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第四章

第四章 日常のカタチ。



何気ない日々、普通の日常。

朝の鳥の鳴き声も、

自転車のブレーキの音も、

誰かの会話も、全てが日常。

昨日と同じ今日があり、

今日と同じ明日があるだけの日々。

普通はつまらない、だから皆は面白い方へと手を伸ばす。

普通も輝いているのに気付かずに・・・。

僕も同じく手を伸ばす。

普通は嫌だと手を伸ばす。

君は僕を引きとめた。

君は僕を染め上げる。

普通という名の自分の色で・・・。



朝、それは日常の入口・・・のはずだった。

僕の隣でスヤスヤと眠る全裸の少女を見るまでは・・・。

僕は慌てて身体を起こすと部屋を見渡す。自分の部屋で間違いない・・・が、隣に居る少女、愛花は全裸で寒そうだな、と思った・・・・・・。

「って違う違う!何で僕のベッドで寝てるのさ!しかも何も着ないで!」

僕はベッドから出ようとして気付いた。

「何で僕も何にも着ないで寝てるんだーーーー!!」

日常が始り、そっこうで日常が終わりを告げた。

僕は急いで服を着ると渡たちを起こしに行こうとして部屋を出たが立ち止まった。

「渡と波子さんは関係なく服着てないよな・・・・・・はぁ、朝ごはんでも作っておこうかな・・・はぁ・・・」と、昨日と同じでため息をつきまくっている。

一階へ降りてみるとまだ時計の針は6時半を過ぎたところだった。

とりあえず昨日の味噌汁の残りを温めて、それからお皿とジャムとマーガリン、それと食パンを出し終えた僕は次に目玉焼きを作ることにする。

そのあとはホットケーキを作り、最後にベーコンを焼いたら完成。

完成した朝ごはんを並べ僕はもう一度時計を見る。

7時13分をさしている、もう起こさないといけない時間だ。

僕は嫌々渡と波子さんの部屋まで行きノックする。

「返事がない・・・つまり放っておいていいな・・・次は愛花・・・って僕の部屋か・・・はぁ、とりあえずノックすれば時期に出てくるだろう・・・」そう呟きつつ渡と波子さんのいる部屋の隣にある自分の部屋のドアをノックする。と、すぐドアが開いた。

意外と愛花は既に着替えており、裸エプロン姿は・・・って

「いつからコスプレな家になった!・・・渡・・・・・・今日こそ死ぬがいい!」

勢い良く僕は渡と波子さんの部屋のドアを開けた。そこには・・・・・・

「波子さんまで裸エプロンですか!?てか、渡・・・お前は何か間違ってる気がする・・・。」

二人とも裸エプロンにお着替え中だった・・・。

頼むから僕の家でファッションショーやるのは止めて・・・。



僕の願いが通じたのか裸エプロンは急遽とりやめられて、今日は隣町に出かけることになり、朝食を食べ終えると片づけをしてから各自出かけるための準備をし始めた。

「えっとスタダスは必須だよね~?」波子さんが僕たちに確認を取ると皆慌ててスタダスを詰め込む。準備には少々時間がかかり家を出るころには10時を過ぎていた。

隣町に行く手段は二つ、いや三つ・・・四つ、ってのはどうでもよくて、今回は電車で行くことにした。

隣町の絆町は僕たちの住む躑躅(つつじ)町から電車で十分ほどで行けてしまうような町なのでそれこそ歩いていってもいい位なのだが・・・。

「電車で行かないとあいつが怒るだろ?そもそもお前の思い出だ!」と、渡が言って毎年のように電車で行っている。

普段は自転車でいける距離なので自転車で遊びに行ったりもする。絆町はそういう町なのだが、まぁつまり今日は特別な日なのであるが・・・。

愛花も連れてきて良かったのだろうか?さっきからスタダスをやっているが無表情で少しつまらなそうな感じだ。

そう思っていると『次は絆町~』というアナウンスが流れる。よし!と言いながらゲームをスリープ状態にして鞄に入れる渡を見ながら僕はあの頃と変わらないのはこいつだけか・・・そう心の中で呟き、あまり人の乗っていない電車から降りて

「着いた!」とか言ってみた。すると他の三人も続けて「着いた!」と言ってくれた。

それから階段を上って下りてそして改札を抜け外へ出ると僕たちは強い夏の日差しに照らされて目的地へ向かおうと歩き出す。

ふと後ろを振り返って愛花を確認する。その顔には笑顔が戻っており波子さんとなにやら話してるらしい。それについていけないのか渡が僕の隣に並んで歩く。

「あの人はどうしてるかねぇ~また本でも読んで過ごしてるのか?」

「わからない・・・けど今日は起きて僕たちを待ってると思うよ?」

僕がそう返すと渡は“はぁ”とため息をついて

「お前、連絡とってないのか?一応彼女だろ?」

「まぁ“元”彼女・・・ね。『友達の方が死んだとき楽でしょ?』って言われたからね。それに病院は携帯禁止だし・・・。」

「お前はよく分からないなぁ~彼女と結婚予定だろう?てか、プロポーズ受けたんだろ?二週間前に・・・」

「まぁ、あの人はokしたけど・・・病気が治ったらってことで同時にフラれた。」

「あの人もわからん!」そう言って渡は頭を横に振ってそれから

「癌だろ・・・治りそうなのか?」

僕は空を見上げて立ち止まる。セミの鳴き声と車の音、それから後ろから少しだけ聞こえる波子さんと愛花の話し声が聞こえる。少し考えてから前を向いて歩き出して答えた。

「さぁねぇ~・・・・・・縁さん・・・しだいかな?それと僕・・・。」

「そうか・・・」そう言って渡は立ち止まって波子さんたちが来るのを待つことにしたらしい・・・渡の数少ない良いところ・・・だな、と思う。

僕は構わず進む、彼女が、縁が待つ病院はすぐそこだった。

セミの鳴き声だけが聞こえる・・・そんな気がした。



病室、ちなみに個室に入ると僕の予想通り彼女は起きていた。

「やぁ気分はどう?」僕がそう聞くと彼女は窓の外の山を見たまま答えた。

「最悪・・・でもないか・・・裕二が来てくれたし・・・渡たちは今日は来ないの?」

「まぁね。女性の方々をつれてゲーセンに行った」

それを聞いた彼女は僕のほうを見て手に持っていた本を閉じると

「じゃあキスして・・・それから」

「ダメ・・・その先で言うことは出来ない。キスならしてあげるけど・・・」僕は彼女の言葉を遮るようにそういった。

「どうして?付き合ってないから?」

「違うよ、縁がそんなだから・・・それにこんな場所で・・・」

「裕二は私がして欲しいって言えばしてあげる。って言ってたのにね・・・それに場所なんて、君には関係ないでしょ?」そう言ってベッドから降りてまだドアの前に立っている僕の目の前まで来ると抱きついてくる。僕はドアに背を預ける状態になる。彼女はキスを求めてくる僕はそれに答えるしかなかった。

唇が重なり舌を絡ませて・・・いやらしい音を立ててキスをした。

一分くらいそうした後で唇を離してそれから僕は彼女を連れてベッドに近づく、彼女をベッドに寝かせて僕は椅子に座って彼女に聞いた。

「満足?それとも物足りない?」

彼女は火照った顔で僕のほうを見て答えてくれる

「50点・・・裕二からして欲しい・・・君のダメなとこはそこ・・・無理やり襲ってくれた方が楽しめるよ・・・キスも、それ以上も・・・今日はもう帰っていいわ」

そういった彼女は窓の方を向いて寝てしまった。

僕はそんな彼女を少しの間見つめながら過ごしてから立ち上がると

「今度のクリスマスまで縁が生きていたなら、してあげるよ・・・。」そう言って僕は病室を後にした。

最後、病室を出るときに「大好き」と聞こえた気がしたが気のせいということにしておいた。



病院を出た僕は渡たちが待つファミレスへと向かった。

ファミレスまでの道のりで僕はずっとセミの声をBGMにして縁の事を忘れようとしていた。だが忘れられず、そうこうしている間にファミレスについてしまった。

「よっ!久しぶりだな、今日は姫に会いに来たのか?」そう言って出迎えてくれたのは好きな人目当てでこの町のショボイ大学に入った絆先輩だった。

「もう会ってきました。それより絆先輩は何連敗したんですか?まだ記録更新中なんでしょ?」そう僕がいやみまじりに言うと絆先輩は胸を張ってこう答えた。

「聞いて驚くなよ?いいか?本当に言ってもいいか?」

「早く言ってください!帰りますよ?僕たち一応忙しいんで・・・」中々言わない絆先輩がウザくなったのでそう言ったが絆先輩は笑みを残したままで言おうとはしない。

僕は渡の横に座るとメニューを開いてとりあえずドリンクバーを選びそれからメロンソーダを注ぎに行った。

それから五分くらい過ぎて僕が鞄からスタダスを出して渡や波子さんそれから愛花にまぜてもらおうとしたとき突然、絆先輩がとんでもないことを言った。

「196連敗の記録を止め、やっと付き合ってもらえることになった!」

「タメが長すぎて感想が『あぁ・・・そう』としか出てきません。」僕はそう言ってゲームをスリープモードからといてグループに入る。するとすぐに絆先輩もゲームを取り出すと僕たちに混じってゲームをしはじめた。

絆先輩は僕たちの通う高校の先輩である。去年卒業し好きな人の行く大学に行き、何回も告白し、それで先日okをもらったらしい・・・まぁ一ヶ月ももたないと思うけど・・・。

なぜならこの絆先輩は意外と頭がよくゲーム三昧、遊び三昧で過ごした高校生活で一度も学年トップの座を渡したことが無く女子からも人気があったが、高校の入学式で出会った同じく入学したての高校生の女の子を好きになり、結局卒業しても追いかけてやっと付き合ってもらえるようになった・・・か・・・・・・殆ど向こうが諦めた感じだろうし。

そう思いながらメロンソーダを飲もうとして気付いた。メロンソーダが無くなっていた・・・はぁ、とため息をつくと一旦ゲームを置いてメロンソーダを注ぎにいく、そこで愛花も一緒についてきた。メロンソーダを注ぎながら、そういえば今日はあまり愛花と話してない、と思ったが気にせずメロンソーダがコップに注がれていくのを眺めてる。

注ぎ終わって席に戻ろうとすると愛花に呼び止められた。

「ねぇ、裕二君は縁さんが好きなの?」

愛花の口からその名前が出たことに少し驚きつつ、すぐに渡るか波子さんが教えたんだなという答えに辿り着いた僕はそれに答えた。

「ん~どうなのかな・・・わからない。けど嫌いではない。」

僕はそれだけ言うと席に戻ろうともう一度歩き出す。

僕はまた嘘をついたと分かっていたが気にはしなかった。

嘘をつくことには慣れてるから。

そこで僕は疑問に思った。

僕はなぜすぐに愛花を受け入れられたんだ?僕は人を疑って、そしてそういう人に対して嘘をついてきた。なのに愛花には今まで嘘をつかなかった・・・。

好きなのかな・・・これは僕が愛花のことを好きになったのかな・・・。

自問自答で答えが出るはずも無く諦めて席につきメロンソーダを一口飲むとゲームを再開した。

それから昼食を終えるまで絆先輩と一緒にゲームをして楽しんだ。

休日は残り半分くらいで終わりだった。



昼食を食べ終わった僕たちは、これからデートだという絆先輩と別れて、今日は帰ることにした。明日は学校があるためだ。

「まぁ、夏休みまですぐっちゃすぐなんだけどな・・・それより今年はどこ行く?去年は裕二の希望で東京まで本探しに行ったが、今年は普通に夏らしいやつを・・・とりあえず裕二に聞くがどこか行きたい場所は?」

渡はファミレスから出て駅に向かうまでの間を今年の夏休みの計画を立てるために利用するらしかった。とりあえず僕は「海・・・かな」と答えておいた。

すると波子さんも「海が良い!」と言い出したので渡は「じゃあ海で!」と言って決定してしまったようだ。

それを聞いた愛花は少し落ち込んだ様子だった。

「愛花は海が嫌い?」そう僕が聞くと愛花は“うん”と軽く頷きそれから

「私、泳げないから・・・」と言って俯いてしまった。

僕は何か良い案がないか考えていると渡がまぁまぁな提案をした。

「俺の家のプールで練習すれば解決じゃん!ってことで来週の土日は空けとけよ~」

決定してしまったらしい予定を聞いた波子さんは手提げから手帳を取り出すと早速予定を入れているらしい。それを見た愛花も同じように手帳を取り出して予定を書き込み始めた。女性人が手帳に予定を書き込んでいる中で僕と渡は手帳なんて持っていないので頭の中にあるメモ帳に口に出しながら書き込んでいった。

「えっと来週の土日は渡の家で愛花の泳ぎの練習・・・っと」

「えーっと来週の土日は俺の家で水着パーティ・・・っと」

いやいやいやいやいやいやいや、違うだろう・・・渡・・・。

僕はそう心の中でツッコミを入れるだけにとどめておいた。それにちょうど駅に着いたので切符を買うため僕はみんなより少し早足で向かった。

それから僕は切符を買って「先に帰る」と皆につげ改札を通るとすぐに電車まで走り飛び乗る。

さっき確かにさっきを感じた・・・ちなみにダジャレじゃない。

僕は走ったせいで乱れた呼吸を整えようと前を向いた瞬間、目を見開いてしまった。

僕の目の前の彼女が口を開いて呟いた。

「ねぇ、もう一度聞くけど縁って人が好きなんですか?・・・・・・」

時間が止まったように思えた。

「ねぇ、聞いてくれてますか?」そう彼女は、愛花は聞いてくる。

「裕二君・・・・・・願いの形は古本市で手に入ります・・・それじゃあ」

「さよなら」そう彼女は僕に言うと隣の車両へと行ってしまった。

僕は追いかけようとはしなかった。いや、追いかけられなかった。

何故か追いかけてはいけないような、そんな気がした。


はい、白猫ノ夏です。

いきなり話が動き始めましたね~。

って私の書く話っていつもこんな調子ですね・・・。

さてさてお話はまだまだ加速していきますよ・・・たぶん。

このあとがきは白猫ノ夏がお送りいたしました。

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