プロローグ
この話の中のセレブたちは、作者の想像上の生物なので、あしからず。
新垣羽月16歳。普通の女子高生。勿論独身。
それなのに、
私、今日から由緒正しい財閥のお嬢様です。
何故こんなことになってしまったのか。話は三日前にさかのぼる。 深夜というにはまだ早い午後十時。私は繁華街を歩いていた。
なぜこんな時間に外を出歩いているのかはまぁ、もったいつけて話すほどの話ではないので今話させて頂く。
私の家は母子家庭で、しかも母は病気で長期入院している。生活が苦しいからアルバイトをしていてこんなに遅くなったというわけだ。
さて、結構重たい話なのに五行で終わってしまったが、そんなことはどうでもいい。問題はそのあとだ。
その日は厄日だったのだろうか。面倒なものを見てしまった。
「おじいちゃんすっごい高そうな時計もってるねー」
「うちらに金貸してくんない?孫におこづかいやると思ってさぁ」
典型的なオヤジ狩り。いや、おじいちゃん狙ってるから、ジジイ狩りだろうか。なんにしても、あたしは目の前でお年寄りがたかられてて平気で通り過ぎれるほど冷たい人間じゃない。
(それにあたしおじいちゃん子なのッッ!!!!!)
「ちょっと!!あんたらなにやってんの!!??」
「あ?……んだよ女かよ」
おじいちゃんを取り囲んでいた男たちがこっちを向いた。おじいちゃんもあたしに気付く。
(うわっ……超お金持ちそう)
格好もそうだけど、なんていうか、おじいちゃんの周りだけ雰囲気が違う。
仕草から眼差しまで、気品に溢れてるっていうか…。
「なにぼーっとしてんのぉ?おねぇさんが代わりに俺らにお小遣いくれんの?」
それに比べてこいつらの下品な顔つき。胸焼けがするわ。
「あんたらおじいちゃん離しな。警察呼ぶよ」
「なんだこの女…おい、やっちまおうぜ」
ここからは一応自主規制ってことで。ほら、残酷なシーンとかって映画でもカットされるじゃない。
「おじいちゃん、大丈夫?」
おじいちゃんは自分より少し高い位置にあるの顔を見上げた。
「ありがとう。私は大丈夫ですよ。あなたが助けてくれた」
なんだか自然に背筋が伸びる。
ゆっくりはっきりと話す言葉のひとつひとつが、重くて心地よい。
「お強いのですね。あなたのような勇敢な女性は見たことがない」
「はぁ…どうも………」
「ぜひともお名前を伺いたい。…よろしいですか?」
ぇ、どうしよう……ちょっと怪しいんだけど……いぃかな。名前だけだし。
「新垣羽月です。羽に月と書いて、羽月。」
「羽月……いい名前だ。」
感動を表すようにおじいちゃんは目を閉じた。
「羽月さん、今日は本当にありがとう。このご恩はいつか必ず」
そう言っておじいちゃんは去っていった。
私も
「いいことしたなぁ」
ぐらいの気持ちで、一日経ったらすっかり忘れてしまった。
………まさかこんなことになるなんて。
「新垣羽月様ですね。お迎えにあがりました。」