2話 渋谷と戸田、姫と心花
今日は2話投稿です!
「ふう、なんとか間に合ったね。良かったよ」
「この乗り物、馬車みたいですね!」
「そう?馬車に乗ったことないからよくわからないけど。だけど、馬車の何十倍ものスピードだからね〜最初はビビるでしょ」
外の景色が見える。見たことのない高い建物がずらーり。これらは「ビル」って言うらしい。こんな高い建物、城と修道院しか見たことがないよ......しかも四角い長方形だし。この世の中四角に満ち溢れてないか!?
「家まではまだ遠いから、静かな声でなんか話そうか。電車の中だし。そうだ。モダンセストちゃん、だっけ?偽名も考えなきゃ!」
「私の名前、そんな危険ですか......?」
「危険って言うよりかは、キラキラネームとして扱われて、いじめられても困るからさ。こんな名前がいいとかある?」
え、この世界に合う名前か......。どんな名前があるんだろう。例えば彩花さんみたいに『花』がついていて、鮮やかな感じがしたり、逆にひらがなだったら、丸っぽさを感じるし.......。『モダンセスト』と似ているような感じが良いな。そういえば、さっき服を買ってたときに、モダンセストって名前、鮮やかな感じがしても、どこかに『優しい何か』が感じられるんだよね、みたいなことあやかさん言ってたな。『優しい何か』というものは、私の心なのではないか。あと、鮮やかさだったらやっぱり花?心花にしよう!心花って書いて、みはなにしよう!まあ、彩花さんが救ってくれたのもあるけど。
「決まった?」
「はい!心花で!みはなって読みます!」
「みはなちゃん!いいね!気に入った感じ?」
「すごい気に入ってます!」
「良かった!自分自身で名前決める子なんて稀だからさ。運がいいんじゃない?それに、この世界に来たのにはなにか意味があるんじゃない?私はそう思ってる」
「次は、戸田公園、戸田公園。出口は左側です。戸田公園の次は、武蔵浦和に止まります」
「ここで降りるよ。あ、全然タメ口でいいからね」
「了解です!」
扉が開いたので、彩花さんと一緒に降りたとき、驚いた。さっきまで見ていた景色とは全く別物だ。『しぶや』という街は、ビルがたくさんあったのに対し、戸田公園、って言うの?まあ、今降りた場所は自然たっぷりだ。ビルが一棟二棟あるくらいで、あとは住宅や公園だった。
「ここからは歩きだから、手を繋いで歩こう。案内もするし。これからの生活が有意義なものだったらいいな」
「わかりましたです!」
まだタメロが恥ずかしい。王国ではいつも敬語が当たり前だったからさ......。
「ここはね、菖蒲川っていう小さい川。確か川口市も通ってんだっけ?忘れちゃったけどさ。如月家も最近引っ越してきたばっかで......。あ、そうだ。心花の名字って、私と同じでいいかな?」
「如月心花ってこと?」
「そう。それで良さそ?」
「全然オッケー!逆に彩花さんと同じ名字だなんて嬉しいです!」
「良かった。そう喜んでもらえて。そういえばさ、兄弟っていたの?」
「はい。クロレという2つ下の子がいました。やんちゃで、とても可愛いんですよ。クロレと彩花さんと会わせかったな〜」
「そんなにやんちゃなの?それはそれで困るけどね......。あ、ここだよ」
隣の家と比べて少し大きめな家だ。そこに『如月』と書いてある。今日からここで暮らすんだ、って思うとなんかワクワクしてくる。でも流石に城ほどの大きさじゃないから迷い込まなさそう。そこは色んな意味でありがたい。