第5話
気が進まない。
誰かの犠牲の上で助かる何て、最低だよ。
「だって死にたくないもん…っ」
誰にも聞こえない声で呟いた。
そうやって自分に言い訳して、罪悪感から逃れようとする。
私、汚い……
フワッ
髪をくしゃくしゃされる。
「ちょ…ボサボサになるが〜んっ!」
「お前今バカな事考えてただろ?時間は有効に使うべきだよ」
ギクッ
何でこんなに鋭いんの??
「それに別に桜雪のせいじゃない、みんな同罪だ。死にたくないのは一緒だろ?」
「……うん」
「じゃ作戦な。さっきも言ったけど、あんなヒントを出す奴はもういない。代表者だって死にたく無いんだ。曖昧なヒントしか出さないだろう」
「曖昧なヒント?」
「例えば、茎が長いとか綺麗な色とか…これだと微妙だろ?ルールではヒントに関して何も言ってないしな」
……なる程。
「そして、それに対応するには代表者が書かないものを書くしかない。俺たちの場合は日本だけにあるものを選ぶのが無難だ」
そこで桜雪は気付く。
「あ…あのね、私やけんちゃんが代表者になった場合は?曖昧にゆうべき何だよね」
けんちゃんは少し考えて、いや、と小さく答えた。
「みんなが避けれるヒントを言って。花の種類はざっと10000以上、でも残ってるのは99人。誰も被らない可能性だって高いんだ。まぁその場合は改めて新しいお題を考えるみたいだけど……。とにかく僕と桜雪を被らせれば負ける可能性は無い」
そしてひと息ついて、意地悪い笑みを見せる。
「──僕達が敗者になる確率は限りなく低い、って事」
「……頼もしい。てゆか、けんちゃんキャラ違くなってないかな?」
ふざけたつもりだったけど、その言葉に驚いたのは、けんちゃんの方だった。
驚いたって言っても、目を少し大きくさせたぐらいだけど。
「そう…かな?ごめん。恐い??」
「ん〜ん。そんな事無いよっ何かスゴい大人っぽくてびっくりしただけ」
そっか、と小さく笑うけんちゃんに可愛さを感じたけど
ムッとしちゃうから彼には言わない。
「40分経過したので、代表者は前に来て下さい。」
──この時の私は
後ろで曖昧な顔をしてた彼に
気付きもしなかった。
優しい彼
普通な彼
真面目な彼
良い顔のけんちゃんしか見てなかった。
瞳の奥の、強すぎる意志を無視して。
私は後に激しく後悔する事になる。
けんちゃんをまともに見れてなかった事を。