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フクロウ令嬢と狼公爵  作者: おはよう


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80話


「か、係官! 今すぐカースヴェル侯爵家の者たちを拘束せよ!」


自身の失態を覆い隠すように、主判事は鋭く命じた。


突然の指示に、係官たちは一瞬、動きを止める。

互いに顔を見合わせ、判断を迷う気配が広がった。


「主判事! 話が違うじゃないか!」


カースヴェル侯爵が、取り乱したように声を荒げる。


だが主判事は、その声に一切応じなかった。

視線すら向けず、ただ前だけを見据えている。


――一刻も早く、この場を終わらせたい。


その焦りだけが、露わになっていた。


突如として変わった主判事の態度。

何かしらの取引があったことを隠そうともしない、カースヴェルの言葉。


そして――皇室への疑惑。


法廷内は、混乱とざわめきに包まれていた。



――その喧騒を断ち切るように。

大法廷の扉が勢いよく開かれた。


姿を現したのは、憲兵隊。


兵たちは一直線に、カースヴェル侯爵へと向かっていく。


「違法薬物の製造および流通の罪により――カースヴェル侯爵を拘束する」


一際目立つ男――憲兵隊長の低い声が響いた。


その合図と同時に、憲兵たちは手際よくカースヴェル侯爵夫妻を取り押さえる。


「な、何をする!」


「や、やめてちょうだい! 私は関係ないわ!」


抵抗の声も虚しく、二人の姿はそのまま大法廷の外へと引きずられていった。


嵐のような一幕に、その場にいる誰もが言葉を失う。


「……これは、公爵様が?」


驚きを隠せぬまま、アナイスが呟く。


「いや……誰かが動いたんだろう」


肩を竦めるセルディアン。

その口元には、わずかに笑みが浮かんでいる。

――“誰か”に、心当たりがあるのだろう。


やがて、大法廷にざわめきが戻る。

その中で、ひっそりと退席しようとする主判事の姿に、セルディアンは視線を留めた。


「主判事」


低く呼びかけられたその声に、主判事の肩がびくりと跳ねる。


「判決が、まだなんだが?」


足を組み、余裕の笑みを浮かべるセルディアン。

その視線から逃れるように、主判事はわずかに顔を逸らした。


「……帝国裁判の下、ノエラン・ルヴァルティエの親権は――ルヴァルティエ公爵家にあると決定する」


早口で言い切ると、主判事は踵を返す。

そして今度こそ、その場を後にした。


困惑する陪席判事たちも、慌てて一礼し、その後を追っていった。



「お疲れ様でした」


カリスは静かに歩み寄り、アナイスに声をかけた。


「カリスさんも、お疲れ様でした」


にこやかに応じるアナイス。

その笑みに、カリスの目元がわずかに緩む。

ほんの一瞬浮かんだ、柔らかい表情。


それを見たセルディアンは、わずかに眉を寄せた。

その変化を敏感に察したカリスは、小さく息を吐くと、呆れたような視線をセルディアンへ向ける。


「……」


「……」


「……?」


頭上で交わされる、無言のやり取り。

アナイスは小さく首を傾げることしかできないのだった。



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