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スクール・ジョーカー  作者: 椎凪瑰
第1章 「波瀾の入学式」
14/64

第1章13話   「死の宣告」

 ――三時限目

 きょうは『1-A』と『1-B』が共同でバスケをすることになった。

 そして今、まさにバスケの試合が始まろうとしていた。

 俺と柚暉が率いるAクラス。対峙たいじするはBクラス。

 ボコボコにしてやるか。

 そして俺は視線を飛ばしてくる天に微笑みを返した。

 天は驚いて顔を赤くするが、『頑張って』と合図を送る。

 

 「まったく。しょうがないな」

 

 俺はそう呟いた。

 試合開始の合図となる笛の音が鳴り、試合は開始された。

 俺はすぐに相手からボールを奪った。

 そして柚暉にボールをパスし、俺は場を牽制けんせいする。

 Aクラスには、俺と同じぐらいの運動神経を誇る柚暉がいる。

 つまり、俺と柚暉がいればAクラスは無敵だということだ。

 

 「紅君!」

 

 柚暉が俺にボールをパスした。

 なるほど、かの有名なダンクとやらをしてやろう。

 俺は見事にダンクを決めた。

 Aクラスの歓声が上がり、俺と柚暉は笑みを浮かべる。

 そして着々と時間が進み、俺と柚暉は交互にゴールを決めていく。

 相手のBクラスはというと、一点も入れることが出来ず、唖然としている。

 試合は終了した。

 結果はAクラスの圧勝。

 

 「凄かったですよ」

 「ああ。久しぶりにバスケが楽しかったな」

 

 試合終了後、俺の隣で凛音が言う。

 バスケを楽しいだなんて感じたのは小学生以来だ。

 やばい。楽しすぎるからバスケ部に入ろうかな。

 俺は凛音にを微笑を送って、天の方へと向かった。

 天は俺を見て頬を紅潮こうちょうさせ、もじもじとしている。

 

 「紅さんって、運動得意なんだね……」

 「まあ、俺は運動が得意らしいな」

 

 恥ずかしげに佇む天。

 

 「そうだ。前の告白の返事なんだが、答えが決まった」

 「そ、そうなの……?」

 「そうだ」

 

 俺の言葉に、天は固唾をむ。


 「こ……」

 

 俺はゆっくりと口を開いた。

 

 「私なんかじゃ、無理だよね」

 

 静かに天は呟く。

 屹度、俺が『断る』とでも言うと思っているのだろう。

 探り合いをしたいんだろ? 断る理由がない。

 

 「答えはオーケーだ」

 「え!?」

 

 驚いた様に俺を見つめる天。

 天は若干涙目になっていた。

 

 「あ、わわ……」

 

 俺の答えに、天は慌てる。

 手をあたふたと振り、何かを言おうとしているみたいだ。

 

 「わ、私と……付き合ってくれるの?」

 「ああ、勿論だ。二十分も遅れた俺を待ってくれたし、頑張って告白もしてくれたしな」

 「ひゃあぁ……」

 

 顔から耳の先まで真っ赤になる天は、倒れそうになった。

 俺は天を受け止め、優しく抱きしめた。

 

 「あ、わ、ありが、とう……」

 「まったく。気を付けろよ天」

 「な、名前で呼ばれた……」

 

 愧赧する天。

 そして天は俺の腕の中でじたばたと暴れる。

 

 「おい、あまり暴れるなよ。また倒れるぞ」

 

 俺は再び倒れそうになる天を支える。

 だが天は暴れず、仄かに恥ずかしさを含めた微笑を浮かべていた。

 

 「紅さん……大好き……」

 

 そう言って、俺の彼女となった天は嬉笑した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 天と付き合ってからは、Aクラスに天が訪れる様になった。

 明理は嫉視していたが、屹度大丈夫だろう。屹度。

 凛音と杏子は何も言わない。

 だが、クラスメイトは俺と天が付き合っているという噂を流し始めた。

 これは流言飛語ではなく、事実だ。

 今日も天が来た。

 俺は天に微笑を送って廊下に出る。

 

 「紅さんってどこに住んでるの?」

 「ああ、今度ラインで住所送っとくから。そうだ、今度一緒にどこか行かないか?」

 「お買い物……今日は私空いてるよ」

 

 どう考えても天は今日行きたいみたいだ。

 

 「そうだな……じゃあ俺は天の家に向かいに行くよ」

 「わ、私の家に向かいに来る……」

 

 顔を赤らめる天。

 何を考えているのだろうか。

 俺が家に向かいに行くだけだぞ。

 そんなに恥ずかしいことなのか?

 

 「じゃあ放課後ね。で、どこに行くの……?」

 

 俺は不敵ににやりと笑い、

 

 「今日は学校が珍しく昼に終わるだろ? なら凄いところに。その名も――」

 「そ、その名も……?」

 

 言葉の続きが気になるようで何より。

 まじまじと俺を見て、気にしている天。

 

 「遊園地だっ!! 英語で言うとアミューズメントパーク! 俺もバイトで金溜まったし、今なら二人分あるぞ」

 「遊園地!」

 

 嬉しそうにしている天。 

 

 「ふふふ……紅さんと……」

 

 よだれを垂らして呟く天。

 俺はハンカチで口元を拭ってやった。

 

 「ところで、天」

 

 俺は前から言いたいことがあった。

 

 「何?」

 

 俺の言葉に疑問符を飛ばす天。

 

 「いや、やっぱりなんでもない」

 

 俺は、まだ言わなかった。

 

 「本当に何もないの? 別にそれならいいんだけど……」

 

 取り敢えず俺は微笑で隠して天の手を取った。

 顔を赤くした天は俺の手を取った。

 「行くぞ」

 俺と天は廊下を歩く。

 それも、俺は天の姿を目に焼き付けながら。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「――!?」

 

 俺は靴箱に入っていた一つの手紙に驚く。

 

 「やっぱり犯人からの手紙か。なんだか久しぶりだな」

 

 久々に見た絶望の象徴。

 俺は封を開き、内容を目に通す。

 

 「おいおい、嘘だろ……」

 

 俺は走った。

 走って走って走った。

 息を荒げ、俺は向かう。

 

 「あ、紅さん! ってちょっと!」

 

 凛音の手を引っ張り、俺はまだ走る。

 そして校門の先にいる少女、天のところへ向かった。

 

 「天!」

 「どうしたの? って、あわわ!」

 

 俺は天の手も掴んで急いで走る。

 まずい、まずい、まずい。

 俺はバス停へと二人を強制的に連れていく。

 

 「い、いきなり何ですか?」

 

 凛音は聞いてきた。

 

 「凛音さんも……ていうか、紅さんはどうしたの?」

 

 息を整えている俺に、天は尋ねる。

 

 「大変なことになった。杏子は置いてきてしまったが、それより重大なことがある。凛音、天、心して聞くんだぞ」

 

 二人は頬を強張らせ、俺を真剣な眼差しで見つめる。

 俺は炯々と目を鋭くし、

 

 「――今日、俺が殺される」

 

 「「え!?」」

 

 二人が同じように反応する。

 だが、俺にはそんな余裕もなかった。

 

 

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