38話
セルディアンは包帯を丁寧に巻き終え、手当を終えると静かにアナイスの手を離した。
アナイスは胸の鼓動がますます騒がしくなるのを感じながら、恥ずかしさに耐えきれず、ベッドから降りて部屋を出ようと身を乗り出す。
しかしセルディアンが手を伸ばし、そっと彼女を制した。
「もう使用人たちがうろついているんだ」
「はい……?」
言われた意味がわからず、アナイスは首をかしげる。
その反応に、セルディアンの表情がなぜかむっとしたものに変わった。
「そんな格好を、他の奴らが目にするだろ」
「……はぁ」
どこか締まらない返事をするアナイス。
“令嬢らしからぬ姿を晒すな”ということか、と理解してみても、ならばもう既にセルディアンに散々見られている以上、他の者にどう思われてもいい気がしてしまう。
アナイスの無頓着さに気づいたセルディアンは、深くため息を吐いた。
「令嬢」
アナイスが顔を向けた瞬間――
セルディアンの顔がすっと耳元へ寄せられる。
「……今、自分がどれほど扇情的な姿か、自覚しろ」
掠れた低い声が、耳の奥へ落ちる。
アナイスは一瞬で全身が熱くなり、みるみる頬が赤く染まっていく。
その反応に満足そうに目を細めたセルディアンは、軽く咳払いをして立ち上がった。
「後でメイドが来る。…それまで、大人しくしていてくれ」
短く告げると、何事もなかったかのように颯爽と部屋を出ていった。
残されたアナイスは、ぽかんとしたまま数秒固まり――
そのままベッドへ倒れ込んだ。
「〜〜〜〜〜?!?!」
思考が真っ白になり、しばらくの間、動くことすらできなかった。




