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8 小泉 花江。

《要、君はどうしたい、護ちゃんとどうなりたい》


『一緒に居たい』

《どんな形でも、かな》


『β化はしたくないけど、それしか無いならそうする、護ちゃんの子供が欲しい』

《愛してる?》


『うん、ずっと一緒に居たい、死ぬまで』


《例えば、だ。君がΩ化しても護ちゃんが受け入れなかったら、どうする》

『離れないなら何でも良い、一緒に居たい、もう離れたくない』


《そうだね、嫌だね》

『カビの影響分類でも何でも良いから、一緒に居たい、離れたくない』


《凄く大変だよ、私ですら前例を知らない、Σ用のΩになったらどんな事になるか分からない》

『護ちゃんさえ居れば良い、何も要らない』


《産むのは大変だよ、寿命すら縮む》

『無駄に長生きするよりは良い』


《はぁ、思い切りが良いお父さんに似過ぎだ、寿命が縮む事を護ちゃんは喜ばないんじゃないかな》

『説得する、護ちゃんの言う通りにする、我慢する、何にでもなるから離れたくない』


《君ねぇ、嫌われる心配をしないのかい》

『護ちゃんに嫌われる様な事はしてないし、しない、何でも言う事聞く』


《分かった、返してあげるから、嫌がる事は絶対にしないんだよ》

『うん』


 寂しくて悲しくて、性欲が湧き続けてどうしようもなくて、堪らない。

 αを使ってΩ化しようとしてたのに、舐めてた。


 今ですらこんな状態なのに。


「佐々木君、何処か痛い?」

『ううん』


「どう?落ち着く?」


 いつもなら落ち着くのに。


『嬉しい』

「嫌じゃない?」


『嫌の反対』

「でも泣いてるよ?」


『色々、グチャグチャで、悔しい』

「久し振りに会えたもんね、嬉ションする位」


『犬も元は狼だからね』

「人によって家畜化した生き物だからね、蚕も」


『人が好きなんだよ、飛べない程度はどうでも良い位に、人を安心させる為に敢えて飛べなくなったんだよ』

「コッチとしては、自力で外敵から逃げて欲しいけどね」


『手間を掛けて欲しいんだよ、好きだから』

「命が危なくなるのに」


『それでも関わって欲しいんだよ、種として、人に愛される事を選んだ』


「コレだけ頭が良いのに、何で僕のクラスに居たの?」

『蚕と同じ』


「死んじゃうかもなのに」

『死ぬ方がマシ』


「カビの影響分類のせいじゃない?」


『だから何?もう切り離せないのに』

「後で後悔して欲しく無いんだ、動物を捨てる人も子供を虐待する人も、思ってたのと違うって言うんだよね。Ω男性の妊婦さんとも知り合ったけど、舐めてたって言ってたし」


『でも離れたく無い、ずっと、どうすれば会えるかどうすれば一緒に居れるか考えて、探してた』


「それが、Ω化?」

『護ちゃん用になれれば良いけど、そう都合の良いαって中々居なくて』


「あぁ、死に掛けてるか、死のうとしてるαを探した?」

『うん』


 触りたい。

 触って欲しい。


 もっと近くが良い。


「そんなに好き?」

『うん』


「大変だよ?陣痛、立ち会ったんだから」

『羨ましい』


「ふふふ、ちゃんと僕の言う事を聞く?」

『聞く、何でもする。寂しかった、会いたかった、もっと一緒に何処かに出掛ければ良かった。手料理を食べさせておけば良かったと思ったし、一緒に居られるのが凄い羨ましい、一緒に居られるなら何にでもなる。嫌なら触らないから、話し掛け無いから、一緒に居たい』


「他のΣに靡いたら、拗ねるかもよ?」

『護ちゃんとだけ会う、他はどうでも良い、護ちゃんが居るだけで良い』


「僕、要君に酷く我慢させたり、辛い思いをして貰いたく無いんだけど」

『本当に他は要らない、護ちゃんが楽しい事だけが良い』


「部屋、本当に何も無いもんね」


『変でごめんね、困らせてごめん、でも』

「出来るか分からないけど、試してみようか」


『良いの?』

「ダメでも怒らないでね?本当に嫌いになるよ?」


『ならない、ありがとう護ちゃん、大好き』




 ヤれば出来るのって、刺激されれば出来るのって、ある意味で男の強みなのかも。


 出来たからしたし、噛んでもみたけど。

 相変わらず匂いは分からないし、凄い好きかって聞かれると。


「ごめんね要君、要君程は好きって気持ちが」

『ふふ、そりゃαやΩじゃないんだし、仕方無いんじゃない?』


「でもさ、好きを等倍に返して貰いたいでしょ?」

『同じ因子持ちならそうなんだろうけど、Σなんだし、ヤれただけマシじゃない?』


「そりゃ男だからじゃない?」

『護ちゃんは博愛主義者だから分からないだろうけど、触られると逆に萎えるんだよね』


「有るんだ」

『Ωっぽい子に冗談でね、キレそうになったわ』


「えー、じゃあ僕ビッチっぽいじゃん」

『誰かに触られたの?何、誰にされたの』


「いや、無いけど」

『他を試して欲しく無いけど、止めない、嫌だけど』


「僕、君にはそう思って無いんだけど」

『あまり人を、生き物を嫌わないもんね護ちゃん、それはそれで好き』


「良いの?そんなに好きじゃないかもなんだよ?」

『でもヤれたし』


「そんなもの?」

『他の因子持ちの事は分からないけど、俺は平気、嬉しい』


 頭をグリグリしてきて、本当に犬みたい。

 でも、動物とは流石にする気にはなれないし。


「動物よりは、好きかも?」

『嬉しい』


「他と違うのに」

『同じ必要は無いんだし、別に良くない?護ちゃんは嫌?嫌な事は何でも言ってね?』


「本当に犬みたい」

『じゃあ犬は飼わないでね、俺が護ちゃんの犬の役なんだから』


「じゃあ、ゴハンも用意しないとダメなんだ」

『そこは俺に任せて、護ちゃんの料理は嬉しいけど見てて怖いし味が微妙だから』


「あ、うん、そこはお任せします」

『うん、任せて』


 料理してくれる犬、便利。




《はい、お赤飯》

「ありがとうございます」

『紅葉さんさぁ』


《ありがとうお母様、でしょうが》

『ありがとうございますお母様』


《はい、じゃあ頂きますしようか》

「いただきまーす」

『いただきます』


 流石に少しは恥ずかしいか、要。


 それにしても、大きくなったなぁ。

 手が掛からないで楽だと思ってたけど、結局は、いつか手が掛かる様になるって本当だったわ。


 申請、どうすべきかな。

 コレ間違ったら隔離、確実に監視対象では有るし。


 つか、この子、どうするつもりだったのか。


《要、どうするつもりだったのよ》


『頭の良いお母様なら言わなくても分かるんじゃないですかね』

《そう言う思春期特有のやり取りは良いから、護ちゃんの為にも先の事を教えなさいよ》

「あ、そっか、変異してたら監視対象になりそうだけど、定期検査はいつ?」


『3ヶ月後』

《なら身体は安定してる頃か》

「αだと多分、僕の方には来れないし。あ、真琴さんに連絡しようと思ってたんだ」


『あ、ごめん、親には』

《そこは連絡させたさ》

「少し具合悪そうだから付き添うって、今日はお姉ちゃんも来てるみたいだし、食べ終わったら帰ろうと思って」


『一緒が良い』

《要ぇ、アンタのフェロモンが他に影響しないとは言い切れないんだからね?》


『でも影響すれば護ちゃんの地区に行けるかもじゃん』


 緊急要請で有れば、確かに手間は省けるかも知れないが。


「良い子にする?言う事ちゃんと聞ける?」

『聞く』


 犬か。


 いや、狼も人に慣れて犬として家畜化されたんだ。

 騒動が起きなければ検査まで黙っていれば良い、もし何か有れば。


《道具を揃えるから、私も一緒に行くのが条件だ》


『分かった』

「お世話になります、紅葉さん」

《いえいえ、コチラこそ》




 ウチの子に相手が出来るなんて。


《不束者ですが、どうぞ宜しくお願い致します》

『お母さん?!』


《アンタだって分かるでしょう、βでも、すんなり結婚まではいかないんだから。こうして護だけで良いって言って下さるαがどれだけ貴重か、いえ、αでは無くてもよ。お互いに他の候補者も容認しろって言われていた時代も有るの、しかも産めたら産めたでβすら共有しようとするβすら居た、結婚しようと思った相手がそうだったの。お父さんはね、絶対に共有しないって約束して、正式に書類も書いてくれたの。気持ちって、凄く大事なのよ》


『でも、それは、それこそΩ化してるかもで』

《確かに要ちゃんが大変だと思うわ、でも産んだアンタなら分かるでしょう、産みたいと思うんだから》


『だけじゃなくて、Σ用のΩ化なんて聞いた事も無いし、それこそどうなるか』

「そこはごめんお姉ちゃん、他のΣやαに取られるのは嫌って程でも無いんだ」


『なら余計に』

『俺は大丈夫なんで気にしないで下さい、永遠に離れ離れよりマシなんで』


『でも、だからって、本当に凄く大変なんだからね?』

「あ、お姉ちゃん以外にも見たよ、踏ん張り過ぎて顔の毛細血管切れた人、踏ん張り過ぎって怒られてた」


『だから、それもだけど』

《母性が炸裂して混乱するのも良く分かるわ、けどね、アンタが居なくなったら子供は1人になる。幾ら孤独が平気な子だったとしても、愛して貰える相手が居た方が、お母さんは安心だわ》


『護は動物とか生き物にしか興味が無くて、料理は下手だし作っても全然喜んでくれないバカで、直ぐに食べ忘れちゃう手間の掛る子だし。仕舞いには隣の翼ちゃんがアレで、私達には言わなかったけどαにめちゃんこ除け者にされて、なのに気にしない子で。兎に角、変な子だから、だから』

『それ全部が好きなんですよね、こうなる前から』


『アンタ、変わってるわね?』

『自分でもそう思います』


『大変だよ?私ですらイライラしたし、面倒だって思ったし』

『そこは俺も、料理の時は流石に不安だったんで分かります』


『ほっとくとそのままニンジンだセロリだ食べてばっかりで』

「あ、コーンスープは作れる様になったし、飲んでたよ」


『たよって、どうせアンタそればっかりだったんでしょうがよ』

「うん、怒られた、偶に作って貰ってる」


『ほらぁ』

『俺は一応、作れるので』

《ウチの子には一通り出来る様には仕込んでいたんですけど、もし何か》

《いえいえ、ウチの子なんて研いで保温しちゃう様な子なので、寧ろ作り甲斐が無いかと》

「たこ焼きはクルクル出来るよ?」


『昨日食べたもんね』

「それにお好み焼きはひっくり返せるし」

『だから、アンタそこまで仕込めないでしょうよ、急に考え事し始めて。コレ、この指の傷』


「僕よりお姉ちゃんが驚いてたもんねぇ」

『もう大絶叫よ、少し目を離した隙に血塗れになってるんだもの』


「だぁーーーって」

『お父さーんって呼んじゃったわよ、居なかったのに。もう、本当に危なっかしいし動物は拾いまくるし、生きるの下手過ぎなのよアンタ』


「でも洗濯は出来るもん」

『ちょっと服を分けてボタン押せば終わ、またアンタ、コレ干さないで全部乾燥させたでしょ』


「忙しかったんだもん、眠かったし」

『もー』

『俺がお世話し放題だね』


「だね」

『だねじゃない、要君が動けなくなったらどうすんのよ、爪切りだって大変だし料理だって匂いでダメになる事も有るんだから』


「お金で何とかする」

『またそんな、まだ働き始めの分際で』

《そこは護の貯金と、護の老後の、結婚資金です、どうぞ》

《あ、どうもご丁寧に、失礼致します》


 どんな子が産まれるか、どんな子に育つか。

 何も望まなかったせいなのか、護は無欲で、いえ生き物特化の子になって。


 だからこそ、貯蓄をと。


『お母さん、コレ、私の結婚祝いより』

《アンタに面倒掛けさせない為よ、私達が産みたくて産んだ子、アンタに面倒見させる為に産んだんじゃないんだもの。コレ位して当たり前、私達の我儘で産んだも同然なんですから》


 Ω化するなら、産まれなければ良かった。

 そう嘆いてた職場の同期を見て、出来るだけ親として守るべきだって思ったのよ。


 望んで産まれたワケでも無い、しかも過酷な男Ωになろうだなんて誰も。


 最初は女の子で安心したけれど、男の子だって言われた時に覚悟したのよね、どんなカビの影響分類の組み合わせからでもαは産まれる。

 けれど、護はΣ。


 付き合う事は勿論、結婚なんて無理だと思っていた。

 αの影響を掻き消し、妊娠率を低下させる存在だ、と今でも信じられているのだから。


 だからこそ、特区に入ってくれた事で、もしかすれば友人が出来るかも知れないと。


 それがこうして結婚するだなんて。

 心配は分かるわ、けれどもαがココまで懐いているんだもの。


 あぁ、問題は翼ちゃんね。

 護がこんなに嫌がる子は初めてだし、少しご相談させて頂かないと。


《ありがとうございます、コチラでも幾ばくかの貯金は有りますので》

《では少し、向こうで》


《はい》

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