PM5:00
高校生の時作ったメモが出てきて妙に刺さったので投稿してみます。気が向いたら、恋愛短編をまた書いてみようかなと思います。彼らがもう少し大人であれば、もう少し言葉を交わしていれば。しかしそうでないから出会えた。そうでない彼と彼女だから積み重ねられた時間がたしかにそこにはあったのだと。そんなお話です。
「ねえ、ひとつ、お願いしてもいいかな」
いつも人に頼み事なんてできない君が珍しくそんなことを言った。君はいつもしゃんとして前を向いていてその後ろ姿をみるのが好きだった。時々振り返る君の笑顔をみるのが好きだった。
僕はいつも君の後ろを歩いた。君がいつ立ち止まってもいいように、強い君がもし振り返ったときに、そこは崖っぷちじゃない、進めなくなってもいい。いつでも僕がいると、受け止められるように。君の後ろを歩いた。
でも、いつしか君が進めなくなるのを望んでいる自分がいて、君がだんだん遠くに行くような気がして、ほんとは君のためなんて建前で、君の前を歩き、守るなんてできないだけだろ、そう考えれば考えるほど自分を嫌いになっていった。
楽しそうに未来の話をする君を僕はもう受け止めきれなかった。
「なにか考え事してる?」
「いや。なにも」
店内に流れる洒落たBGMが時間の流れを遅くしていた。
「そっか。じゃあそろそろいこっか」
外は少し肌寒い。そしてコーヒーの香りをまとった君は今日も変わらず僕の前を歩く。するとふと、君が振り返った。
「ごめん!忘れ物しちゃったから先にいってて」
待ってて、となぜ言えないのだろうか。ほんとに先にいってしまっても彼女はきっとなにも言わない。それでも、僕は君を待ってしまう。
喫茶店のドアベルの音が聞こえた。僕が振り替えると君は少し駆け寄って、
「待っててくれたんだ。」
そういうと、どこか悲しそうに微笑んだ。
「じゃあいくか。」
「待って」
歩き出した僕の行く手を阻むように目の前に回り込んできた。そして、僕の両手を優しくつつみ、僕の目を、みつめた。
「ねぇ、ひとつ、お願いしてもいいかな」
彼女が何を考えているのかわからなかった。思えば僕は彼女の何を知っているのだろう。そんなことを考えた。僕は君の瞳に写る僕をみていた。
「私、なにもわからなかったの。でも、分かりたいと思った。そしたらさっきね、少しはあなたのこと分かってたかなって思えたの。だから、多分今私が考えてること、合ってると思うの。だから、ちゃんと言ってほしいの」
そういうと君の中の僕が歪んで、流れ落ちた。
君が泣いたのを初めて見た。とても綺麗だと思った。
とても綺麗で、眩しくて、僕には直視できなかった。
なにも言えなかった。彼女の言う「ちゃんと言って欲しい」というお願い。僕はその「ちゃんと」の意味を理解してしまった。
全部言ってしまえ。それで醜い自分を認めて、これで終わりにすればいい。そう分かっていても、自分は弱かった。君の願いひとつすらうまく叶えられないのに。それでも僕は君の手を振りほどくことすらできずにいた。
外は寒さが増し、その手の暖かさだけが、たしかに伝わっていた。
ーーーー
「ねぇ、ひとつ、お願いしてもいいかな」
これで最後。一度くらいわがまま言ってもきっと大丈夫。そう思った。あなたはいつも優しくて、いつも私を笑って受け止めてくれた。そういうところが好きだった。私を見つめるあなたの透き通った瞳が好きだった。
私はいつもあなたの前を歩いた。目につくものに飛び付いていってしまう私の悪い癖。でもはっと振り替えると必ずあなたがいてくれる。すごくほっとして、怖いものなんてなくなった気がして。あなたの前を歩いた。
でも、いつしか私の知らない間にあなたは違う道に行ってしまってるんじゃないかって、振り替えるのが怖くなった。本当は無理してついてきて、優しくしてくれてるんじゃないか、私がこうしていれるのがどれだけ幸せか、そう考えれば考えるほど、あなたを好きになっていった。
あなたの優しさにいつか裏切られてしまうことが私には耐えられなかった。
「なにか考え事してる?」
「いや。なにも」
コーヒーなんて苦いの飲めないのにいつもだまってついてきてくれるあなたの好きな飲み物を私は知らない。
「そっか。じゃあそろそろいこっか」
外は少し肌寒い。私は今日もあなたの前を歩く。ここで私が振り替えったら、あなたはまた笑ってくれるだろうか。
振り替えると、うつむいて歩くあなたがいた。
「ごめん!忘れ物しちゃったから先いってて」
そういってさっきまでいた喫茶店に駆け込む。なに試すようなことしてるんだ。私、怖くなってしまったんだ。あなたがいなくなることが。だけど、このままじゃもっと辛くなる。そうだ。もうこれで終わりにしよう。もう少ししてこのドアを開けてあなたがいなかったら、これきりにしよう。でももし。あなたが待ってくれていたら。あなたならきっと。あなたをわかっていると思いたい。
意を決して重たいドアを押すと、あなたがいた。
「待っててくれたんだ」
「じゃあ、いくか」
「待って」
後ろからじゃダメだ。きっともうこれからは違う道を歩いていっちゃう。私があなたの行く手を拒んでいいのは今日で、最後だから。君の手を強くつかんで。
ちゃんと正面から。
「ねぇ、ひとつ、お願いしてもいいかな」
あなたが何を考えているのかわからなかった。思えば私もあなたになにか伝えられただろうか。そんなことを考えた。あなたの綺麗な瞳をみつめていた。あなたは私のことなんてもう見ていないようだった。
「私、なにもわからなかったの。でも、分かりたいと思った。そしたらさっきね、少しはあなたのこと分かってたかなって思えたの。だから、多分今私が考えてること、合ってると思うんだ。」
「だから、ちゃんと言ってほしいの」
あなたの瞳が少し開いた。どうやら合ってるらしい。もしかしたらあなたのことわかっていれてたのかもしれない。
ただ、私が信じられなかっただけだ。
だから、あなたは本当に優しい。あなたの瞳はとても綺麗で、泣かずにはいられなかった。
私の知っているあなたはきっとなにも言わない。言えない。だからもうあなたを信じない。信じたくないのに、どうして手を離さないのだろう。わからない。このまま振りほどいて行ってしまえばいいのに。
外は寒さが増し、あなたの暖かい手にもう少しこのまま触れていられたら、と願ってしまった。
お気づきかとは思いますが、主は俺ガイルが好きです。
ありがとうございました。機会があればまた。




