第二章
第二章 昼食と本のカタチ。
君との生活を夢見てた。
いつかの君が笑顔で話しかけてきて、
いつかの僕は来るといいねと笑顔でかえした。
二人で描いた未来は崩れ落ち、
残った未来は僕一人。
君は僕を壊してく・・・
僕は君を壊してた?
服はとりあえず二人とも着替えた。もちろん別々の部屋で・・・だけど僕が着替えてる最中に、着替え終わった愛花が入ってきたときはびっくりした。
突然入ってきたこともだけど、僕が渡した着替えではなくさっきまで来ていたワンピースと同じものを着ていたからだ。
どうやら愛花は着替えを持ってきていたらしい。
そういえばリュックを背負ってきてたっけ・・・と、そのとき思いだしたりしながら、また下着を着けないで・・・とも考えていた。
結局、昼食は二人で焼きそばを作ってみた・・・のだが
「これって・・・えっと・・・焼きすぎ?」と、僕が言えば
「これは焼きそばじゃないよね・・・輪ゴムみたいだよ?」と、愛花がかえす。
まぁ食べないのは勿体ないので一応食べることにしてリビングのテレビの前のテーブルまで運んだ。
愛花も座ったところで僕はもう一度、皿の中にある焼きそばであるが輪ゴムっぽい物体を見て「はぁ・・・」と、ため息をつく。
恐る恐るゴム焼きそばを口に運ぶ・・・
「あれ?美味しい・・・ゴムみたいだけど」と、僕は言った後、前を見た。
既に愛花はゴム焼きそばを半分以上食べていた。
意外と好評みたいだ。などと思いつつ、また眺めてしまってる自分がいた。
僕はすぐに無意味に頭を横に振り、ゴム焼きそばを食べることに集中することにした。
1
昼食を食べ終わると、その片づけをしながら愛花が願いの形について色々教えてくれた。
願いにはそれぞれ形があるらしく、それはみんな違う形をしてて同じ形の願いは無いらしい。そして人の願いは、そのときそのときで変化してくものらしく、同じ願いをずっと持ち続けるのはかなり難しいらしいということ。
「で、願いの形は同じ願いを持ち続けた人が出会う一冊の本。それで願いの形はその願いを叶えたり、食らったりする・・・・・・ねぇ?食われた願いはどうなるの?」
「食われた願いは永遠に叶わず、その願いすら願うことが出来なくなる。だった・・・はず・・・。」
結局のところ都市伝説のようなもので、ただの噂かもしれないらしい。
それを探せるんだろうか?愛花にはあてがあるらしいけど・・・。
「あてって?」と、僕がそう聞くと愛花は自信満々に答えた。
「想いを集める骨董店!」
僕はガクッと肩を落した。
あそこはただの恋愛云々のいんちき骨董品店だったはずだ。
女子高生が一度は入る店で、二度と訪れることの無い店でもある。と、姉から聞いた覚えがある。
毎回のように、彼氏の名前を連呼する奴が居るので、その店で名前を言われた奴は不幸が訪れると、男子の間で今でも語られている都市伝説の一つでもあり、一生男子が訪れることの無いであろう場所だった。
えっと確か・・・
むかしむかし、あるところに一軒の骨董品店がありました。
正直やっていけてるのが不思議なくらい変な骨董品店でした。
売っているものといえば恋愛云々の品ばかり。他の品といえば一冊の何も書かれてない本でした。
あるとき一人の女がその本を買っていきました。その女は三日後「望みが無くなった」と、言いながら死にました。
おしまい。
って今思うと中途半端すぎるよ!骨董品店、出来て確か10年くらいしか経ってないんじゃなかったっけ?それより何より骨董店出番少ないよ!
いや、今は一人でボケたりしてる場合じゃなかった。
思考回路を復旧させた僕はすぐさま愛花に「それは違う」と、言おうとしたときはもう遅かった。
出かける準備を既に済ませたらしい愛花がワンピースを着ていることを忘れてるような感じで跳ねていた。
跳ねるたびに“ふわっ”となるので結構危ない。
「あっ!」危ない関連で思い出した。
部屋のエロゲを片付けてなかったんだった・・・。あぁそれじゃあさっきのは心を読んだんじゃなくて、本棚に並べられたエロゲを見ていったわけか・・・。
じゃあ離れた理由はジャンルを見てってことか・・・確か殆どのジャンルがそろってたっけ?・・・ヤバイな・・・いや、終わったかもしれない・・・春が。今は夏だけど。
あいつは絶対にゆるさない。そう心に刻み込んだ僕は跳ねてる愛花と共に出かけることにした。
色々ありすぎて今日は頭が回らない・・・暑さが原因かもしれないが・・・。
2
僕と愛花は家を出て30分間の間、夏の日差しが照りつける中を延々と歩いて、やっと辿り着いた骨董品店は・・・。
「臨時休業・・・か」
僕がそう呟くとさっきまで暑さを全く感じていないかのように歩いていた愛花は今日の運勢がどうのこうのと呟きながらフラフラと僕に近づいてきて「もう無理」と言うことばを最後に“ぐんなり”と僕に倒れこんできた。
僕はすぐに愛花を重いと文句を言いつつ日陰のあるベンチに連れて行き寝かせると、近くの自動販売機で水を買い“ぐんなり”している愛花にそれを飲ませる。
そして3分が経過したところで「ジョワっ!」と、意味不明な言葉を発しながら起き上がった。が、すぐにベンチに寝転がる。
「水分を朝からまったく取っていなかった・・・まぁ今飲めたしいいかな」
「良くないよ!毎日ちゃんと水分は取らなきゃ!」
と、注意してみたが「睡眠はとってるよ?」というボケによって即刻流されてしまった。
“はぁ”というため息をつき僕は空を見上げた。
まだ7月・・・空には雲とそれから飛行船・・・毎年この時期になると少し都会っぽいこの町で行われる巨大古本市の宣伝のために飛び始めるのだ。
一応毎年のように僕も行ってはいるが、規模がでかくてお目当ての本を見つけることが出来ないので夏の終わりの二日間の開催なのだが初日に少し見て帰ってきて友人たちとゲーム大会をして楽しむのが毎年恒例となっていた。
まぁそれより古本市の前日に行われるお祭りのほうが規模は小さいが毎年変な迷路が出たりするので楽しめる。
どっちにしろ古本市もそのお祭りも一ヶ月近く先の事なので今は気にすることもないが・・・僕の横のベンチで寝ている愛花は頑張って飛行船に書いてある文字を読もうとしている。
「今年もやってきました!古本市の季節が!読書の秋を目指して皆さんどうぞ躑躅第一、第二ホールにお越しください。ってさ・・・そう書いてあるんだ。毎年変わらない。」
僕はそう愛花に読んであげ、さらにこう続ける。
「愛花は本を読むのは好き?」
愛花は“うん”と頷く、そしてベンチに頭をぶつけた。
愛花は起き上がって自分の頭をさすっていた。
僕は愛花の頭に手を伸ばしそして撫でてあげる。それから撫でつつこういってあげる。
「痛いの痛いの・・・痛いの~?」
僕が姉によくやられたやつだった。姉は僕が怪我をして泣いてるとすぐに傍に来てくれた。傍に来るだけなら良いのだが、怪我したところを触ってくるは、撫でては「痛いの痛いの・・・痛いの~?」と、飛ばしてくれないはで。いい思い出なんてものでは無い。
愛花は僕が痛いのを飛ばしてくれないと分かると自分で痛いの痛いの飛んでけ~とやっていた。それをやってる愛花は少し幼く見え、それもまた可愛いと思ってしまった。
僕はこのとき何故か少し息苦しくて、心が震えてるのが分かった。
不安って感じじゃない何か・・・不安に少し似ている。けど不安とは全くの別物で呼吸が乱れる。
嫌な感じだった。
そんな僕を細い腕で、僕よりも少し小さい身体で優しく抱き締めてくれたのは愛花だった。愛花の髪は邪魔にならない程度の長さで夏に吹く少しの風で靡いて、良い匂いがした。
僕は身体の緊張を解いて愛花を抱きしめ、そして頭を撫でてあげた。
すると愛花は安心したのか眠ってしまった。
“すぅすぅ”と寝息を立てて、立ったまま寝てしまった。
僕はもう一度、愛花をベンチに寝かせて今度は膝枕をしてあげた。
そうしてから僕はもう一度空を見上げる。
「もうすぐ夏休み・・・か・・・・今年は海にでも行こうかなぁ・・・あいつら誘って」
夏休みが近づいている。
最後の夏休みが・・・・・・。
3
愛花が目を覚ましたのは空がオレンジ色に染まるか染まらないかの頃だった。
愛花は慌てて起きあがると何も言わずに僕の手を引いて骨董品店のほうへ走り始めた。
「ちょ、ちょっと?どこ行くの?骨董品店は臨時休業だったよね?」
愛花は前を見て走りながら凄く分かりにくく教えてくれた。
「階段を上った先、噴水の向こうの本屋さん!」
むしろ暗号だった。
愛花はその後何も言わずに骨董品店に向かっていた。
すぐにさっきの骨董品店に戻ってきた。すると骨董品店の横にさっきは無かったはずの路地に愛花は走って入っていってしまった。
僕は愛花が路地に入る直前で手を離されたのでまだ路地の前だ。
路地の先には階段があった。
でもそれはありえないことだった。なぜならこの町には坂が無いはずなのだ。なのに、目の前には、階段の先には町があった。
少し戸惑いつつも愛花のあとを追いかけることにする。
ただしゆっくりと歩いてその町に入っていった。
路地の幅は1メートルも無かった。壁は煉瓦で出来ており、先へ進むにつれて煉瓦は石へ、そして階段のところまで来るとガラスか何か透明なもので出来ていた。
階段は全て煉瓦で出来ていて、手すりもちゃんとあった。
階段は200段近くあり、結構急なので手すりがないと少し怖いくらいだ。
階段を上りきったところは広場だった。中心には噴水があり、噴水を囲うようにベンチがその後ろには木が植えられており、さらに木で見えにくくなっているがお店もあるようだった。
とりあえず僕は愛花を探そうとその噴水のある広場に足を踏み入れた。
その瞬間、さっき見たときには居なかった子供たちがボールや縄跳びや一輪車。さらにはベーゴマやメンコ、おはじきやビー玉で遊ぶ子供たちも居た。
子供たちの服装もみんな違っていた。
普通に半そで半ズボンの男の子もいれば、長靴を履いてる女の子もいる。
それこそいつの時代の服かは分からないが、江戸時代とかその頃の服装っぽい子も居る。
それより一番気になったのは子供たちしか居ないことだった。
親が居ないで子供たちだけで遊んでいる。子供たちの年齢はパッと見、10歳にもなっていないくらいだろうか?そう疑問を持ちつつも愛花を探そうと一歩踏み出した途端、頭の中で何かが語りかけてきた。
『遊ぼうよ・・・一緒に遊ぼうよ・・・。』
僕は周りを見渡す。だけど子供たち以外に人は居ない。
もう一歩進んでみる。するとまた声が聞こえた。
「ダメッ!裕二君!!こっちに来てッ!」愛花の声だった。
僕は振り返る。そこには愛花が居た。
僕は愛花のほうへ走る。頭の中でさっきの声が呼び止めるが無視した。
そして愛花は僕が目の前まで来ると手をとってもう一度走り始めた。
今度は階段を駆け下りる。
そして階段を下りきって、路地を走り骨董品店の横に出た。
そこは夜だった。さっきまで夕焼けでオレンジ色をしていた空がすっかり色を変えていた。
僕は後ろを振り返る、とそこにはもう路地は無くコンクリートの壁があるだけだった。
愛花のほうを見て
「さっきの広場は?」
「『永遊広場』・・・都市伝説のひとつで子供が迷い込むとそこで永遠に遊び続けて出てこれなくなる。ってこの本に書いてあるよ。」
そう言ってさっきまでは持ってなかったはずの本を手渡してくる。
表紙には何かの文字みたいな記号が書かれていた。
ハードカバーでまだ買ったばかりの本みたいだった。
めくってみると注意書きが書かれていた。これは日本語で書かれているので読める。
「えーっと、『この本にはあらゆることが記されている。それをどう受け取ろうと読者の勝手ではあるが、一つだけ注意してほしいことがある。この本にはこの世の全てが記されている。この本は欲望には嘘を教え、願いには導きを与える。そしてこの本には嘘しか書かれていない。』ってじゃあこの本はなんの役に立つわけ?」
疑問に思った僕は愛花のほうを見る。
愛花は何も言わずにただ無表情で待っている。僕がページをめくるのを・・・。
僕は本に視線を戻し、適当に数ページを一度にめくってみる。
そこに書かれていたのは都市伝説だった。
「えっと『鏡隣の欲望絶望』で、『あるホテルの3階にある308号室の鏡を男女が二人で見るとそこには二人の欲や恐怖が映る。』ってあの卑猥な鏡か・・・これはこれで地味に怖いけど、えっと他には・・・」
そう言いつつ僕はもう一度数ページを一度にめくる。
「次は『永遠の箱の鳥』で、『マンションにあるエレベーターに一人で乗ると永遠に戻れなくなることがある。詳しくは第1298章の永遠についてを参照。』ってこれも微妙だ~次のは・・・」
さらに僕はページをめくる今度はちょうど半分くらいをめくってみた。
「えっと『死詩蝶々(ちょうちょう)』で、『一人で居るときに突然知らない歌が聞こえてくる。その歌を11回聴いて11時間たつと絶対にその人に死が訪れる。』って怖すぎだよ・・・次で最後で良いかな?」と、愛花に聞くと小さく頷いてくれた。
ほっとして3ページくらいめくるとそこには・・・
「あった・・・『願いの形』だ。・・・えっと『願いをもつ人の前に現れる本。手にした人の願いを叶えるが、願いが変わると全ての願いを食われてしまう。また、その人の願いに形を与えて消えることもある。』」
ここまで読んだところで愛花が傍に来てページをめくった。
そこには・・・
『願いの形の使い方。願いを形にした結晶は自分には使うことが出来ません。自分が最も嫌う人にのみ使うことが出来ます。使った後は使用者は消滅し、使われた人の願いが二つ叶います。』そう書かれていた。
僕が読み終えると同時に本は消滅した。
それと同時に愛花に笑顔が戻った。
そして笑顔で愛花は僕に願った。
「今日泊めてもらえませんか?」
人生二度目の女の子のお泊り・・・一度目はあいつ付きだったからカウントしないか。
「まぁ、姉ちゃんに聞いてみるよ。」
僕はそういうと歩き出した。後ろから“てとてと”とついてくる足音を聞きながら呟く。
「今日は星が綺麗だ・・・あぁ『Stardust3 永遠の星空』買えなかった・・・。」
長かったですね・・・携帯で見ている方は指疲れたでしょう?
あれ?そうでもないんですか!?
そうですよね、これより長い小説なんていっぱいありますしね。
っとテンション下がったと見せかけて、この先ではこれの三倍くらいの長さの章を用意しているのだ!グハハハハハ!
作者が壊れているのは仕様です。
そしてここで次回予告!
ついにあの!ご友人がご降臨なされるようです。
あと言っておきますと、既に第九章までは書きあがっていますので、気まぐれに載せていくつもりです。
このあとがきは白猫ノ夏がお送りいたしました。