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フクロウ令嬢と狼公爵  作者: おはよう


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95/124

幕間


遠ざかっていく馬車を、ウィルとエドワードは並んで眺めていた。


「ウィル」


エドワードが声をかけると、ウィルは顔を背ける。


「俺は……お前を信じていないからな」


ぼそりと呟くその声は、どこか力を失っていた。

その響きに、ウィルは心の中で自分自身に呆れる。



カーター伯爵家は、長きにわたり憲兵隊長を歴任してきた名門だった。


幼い頃のウィルは、そんな家門に誇りを抱いていた。


兄エドワードと共に剣を振るい、どちらが隊長に相応しいかを競い合う日々。


憲兵隊の制服を纏う未来を、疑ったことなど一度もなかった。


だが、成長するにつれ――


祖父や父をはじめとする歴代のカーター伯爵が、何をしてきたのかを知ってしまった。


皇帝にとって不都合な者に、ありもしない罪をでっち上げる。

そして牢へと送り、正しい裁きが下る前に消していく。

その数は、もはや数え切れない。


信じていた“正義”とは真逆の現実。


その姿に、ウィルは強い嫌悪を抱いた。


そして――絶対に憲兵にはならないと、兄と共に誓い合ったのだ。


それなのに――


父が亡くなり、伯爵位を継いだ途端。

エドワードは、憲兵への道を選んだ。


信じていた兄に裏切られたという事実。

失望と失意を抱えたまま、ウィルはカーターの名を捨てた。



「俺は、あの時の気持ちに変わりはない」


エドワードの呟きに、ウィルは顔を上げる。


「父たちの行いを、今も軽蔑している」


「なら、なんで憲兵なんかになったんだ!」


込み上げる感情のままに声を荒らげる。

だが、エドワードは落ち着いた表情を崩さなかった。


「変えるためだ」


真っ直ぐに、ウィルを見据える。


「カーター家がしてきたことは消えない。……だからこそ俺は、組織そのものを変えるために、この道を選んだ」


その眼差しには、揺るがぬ意思が宿っていた。

それは――共に過ごしたあの頃と、何一つ変わっていない。



本当は、再会した時から気づいていた。

裏切られたと、兄もまた父たちと同じだと決めつけていたが――


もしかすると、違うのではないかと。


カーターの名を捨て、世界を巡る中で多くの人間に出会った。


善人も、悪人も。


その中で見てきた“悪い人間”と、目の前の兄の姿は――どこか違って見えた。


それでも。

素直に認めるには、ウィルの性格は少しばかり捻くれていた。



「……何かあったら、捏造でもなんでもして、カーター家を潰してやる」


顔を背けたまま吐き捨てる。

その言葉に、エドワードは微笑むように口元を緩めた。


「ああ。よろしく頼むよ」


自然と、二人は同じ方向へ歩き出す。


長い間止まっていた兄弟の時間が――

今、再び動き出した。



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