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第八章

第八章 真実への休息のカタチ。



君をいくら求めても、

二度と手に入りはしないこと。

わかっていても、とめどなく。

溢れる想いをただ吐き続け、

それでも埋まらぬ、この心。

君が欲しいとどんなに嘆けど、

君は二度と帰ってこない。

心は空っぽ。

満たしてくれる、人はいずこ何処に?



海に行った日から数日が過ぎ、今日はお祭りの日だ。

海から帰ってきても頭から離れない、愛花が言った言葉を何度も頭の中で再生させては思考が停止し、何もやる気が起きなくなっていた。

本人に確かめるという手がありながらもそれを実行できずにいた。

結局お祭りの日になってしまい、今日は渡と波子さん、それからクラスのゲーム仲間とお祭りで楽しむという感じのスケジュールが去年から出来上がっていた。

ただし今回は・・・。

「裕二く~ん!お祭り行こうよ!」と、周りのお祭りムードの中、一人だけ異端の存在が紛れ込んでいた。

僕はお祭りに向かっている途中だというのに、そんなことを言う愛花を「今、向かってるからね~」と、言う言葉で軽くあしらうと渡に“スタダス”のダウンロード追加ボスの素材の事で話しかけた。

「渡も取ってないんだよね?“腐敗王の腹巻”」

渡は話しかけられたことに気づき僕の方を向いて後ろ向きに歩きながら答えた。

「そうなんだよ。あれってマジで戦闘ランク最高の“腐敗王・スデホアド”が落とすんだよな?波子」

返答を求められた波子さんは、渡と同じように後ろ向きで歩きながら、さらに今話してた“腐敗王・スデホアド”の最高ランクと戦いつつ答えてくれた。

「うん、私は取った。」

そっけない返答だったが、僕と渡にはかなりのダメージを与えていった。

「俺と裕二で50回以上も腐敗王を倒してるんだぞ?いい加減、落ちても良いんじゃねえの?」渡がもう嫌という感じでそう言うと僕の後ろから

「一回で落としたよ?今その素材12個余ってる・・・けど?」

愛花だった。

愛花がとんでもないダメージを僕と渡に与えた。

「「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、あり得ないでしょ?」」と、渡と見事にシンクロしてしまった僕の突っ込みを軽く打ち砕く画面をすぐさま“どーだ!”って感じに提示してくる愛花に対して僕たちは何も言えなかった。

渡と二人で肩を落として歩いているとあっという間に神社に着いた。

神社の入り口では既にゲーム仲間の・・・説明が面倒なのでA・B・C・Dで分けるとしよう。が、待っていた。

「お、波子先輩はやっぱりゲーム歩行を完全にマスターしていたか・・・賭けは俺の勝ちだな」とAが言えば

「いや、裕二先輩はゲーム歩行ができないはずだ!」とBが言う。

Bの言葉にイラッ!っときた僕は外出時はいつも持ち歩くようにしている肩掛けバッグからゲームを取り出し、スリープモードを解除してゲームをし始めた。

それを見たCが「ほら見ろ、裕二先輩も出来るじゃないか」そう言って最終的にDが勝ちを宣言した。

「渡先輩はゲーム歩行が―――」

「ん?俺ゲーム歩行できないよ?昔、あれやってて電柱に思いっきり突っ込んで笑われたから、それからやってないな」

それを聞いた途端Dがガクッと肩を落とした。どうやら勝利宣言し損ねたらしい。

その代わりにCが飛び跳ね始めた。そしてAとBとDに鼻高々と言い放った。

「ソースせんべい三回分が奢り!」

Cは相変わらず馬鹿を突き通しているようだった。

AとBとDは笑いをこらえるので必死のようなので僕と渡、波子さんと愛花の四人は早速、何から回るかをじゃんけんで決めようと渡が言ったのでじゃんけんを始めた。

「俺はグー出すよ・・・」と、渡が言った。

するとそれに対抗しようとしてか波子さんも真剣にやるためだろうかゲームをバックにしまって宣言した。

「私はチョキを出す・・・」

それに続くように愛花までもが宣言した。

「私は臨機応変に対応する」

うん、ただのじゃんけんだね・・・。そう思いつつも僕は渡や波子さんの思考を読んで

「グーを出すよ」そう宣言した。

そしてじゃんけんが始まった。

「「「最初はグー、じゃんけん・・・・・・」」」

「「「ポイ!!」」」

渡は宣言と違ってチョキを出し。

波子さんは宣言と同じでチョキを出し。

愛花は臨機応変に対応したのであろうチョキを出し。

僕は宣言通りにグーを出した。

「勝てた・・・じゃあとりあえず射的から」僕がそう言うと、じゃんけんが終わるのを待っていたかのようにA・B・C・Dが集まってきた。

そして皆で射的のある場所まで向かうことになった。



「おぉ!お前ら今年も来たなぁ!」

そう僕たちに鼓膜が破れそうなくらい大きな声でそう言って2メートル以上はあろうかという巨体が近づいてくる。僕たちは耳をふさいだまま、その巨体に対して後ずさりする。

そんな中、渡が一人で一歩前に出て巨体に言い放った。

「結局、その大声のせいでついに、端まで追いやられたのか!」

それを聞いた巨体は動きを止め、僕たちに背中を向けると“ズーン”と沈んだように肩を落として何やら呟きだした。

「俺の巨体で子供が逃げるってんで、ここに追いやられてんだよ・・・笑えよ、馬鹿にしろよ・・・どうせ俺なんて・・・あぁ子供好きなんだがなぁ~」

渡はその言葉を聞いて追い打ちをかけるようにさらに言葉の槍を放つ。

「30過ぎたオッサンが犯罪者か!」

その言葉にその場に居る、波子さんと愛花を除く全員が一斉に『お前がだよ!!』と渡にツっこんだ。

「え?俺なんかやった?」

「「「「「やってる!!」」」」」渡への反撃が始まった。

「何を?何もしてなくね?」

反撃の一打目は僕だった。

「渡、波子さんに散々・・・服脱がせてるじゃん!」

「あれは私が脱いでるだけだよ?渡に見てほしいから」

僕の一打目はどうやら波子さんに打ち返されたらしい。ほらな、という顔で渡は腕を組んで頷いている。

「渡先輩!この前小学生を相手に、下着の取り引きしてたの見たんですよ!」

二打目はBが担当らしいが、今回は相当効きそうだと思っていた僕にまたしても

「あぁそれは波子の妹に波子の下着を持ってきてもらったんだよ・・・」

「あーだから最近下着が無くなってたのかぁ・・・てか、渡?欲しいんだったらあげるよ?それこそ今、穿いてるのを・・・」

僕はその言葉を遮るようにあわてて波子さんの口をふさぐ、が直ぐに渡に蹴り飛ばされた。蹴り飛ばした後、渡は起き上がろうとしている僕を見降ろして

「波子の口に触れていいのは俺だけだ!」

などと宣言していたが波子さんと愛花以外は呆れた表情で次の反撃を考えていた。

「じゃ、じゃあ!この前、絆町で知らない女性とファミレスで話してたのは!」

そう言ったのはDで、もうすでに犯罪がどうのこうのから離れてはいるが、今回は波子さんも興味心身に喰いつきそうな内容だ。自業自得だよ渡・・・と、今度こそ勝利を確信した僕にまたしても渡が三打目を返した。

「あれは絆先輩があまりにもシツコイと相談を受けたんだ・・・今の絆先輩の彼女に・・・まぁ、あのあと結局は付き合うことにしたらしいな・・・絆先輩が言うには彼女を助けたのがキッカケだそうだが?」

波子さんは“ほっ”とした様子だが僕たち反撃部隊はまたしても攻撃に失敗してしまった。最後に残るのは情報部の部員であるAとCにかかっている。

「情報部を甘く見ないでくださいね渡先輩!俺が掴んだ情報によれば・・・放課後、誰も居ない屋上で波子先輩と何かしてるそうじゃないですか!?」

四打目はAの攻撃だった。その威力は凄まじく渡を容易く貫くほどの強さを持っている。

「それって僕と渡と波子さんの三人でやってる自称写真研究会じゃないかな?」

わけがなかった。

僕は味方の攻撃を渡の代わりに防いでしまったわけだが、まぁしょうがないだろう。なんせ自称写真研究会は渡が波子さんを隠し撮りした写真を評価するなんか方向性がズレまくってはいるが、“ちゃんとした”僕が居る研究会なのだから大丈夫・・・だと思う。

Aは仲間が裏切った!と喚いたが直ぐにCが最後の攻撃を放った。

「ふっふっふ!渡先輩・・・僕はあなたを驚かせる秘策を持っている・・・それは・・・」

そこでいったん長い沈黙が流れる。

祭りの賑わいと、微かに聞こえるセミの鳴き声が僕たちを包んだ。

そして30秒近く経過した頃、やっとCが口を開いた。

「渡先輩が好きです!付き合ってください!」

そう言えばすっかり忘れていたが、Cは女の子なのだった。

一人称が“僕”なので忘れがちだった僕たち全員を確かに驚かせたが、少しの沈黙の後、渡があっさりと「俺には波子が居るから・・・ごめんよ」とかなんとか言ってフると、あとにはCの泣き声が響くのであった。



渡への反撃に失敗した僕たちはCが泣き止むのを待って当初の目的である射的大会を行うことにした。

射的大会とは3年くらい前に僕と渡がこの祭りでオジサンを相手に競ったことが始まりで、以降僕たちは毎年のように競っているある意味で毎年の楽しみになっていたりする。

ちなみに優勝はいつものように僕が頂いているが、今年は愛花という新たな敵が加わるのでどうなるかわからなかった。

「今年の目玉は『スタダス3』と本体のセットだぁー!!」とバカみたいな大声で巨体が僕たちにそう言って受付を始めた。

僕はオジサンに200円を渡し、5発の弾と射的用の銃を受け取る。

僕に続いて渡、波子さん、愛花、A、B、C、Dの順番で準備が整い、全員横一列に並んだ。僕はいちばん右端を選んで、今年の目玉に狙いを定める。

「俺はこの日のために家に射的の練習場を造って一ヶ月前から毎朝一時間練習を重ねたんだ!」そう言って一発目を撃ったのは渡だった。

二段目のガムの塔が崩れ一段目に置いてある様々な塔までをも、まとめて崩していった。

だが、これくらいの事で驚くようなオジサンではなかった。

去年、僕は一番上の段の的を落とし、連鎖的にほぼ全てを一度に落とすということをしたからだ。あの時のオジサンの顔が見る見るうちに青くなっていく様子は今でも覚えている。が、今年はどうやら配置にも気を配ったらしく、去年の再現は難しそうだった。

僕と渡が競っている中で波子さんやAやB、C、Dは一つ一つを確実に落としていきあっという間に弾を撃ち切って、見物の側に移った。

そんな中、愛花は僕と同じでまだ一発も撃っていなかった。

僕はそろそろと、いう感じで今年の目玉に照準を合わせる。

撃った。続けて素早く弾を込めてさらに撃つ、それを繰り返して残り一発を込めようとしたとき、それは起きた。

今年の目玉である的が落ちたのだ。

僕はあわてて横を見て驚愕する。

愛花だった。愛花が撃ったのだった。

残り一発で落ちるところまで持っていった僕の獲物を横取りするように搔っ攫っていったようだ。

オジサンは口を“ぽかん”とあけたまま動かなくなっており、同様に波子さんや渡、そして僕までもが数秒間の間、言葉を発することができないでいた。

その沈黙を破ったのはもちろん落とした愛花だった。

「やった!これで優勝かな?ねぇ裕二君に一つだけ言ってあげる♪」

愛花は銃を置くと、僕の方を見て口を開いた。

「勝利を確信した時点で、その人の負けが決定するんだよ?」

その通りだった。僕は確かにこれで終わりだと思った。でもそれが負けにつながるとは思いもしなかった。

僕は肩を落として銃を置くと両手を力なく上げて愛花の方を向いて呟いた。

「僕の負けだよ」

その瞬間、祭りが動き出した。

どうやらあと2時間ほどで花火が始まるらしい。

そしてその花火が終われば祭りも終わる。

僕は思った。

楽しいこの時間が永遠に続けばいいのに・・・と。



射的をやり終わり、金魚すくいやクジ引きに、さらにはなぜか毎回のように賑わう、難易度が神業級というわけのわからないクレーンゲームをやり終え、8時半を回ったころ僕たちは最終的に花火を毎年見ている神社内に広がる林の中に来ていた。

「それにしても最初にここで見ようなんて言い出した奴って誰だよ?蚊が多くて毎年のように虫よけスプレー持参は無いぜ?それに今年は警備が厳しいせいで、ここに入るのも一苦労だしよ・・・」

林の中に入るにあたってAとBとCとDが居ると人数的に厳しいので、僕と渡と波子さんと愛花の四人だけで入ったのはよかったのだが、さっきから「蚊が多い」と、言うことで渡と波子さんが文句ばかりを言いまくっていた。

僕はと言うと渡たちの言葉を聞き流しつつ僕の前を歩く愛花を見つつ、この前言われた事ばかり考えていた。

「永遊広場・・・か」僕は誰にも聞こえないような小さな声でそう呟くと思考を巡らせた。

十年くらい前に縁が神隠しに遭っている・・・それは聞いていたが、その時にもう一人抜け出せた人がいたなんて初耳だった。

この町では度々、子供が行方不明になることがあったのだ。

そう十年前までは・・・日常的に。

それが神隠しって言われる原因だけど、一度に消えるのは一人なので毎回のように誘拐事件だの家でだのと、警察がそのたびに捜索したが全くそれらしい痕跡を一個も掴めぬまま子供も帰ってこないということで、いつも神隠しとか神に喰われたとかと、いうことにされていた。のだが、十年前に一度に十人くらいの子供が神隠しにあったことがあるのだ。

そして帰ってきたのは如月縁、つまり今入院中の“あの”縁の一人だけと、この前図書館で調べた十年前の新聞にも書いてあった。

でも、愛花は別の答えを出してきた。

僕も一度は愛花と一緒に『永遊広場』に入っているのでわかるのだが、あれは今考えてみれば神隠しに遭った子供たちである。

いつの時代からかはわからないが、確かにこの躑躅町には昔から神隠しがあったのだ。

十年前の大量神隠しを境に、神隠しが起きなくなったのですっかり町の人たちの記憶も薄れているのだろう。

それに当時僕はまだ小学生になったばかりで、その時の記憶はあまりないのだ。

覚えてるとすれば当時流行っていた都市伝説ごっこくらいで・・・あっ!

「渡、ちょっと波子さんと先行っててくれない?僕ちょっと愛花に話したいことがあるから・・・」僕が慌ててそう言って愛花の腕を掴むと、渡は変な微笑みで頷いてから

「裕二もついに我慢できなくなったか・・・まぁワンピース一枚で歩いてる女の子を見てたらそうなるよなぁ」物凄い勘違いを軽く放った。

「違うよ!それに僕はそのジャンルが嫌いなんだよ?」

僕の言い訳に「はいはい」と、投げやりな感じで答えた渡は波子さんを連れて林の奥へと消えていった。

渡たちが見えなくなったのを確認すると僕は愛花に言った。

「僕、思い出したんだ。小学生のころに流行った遊びの事を・・・」

「その遊びは都市伝説ごっこって言って、学校の図書室にあった本に書かれている都市伝説を再現しようって馬鹿みたいに頑張ったんだ。で、その時に一番面白かった都市伝説があってそれの名前が・・・」

僕はそこで言葉を止めた。この先を言っていいのか分からなかったからだ。愛花に話していいのか分からなかった。

「『永遠の遊び場』って言うんだよ・・・本に書いてあった通りに常に夕焼けを再現するために自分の部屋の壁をクレヨンで塗って、それから部屋の扉には『えいえんのあそびば』って書いて、そこで遊んでいる限りずっと遊べるって言ってさ・・・あとで親に怒られた。・・・それで次の日、皆で家出をしたんだ。そして見つけてしまったんだ、本当の『永遠の遊び場』を」

言ってしまった。だけど後悔はない・・・と思う。

そして僕はさっきの話の続きを言う。

「そこでさ、会ったんだよ・・・浴衣姿で楽しそうに遊んでる女の子に、たぶんそれは・・・」

「君だよ、愛花」

僕がそう呟いたと同時に花火の上がる音がしたが上を見上げる気にはなれなかった。ただ目の前に居る愛花を見つめて答えを待った。

愛花は僕が話し始めた時から俯いていて、表情がよくわからないのでもしかしたら泣いているかもしれなかった。

でも、それは違っていた。

「そう、私は神隠しにあったの・・・お祭りの日にお母さんと一緒に家に帰ろうとしてたの・・・私が走っていて、でもお母さんは心臓が弱くて走れなかったの・・・それで私は『永遊広場』に迷い込んで遊び続けてたの・・・それで裕二君が私を連れ出してくれた。でも、その時に裕二君と一緒にいた子供たちは皆、囚われてしまった。」

その先に続く言葉が僕には何となくわかった。でも、分かった途端聞きたくないと思った。その言葉は聞きたくないと思った。

だけど愛花は続ける。話すのを止めない。耳をふさぎたいけど動けなかった。

愛花がいつの間にか抱きしめていて、動けなかった。

そして少女は答えた。笑顔で優しく、残酷な答えを僕にくれた。

「私が如月縁・・・あの縁の本当の名前が涼霧愛花だよ」

僕は“縁”を押し倒した。



僕が寝転がってから十数分くらい経っただろうか?花火のナレーションがクライマックスを告げるころ、地面に寝転がる僕に立ちあがった“縁”が言った。

「どう?気が済んだ?私を犯してスッキリした?」

「ただのキスでしょ・・・」

今まで縁だと思っていたのは“愛花”で、今まで愛花だと思っていたのが“縁”だった。

そう言えば縁は養子だったのだ・・・すっかり抜け落ちた記憶が綺麗に元に戻っていき、心を傷つけて僕を苦しめる。

“縁”が戻ってこないと分かった“縁”の親は“愛花”を養子として、そして縁として育てた。いつしか周りは愛花を縁と呼ぶようになり“縁”が帰ってきたことになった。

“縁”は四歳になる直前で神隠しに遭い、少しの期間は成長したので小学校一年生くらいには見えるようになっていた。

そこに僕が家出を決行し、“縁”を『永遊広場』から助け出した。

そのあと“縁”は親のもとへ帰ったが、そこには既に居場所がなく、“縁”と名乗っているのが嘘と扱われた。

その時、当時の“愛花”が名前をくれたのだ。だから“縁”はお礼のつもりで神隠しの事を話した。それが間違いだったと“縁”が気付くのはかなり後になる。

そのあと“縁”は『永遊広場』を使って生活し始めた。

広場に入らなければ大丈夫ということがわかったので、広場以外の場所で全てを手に入れ生活した。

その時に見つけたのが『都市伝説』の書かれた本だった。

“縁”と同じく『永遊広場』に住んでいる、お婆さんに文字の読み書きを教わって少しずつ本を読み進めていった。

そしてある時見つけたのだ『願いの形』という都市伝説を・・・。

それから“縁”は『願いの形』を求めて今に至るというわけだ。

その話を僕が地面に十数分くらい寝転がっているときに、隣で“縁”が話してくれた。

僕も立ちあがると“縁”が、また抱きしめてくれた。

嫌だとは思わなかった。ただ、優しい温もりを感じた。

「大好きだよ・・・裕二君」

僕はその言葉を聞いたあと急な眠気に襲われ眠ってしまった。

完全に眠りに着く前に微かに聞こえた気がした。

「さよなら」

そんな悲しい呟きが・・・。


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