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幕間Ⅶ
中央神殿の聖堂には、ぎっしりと観衆が詰めかけていた。
皆の視線が向かう先には、今日の主人公――
セルディアン・ルヴァルティエ公爵。
アナイス・セリオン侯爵令嬢。
ふたりは寄り添い、何かを囁いては微笑み合っている。
その光景が目に入った瞬間、場にどよめきが広がった。
「“黒狼”が笑っている……」
「なんて美しい令嬢だ」
「まるで絵のようなお似合いのふたりだな」
賞賛と驚嘆が渦巻く中、ただ一人――
女が、強く爪を噛みしめていた。
(許さない……許さない許さない許さない……!!
どうして……どうして“あんな女”が、公爵様のと!!)
嫉妬と執念を孕んだ黒い感情が、じっとりとその身にまとわりつく。
だが、仄暗い気配を放ちながらそっと席を立つその赤い髪の後ろ姿に、気づく者は誰ひとりいなかった。




