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「確かにシエル様、そう言ってたんだな?アイザック」
「ええ、間違いはございません。しっかりとこの耳で聞きましたから」
「俺とお前と皇帝(あの野郎)しか知らないはずなのに…」
「…ええ」
「マリーって言ってたな?」
「はい、奥様お付きの侍女です」
「だったら専属メイドをさっさと決めろ…それから聞き出せ。どんな手を使っても構わない」
「仰せのままに」
サッとアイザックは敬礼する
「そいつが皇帝の味方なら拷問でもして聞き出せ…徹底的にな」
「わかりました。専属メイドを決めてからですね。それより皇帝からの勅書はどんな内容だったのですか?」
「あいつまた殺りやがった」
勅書を机にほうりだす
「えっと」
「レドモンドの弟の方だ」
「ジョー・レドモンド侯爵ですね?」
レオは少しだけ悲しみの色をうかべた
「あいつを悪党に襲わせた」
「…侯爵って警戒心強かったと思いますけど」
「アンナだ」
「え?」
「あいつ、アンナの事を好いていただろ」
「アンナとデートに?」
「ああ、多分帰りに馬車に向かう途中だな…まあそれをわざわざ伝えてきやがった」
「皇帝陛下は本当に殺しが好きですね」
「全部俺への牽制だな…全く暇なヤツだ」
「アンナはどう致しますか?」
「そうだな…アンナは今どうなんだ?」
「一日中悲しみに暮れているそうで」
「そうか…アンナはとりあえずメイドに戻せ。まだメイド長じゃなくていい」
「では、失礼します」
ガタン
「どうしてあそこで俺美しいなんて言ったんだろうな」
あのメイドはただのマリーなのに
でも、やっぱり
「待て!!アイザック」
「なんでしょう?」
「やっぱりその女俺の元へ連れてこい」
「了解です。旦那様」
今頃あいつに似たやつを出してくるとは…面白い
「マリー、マリー!」
「ラナ様!私…寝てました?すみません」
シエルとの間にそういったものは無い…?
「いいのよ、気にしないでちょうだい」
「ラナ様、今日は」
「専属メイドを決めなきゃ…あと」
「あと?」
「お兄様がいらっしゃるわ」
アーテン公爵家には2人のお坊ちゃまがいらっしゃる
たいそうお優しい方々だ…本当に
「え…とどちらですか?」
「どちらもよ」
「…いついらっしゃるのですか?」
「2週間後?」
「…わかりました。専属メイド決めですが、検討は?」