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フクロウ令嬢と狼公爵  作者: おはよう


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48話


公爵家に帰宅すると、セルディアンの動きは早かった。


執務室に入るなり、彼はカリスに次々と指示を飛ばす。

一方アナイスも、ウィルへ調査を依頼するため、手紙をしたためていた。


「では、私は失礼しますね」


書き終えた手紙を封じ、アナイスはセルディアンに一礼して部屋を出ようとした。


その瞬間――


セルディアンが、ふいにアナイスの手首を掴んだ。

まるで、引き留めるかのように。


「公爵様?」


呼びかけても、返事はない。

セルディアンの表情は、自分でもなぜそうしたのか分からない、と言いたげだった。


「えっと……」


戸惑うアナイスに、セルディアンははっとしたように手を離す。


「……後で、ノエランのところに顔を出してやってくれ。……もう寝ているかもしれないが……」


そう告げて、彼はふいと視線を逸らした。


その様子に、アナイスは思わず笑みをこぼす。


ノエランを気に掛けるこの姿は、ルヴァルティエ家に来たばかりの頃には、考えられなかったものだ。


すれ違いから、互いに寂しさを抱えていた親子の関係が、少しずつ温もりを取り戻していく――

その変化を間近で見られることが、アナイスには嬉しかった。


「はい」


穏やかな笑顔で頷き、アナイスは部屋を後にした。



ルチェのいる庭園へ続く廊下を歩きながら、ふと自分の手首に触れる。


先ほど掴まれた場所には、まだ微かなぬくもりが残っているような気がした。


ドレスの裾をそっと摘み、小さく揺らすと、室内の灯りを受けて宝石がきらきらと輝く。



初めての舞踏会。


暴走しがちな自分を、少し後ろで静かに見守ってくれたセルディアン。


テラスで踊った、二人だけの時間。


伯爵の話を通して、互いの考えが自然と重なった瞬間。


その一つ一つが、胸の奥を温かく満たしていく理由を、アナイスはまだ知らない。


けれど――


芽生え始めたこの気持ちを、大切にしたい。


そっと胸に手を当て、アナイスは静かな廊下を歩み続けるのだった。



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