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みくだりはん

作者: 京屋 月々

20代の頃の彼は、昔気質な、いわゆる「俺について来い!」という根拠のない自信にあふれた男だった。

彼は、破天荒で喧嘩っ早くて、お金なんてないくせに、いつも「何とかなる!」と高らかに笑っていた。


今、彼はベッドの上で、言葉にならないうめき声を上げていた。

あの頃の覇気はなくなり、歯が数本しか残っていない、何も出来ない老人だった。


彼の破天荒の穴埋めをするための私の長い人生は、彼の最後を看取るための人生となっていた。


思えば、辛い事の方が多かった。


もっと早い段階で三行半をつきつける事もできただろうが。


私は、ストーブの上のやかんの水を継ぎ足す。


「ほら、もう外は雪で真っ白ですよ」


彼は言葉にならないうめき声をだす。


私が彼に捧げた人生の終着地点は、窓から見せる真っ白な世界のようだ。


彼のうめき声は、この白銀の世界に乗せる心地よいBGMのようだった。


「涼子」


突如名前を呼ばれて、私は目を見開いて、彼に振り返った。


彼はやはり、言葉になっていないうめき声をあげているだけだった。


それは空耳だったかもしれないけれど、私の長い人生の辛い気持ちを癒やす言葉だった。だと思う。

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