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フクロウ令嬢と狼公爵  作者: おはよう


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74話


セルディアンは大法廷を一瞥すると、静かに被告席へと腰を下ろした。


アナイスと、弁論人を任されているカリスもそれに続く。


その向かい――原告席には、すでにカースヴェル侯爵夫妻が並んでいる。


家紋に刻まれた蛇を思わせる切れ長の目が、獲物を絡め取るかのように細められていた。


アナイスはその視線を真っ直ぐに受け止め、セルディアンは余裕を見せつけるかのように、ゆったりと足を組んだ。



やがて、裁判の行方を決める三人の判事が入廷する。


老齢の主判事を先頭に、年若い陪席判事が二人続いた。


その顔ぶれを見た瞬間、傍聴席がざわめきに包まれる。


主判事は、皇室との繋がりが強い元老院議員。

彼が裁きを下す裁判では、どのような状況であろうと皇室に不利益となる判決が下されたことは一度もない。


――それが何を意味するのか。

帝国内に住まう誰もが、理解していた。


そして、陪席判事の二人。

見るからに、法学院を出たばかりの経験の浅い法官だった。


この裁判は、格下のカースヴェル侯爵家が起こしたもの。

皇室の後押しがなければ実現しないこの場に、この人選。


それは始まる前から、ルヴァルティエ公爵家の敗北が決まっているようなものだった。



――何も知らない者たちにとっては。



長きに渡り貴族の頂点に立ち続けてきたルヴァルティエ公爵家。

その崩壊の予感に、貴族たちは興奮を隠しきれない様子で囁き合う。


「遂に、ルヴァルティエ家が……」

「あのカースヴェルに?」

「ルヴァルティエ公爵が、そう容易く負けるか?」

「しかし……」


そんな喧騒を、セルディアンは気にも留めない。

その口元には、薄い笑みが浮かんでいる。


(相変わらず、察しの良い男だ)


この場にはいない、優秀な皇子へ――

静かな賛辞を送るように。



主判事が席に着くと、ゆっくりと木槌を手に取った。


「――これより、ルヴァルティエ公爵家に対する訴訟の審理を開始する」


木槌が静かに打ち下ろされる。

その乾いた音が、大法廷に響き渡った。



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