02 出会い②
菜の花畑から帰ったあと、和也から電話が来ていた。なんだろうと電話に出てみる。
「もしもし?どうしたの?忘れ物でもした??」
「違うわ!!忘れ物だったらお前に電話しないだろ!!」
それは確かにと思い、用件を聞く。
「んで?なにか??」
「明日、桜を撮りに行かないか?今年まだいっていないだろ??」
春休みも終わりかけだがまだ見ていなかった。春と言えば桜なのに1枚も撮っていない。
「そうだね。いいよ、撮りにいこう。」
「よし!木村と安田呼んでるから四人で行こう。」
木村と安田は写真部の同級生だ。それにしても男四人で花見っていうのもどうかと思うけど。
「わかった。昼からでいいよね??」
「ああ、それでいい!じゃあまた明日な。」
電話を切って、明日楽しみだなとぼーっと窓の外を見てみると三日月が笑うようにこちらを覗いていた。
次の日、花丘公園の桜並木を歩いて回る。ここの桜並木は有名で人も多い。写真を撮るのも一苦労する。
「いやー、今日も多いな。もう少し減ってると思ったんだけど。」
和也もこの人混みはお手明けの様子だ。木村と安田も同じように愚痴を言ってる。
「ここらで休憩するかー映汰はどうするよ??」
「僕はもう少し見ようかなって。少し遠いけど丘の一本桜を見に行きたいんだよね。」
この花丘公園の並木から少し離れたところに一本桜が咲いている。みんな遠いから行かないが僕は並木より一本桜の方が好きだ。
「あーあそこかー俺はパスだな。ちょっと疲れた。安田たちはどうする??」
和也が聞いてみると二人とも首を横に振る。二人も少し人混みに酔ったようだ。
「じゃあ少し行ってくるよ。帰るときは連絡する。」
「わかった。連絡が来たら集合場所決めて集まろう。」
そうして僕は一人で丘の方を目指す。みんな疲れてるみたいだから早く行って撮ろうと小走りする。
少し走って着いてみると画材が置いてあった。誰かいるのかと辺りを見回してみたけど誰も見えない。まあいいかと丘を少し登り撮る場所を決める。
「ここでいいかなー」
カメラを構えてフレームを覗く。すると急に突風が吹いた。びっくりしてカメラから目を離すと桜の下で黒髪が揺れた。思わず上を向くとそこにはさっきまでいなかった女の子がいて桜を見ている。不意に和也が言っていた言葉を思い出す。
「思うように撮れよ。この世界からここを切り抜きたいって思って撮った写真ほど綺麗な写真はないよ。」
白いワンピースに綺麗な黒髪。その後ろ姿は思わず見惚れてしまうような美しさだ。思わず息を飲む。
僕はカメラを構えシャッターを切る。音に気が付いたのか、振り向きざまに髪を耳に掛ける仕草をする女の子。
フレーム越しに見たとき、世界が色付く瞬間を見ているようだった。