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フクロウ令嬢と狼公爵  作者: おはよう


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57話


冷たい風が窓を叩く音に、アナイスはソファから腰を上げ、そっと窓辺へ歩み寄った。


重く垂れ込めた雲から、雪がはらはらと零れ落ちている。

舞い降りた雪は溶けることなく、静かに地を白く染めていった。


背を駆ける寒気に小さく身震いし、アナイスは自分の肩を抱く。


静まり返った部屋に、暖炉の火が爆ぜる音だけが響いた――その時。


扉が開く音がして、アナイスは振り返る。


そこに立っていたのは、驚いたように動きを止めたセルディアンだった。


「えっと……お邪魔してます?」


照れ隠しのように首を傾げて微笑むが、セルディアンは呆然と彼女を見つめたまま動かない。


「……何故、君が?」


しばらくしてようやく発せられた問いに、アナイスは眉を下げて微笑んだ。



セルディアンと別れ、自室へ戻ったアナイスは、ウィルから届いた報告書に目を通していた。


だが、どうしてもセルディアンのことが頭から離れなかった。


彼は今、何をしているのだろう。

何を思い、何を感じているのだろう。


役目を終えた彼は、冷えた心を抱え、一人で夜を過ごすのか。


そう考えると、居ても立ってもいられなくなり、気付けば足はセルディアンの私室へと向かっていた。


部屋の前まで来て、このまま扉の前で待とうと壁に寄りかかる。


すると、静かに控えていたバルナールが、何も言わず扉を開けてくれた。


主の不在の部屋へ足を踏み入れるのは憚られたが、バルナールの穏やかな眼差しに背を押され――


アナイスは一人、セルディアンの帰りを待っていたのだった。




アナイスがゆっくりとセルディアンに歩み寄ると、彼は我に返ったように視線を逸らした。


そして、彼女の目から隠すように、袖口をさりげなく引き上げる。


その一瞬、視線に入る微かに滲んだ赤。


アナイスは何も言わず、そっと捲くられた袖口に触れる。


その指先が触れた瞬間、セルディアンの身体が僅かに震えた。


「……おかえりなさい」


見上げるように微笑むアナイス。

セルディアンは一瞬、何かに耐えるように眉根を寄せる。


だが、やがてゆっくりと力を抜いた。

まるで、纏っていた鎧を下ろすかのように。



「……休め、と言ったはずだが?」


セルディアンが片眉を上げ、咎めるように言うと、アナイスはくすくすと笑った。


「休んでいましたよ? ……座り心地の良いソファで」


戯けるようにそう言って、視線でソファを示す。


それに、セルディアンは小さく息を漏らすと柔らかく微笑んだ。


そして、アナイスの頭にそっと手を伸ばす。

大きな掌が、優しく髪を撫でる。


ほんの一瞬触れただけの温もりが、胸の奥までじんわりと沁みていく。


アナイスは自然と口元を緩めたのだった。



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