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第一章 その4

翌日。昨夜は吹雪が吹いていたが、どうやら収まったようだ。打って変わってからりと晴れた寒空の元、ヴァイオレット、クラウン、スカーレット、オフィーリアは馬車に乗ってノーザン国の王都グレンツィアへと向かっていた。トワイライト領であるベルタ街から王都までは二時間ほどかかる。王侯貴族に自らの主、そして計画のキーパーソンと重要人物の揃ったその馬車の中は、オフィーリアにとっては緊張ばかりが残る。銀世界が流れていく窓から後方を覗くと、この馬車ほどではないがしっかりと装飾の施された高級感ある馬車がもう一台、ついてきている。あれにはクラウンの側近とラトゥナが乗っていた。ヴァイオレットは王立魔法士団を本格的に籠絡するため、早朝から計画の再確認でオフィーリアとラトゥナを呼び出した。ラトゥナは革命に乗り気なのかと顔を合わせた時は驚いたが、どうやらオフィーリアが給仕を押し付けてしまったことで革命について知ってしまい、同じ様にヴァイオレットに脅されたそうだ。「命が脅かされなければ安いかな」と苦笑していたが、心の内ではヴァイオレットに不信感を持っていそうだった。

「王立魔法士団の団員は西隊、東隊で分かれています。そしてその二つの隊の隊長が、わたくしたちの目的。ですが、彼女たちを最初から仲間にできるとは微塵も思っていません」

ヴァイオレットは眠たげな眼を擦りながらそう言い切った。ではどうするのかとすでに来客していたスカーレットが問うと、ヴァイオレットは文机の収納から羊皮紙を引っ張り出した。走り書きされたメモのようなそれはヴァイオレットの筆跡ではなく、すぐには読めなかった。

「わたくしの友であるアイシアさんは元王立魔法士団員でして。彼女にそれとなく内情を探らせました」

羊皮紙の一文をヴァイオレットが指す。

「狙いは両隊の副隊長、ヨウナとエミール・レガート・ヨハネ・リアラド。スカーレットさんは会ったことがありまして?」

「!」

どちらも「ゲーム」の登場人物だ。ヨウナは西隊の副隊長で、エミール・レガート・ヨハネ・リアラド、ヨウナやスカーレットにはミヨと呼ばれている、は東隊の副隊長。

「何度か会ったことはありますが、あまり付け込める隙はなさそうですよ?」

「付け込む必要はありません。彼女たちはわたくしに味方してくれます」

「というと?」

ヴァイオレットは椅子の背もたれにより掛かると、レースに彩られた上着の内ポケットから一枚の小切手を取り出す。

「西隊の副隊長、ヨウナは出自の関係上、金に目がない。金ともう一つ、その条件さえ揃えば彼女は簡単にこちらへ寝返る」

小切手には目が眩むような金額が記されている。さすが公爵、としか言いようがない。

「ちなみにもう一つの条件というのは?」

「ヨウナの好奇心が満たされるかどうか、ですわ。彼女は戦いに目がない。この革命がどれほどの戦いになるかは未確定ですけれども、おそらく興味を示してくれるでしょう」

小切手を内ポケットにしまい直したヴァイオレットは、いかにも悪巧みをしていますといった表情をしていた。上座に座るヴァイオレットを見ると、クラウンと何やらこそこそ話をしていた。手持ち無沙汰に横髪をいじっていると、こそっとスカーレットが話しかけてきた。

「オフィーリアさん、ですよね。ヴァイオレット様の側近の」

「はい。」

「その、聞きたかったことがあって。私達、会ったことありません?」

「……は?」

唐突なその発言にオフィーリアは固まる。スカーレットの可愛らしい顔がすぐ近くに迫っていた。

「オフィーリアさんって、男爵令嬢でしょう?」

「そう、ですね。一応、ですが」

「私も男爵令嬢なんです。知っているかと思いますが」

男爵令嬢どうし、会ったことがあるとでも言いたいのか。生憎オフィーリアの実家スフィー家は爵位も領地もそっちのけで酒と欲に溺れる悲しい人間を当主に据え置いていて、貴族とも呼べるか怪しいような家である。オフィーリアが産まれた頃には財政はすでに傾いていて、体が成長し始めたらすぐにクレイヤー家に使用人として放り込まれたので、スフィー家の令嬢として社交界に出たことはないのだ。故に、スカーレットに会っているはずがない。

「どこで見たんだったかなあ……」

スカーレットはオフィーリアの顔をまじまじと観察する。その視線が居た堪れなくてヴァイオレットに視線で助けを求めるが、あっちはどこ吹く風でクラウンと話をしていた。

「いや、その、スカーレット様……」

「もう少しで思い出せそうなんですけど」

うんうんと唸っている。知ったこっちゃない。オフィーリアが辟易していると、ガタン!と音を立てて馬車が停止した。窓の外を見ると、活気ある街並みの向こう側に、立派な王城が見える。

「オフィーリア、スカーレットさん。グレンツィアにつきましたよ」

助かった、とスカーレットの側から逃げ出し、エスコートのため扉を開けて降りる。冷え込んだ空気に外套の前を閉めて、ヴァイオレットに手を伸ばした。

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