第6話
「けんちゃんじゃないみたい」
そう言われた気がした。
昔から時々思ってたんだ。
これは本当の自分なのかな?
もしかしたら今まで隠してただけで、もっと違う自分がいるんじゃないかな?
思いながらも気付かない様にしてたのは
「平凡」な自分を壊したく無かったから。
でも僕は新しい世界で色付いて
気付いてしまった。
──こんな僕もいたんだと。
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「それでは代表者は前に来て下さい。3番!」
ネームプレートを確認する、──僕だ。
「はい」
言ってくる、と小声で告げて前に進む。
思った通り、中央に立つとみんなの視線が痛いくらい突き刺さってきた。
さながら気分は不祥事を起こした社長のよう。
「それでは出題者はヒントを言って下さい」
僕が書くのは、何でもいい。
書いておいたのは、紫陽花だった。
「梅雨の時期に咲いて、頭文字が〈あ〉で始まる花」
「──それでは、ゲームを続けて下さい」
これなら、わざわざ被らせる気がある奴以外は書かない。
遠くの方でバカな事する奴だ…、と呟く声が聞こえた。
それは仲間がいない場合の話。
2人いれば充分なのだから。
桜雪は、大丈夫っ、と小さく言って笑った。
そして時間は経ち…
「1時間経過致しましたので、代表者は書いた花の名を言って下さい」
「紫陽花です」
「それでは、前回と同じ様にスクリーンに貼らせて頂きます。ご確認を」
スクリーンに貼りだされてる花の中に、紫陽花は1つ確かにあった。
「紫陽花は2名、またチューリップとタンポポ、パンジーを連想された方が3名以上いらっしゃったので、代表者の勝利となります」
──分かってはいたけど、心底ホッとしてる自分に死の重みを感じる。
胃が重たい感覚。
プレッシャーに負けてしまいそうだ……
その後もお題を変え、計7回やり終えた。
後の代表者達は読み通り、全員曖昧なヒントを出していたが
ヒントが曖昧過ぎて、たくさんの人が被って自滅するパターンが2回あり
誰も被らず、1人だけ自滅する場合が1回あり
残りの1回は上手く被らせ、生き残った結果……
蓋を開ければ、100中残ったのは58人だった。
敗者となった奴が今生きているのか死んでいるのか、死ぬ場合、どんな死に方になるとか
追放されて泣き叫ぶ悲惨な様子を直に見てる、僕達を含める参加者は気になってはいたが
聞く者は誰もいなかったし
主催者側も説明をしなかった。
「これをもって、第1回戦を終了したいと思います。それから、全会場の皆様のゲーム結果をお知らせしておきます。第1は86名、第2は43名、第3は52名、第4は91名、第5は60名、第6は49名、ここ第7は58名、第8は76名、 第9は64名、第10は71名、計650名が第2回戦に出場となります」
「650人……」
まだ1回戦なのに2/3も生き残ってない……
「第2回戦は明日行います。生活の用意などはこちらで準備していますので、ネームプレートの番号順に並んで案内人の指示に従って下さい。それでは失礼します」
「じゃあ…また明日。けんちゃん」
「ああ…じゃあな。早いけど、お休み」
場がザワザワとし始め、人の動きに流されて
僕は酷く疲れた気になった。
──最後の1人が会場の部屋から出るのを横目で確認して
ため息をつきながらも
やっと僕は1回戦が終わったのだと実感出来たんだ。