた。
「皆さん、良ければ僕の部屋に来ますか?4人が住んでも支障無いですし……、案内人さん勝手ですが許可してもらえますか?」
僕は当然の様に、話を持ちかけた。
理由は2つあったけど
──それは、後ほど話す事。