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無垢

無垢


僕は四十も近い歳の頃、独身で精神を病んでベットで寝ていた。神経が疲れて本も読めないのだ。運動もできない。気分が悪い。

ベットに横になって音楽を聴き、ぼんやりして足をバタバタさせているしかない。僕はこれを「自殺止め」と言った。

 階下からは妹が赤ん坊をあやす声が聞こえた。鳴き声も。妹は東京から避暑のため実家に帰ってきていた。

階下に降りると居間に家族がそろって楽しそうに赤ん坊をあやしていた。

俺は気分が悪いんだよ、と赤ん坊に言いたかったが理解してくれそうにない。仕方がないので、こんにちは、こんにちは

とおどけて踊ってみたが、赤ん坊には受けない。抱こうとすると泣かれる。無垢とは残酷な性格らしい。でもそれでいいんだよ。

でもそれも長くは続かなかった。僕は赤ん坊が憎かった。そんなに簡単に人から愛されやがって。くそくらえ。僕は赤ん坊を殺してしまえばいいのにと思った。僕は死刑にでもなるし、赤ん坊を持てるような幸せな妹をどん底のメンヘルにできる。家族もメンヘルになるだろう。求めているものは既にそこにあるじゃないか? 

でも僕は懸命に善人としてふるまった。そのうち病気もおさまり、この件もうやむやになった。でも僕は心の先でこう感じたことがある。

僕は・君たちが・嫌いだ。

そして小説を書くようになった。少しずつ人間を呪った。今も心の中はこう思う。

僕は・君たちが・大嫌いだ。


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