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第2話 失意の中で掛けられた声

「はぁ、本当にこれからどうしようかなぁ」


 ボクは、【クーデルカ王国】領の中で王都に近いとされ、さらに【ワルジール魔法学校】がある町【ファルランド】の噴水広場でボーっとしていた。

 退学処分にされた後、どうすればいいのか分からないからだ。

 ボクの家は北の辺境にあるため、帰るわけにはいかないし、何より馬車代がない。

 距離的にいえば、馬車で約一週間は掛かる距離なので、徒歩だとどうしようもないし、何より用を足すときに魔物に襲われる可能性もある。


「冒険者になるにしても、魔法学校か冒険者学校を卒業しないとなれないしなぁ」


 そして、冒険者になろうにも魔法学校か冒険者学校のどれかを卒業していないとなれないという。

 つまり今のボクは、何もなれないただの無能な少女と言うわけだ。


「はぁ……、いつまでもここに居ても仕方がないか。 徒歩でも自分の故郷に帰るかな……」


 さっき言ったようにボクの故郷は北の辺境。

 徒歩だとどうしようもないが、いつまでもここには居られない。

 なので、もうどうにでもなれと言う感じで、徒歩で時間を掛けて北へ向かおうと考えた。


「さて、そうと決まればここに長居するわけにはいかないから、早く出て行ってしまおう」


 そう決意したボクは、足早に【ファルランド】から出ていく事にしたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ふぅ……」


 あの【ワルジール魔法学校】のある【ファルランド】の町を出て道沿いに北へと歩き続けて結構経った。

 空はもうすぐ夕方に差し掛かる頃だろう。

 道中の魔物を何とか魔法で倒した後で催してしまったボクは、茂みで用を足し終えた。


「この調子だと、野宿かなぁ」


 夕焼けに差し掛かる空を見て、このままだと野宿になりそうな予感はしていた。

 幸い、町を出る前に野宿用の小型のテントを買ったので次の町へ行くにはこれで事足りる。

 後は魔物に襲われない事を祈るしかない。


「あ、そこの君」


「ん?」


 もう少し歩いて野宿の準備をしようとしていた矢先に、声を掛けられた。

 振り向くと、やや豪華な馬車が停まっており、そこからおじさんと少女が顔を覗かせた。


「何か御用で?」


「いや、高い魔力を感じてこの馬車を走らせた先に君がいたのでね」


 高い魔力を感じてこっちに来た……ね。

 ボクは無能のはずなんだけど、何か勘違いしているのだろうか?


「お父様、こちらの方ですね。 高い魔力の持ち主は」


「え?」


 そう思っておこうとした時に、少女がボクを見てそう言った。

 ボクが高い魔力の持ち主?

 そんな馬鹿な……。


「なら、あのレアミドルボアを倒したのは彼女で間違いはなさそうだな」


「え、え!? 普通のミドルボアではないのですか?」


「そうだ。 レアミドルボアは一人では倒せないレベルの強さを持つ」


 用を足す前に倒したミドルボアは普通のではなくレアものだった!?

 しかも一人では倒せないレベルの強さだって!?


「だが、魔力の高い君なら納得だ。 あの焼け具合から上級の火属性魔法を使ったのだろう」


「えっと、ボクが使った魔法は……【クリメイション】という中級魔法ですが」


「ええっ!?」


 ボクが中級魔法でレアもののミドルボアを一人で倒した事に少女が驚く。

 うーん、にわかに信じがたい。


「予想以上の魔力を持っていたか。 だが、何故その君がここにいたのだね?」


「実は……」


 誰かとも知らない人たちに話すのは憚られるが、行く当てもないボクは僅かな可能性に賭けて、おじさんと少女に正直に打ち明けた。



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