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梅雨の大雨

作者: 茶吉

梅雨時とはいえ、こんなにどしゃぶりの雨が降り続いたことはなかった。いつもは穏やかな流れの中津川に、濁流が流れ込んだために、中津川はたちまちキャパを超え溢れ出し氾濫してしまった。

茶吉の家も含めて村全域が床上浸水し水没した。浸水すると、水が引くまではやれる事がないため、妻のササ美は水着でパチャパチャ楽しそうに泳ぎまわっている。水泳部だったんだからどうよこの華麗な泳ぎを見ろ見ろと言っている。一方、茶吉は、生来の野次馬気質なもので、ご近所の被害状況を見回りに行きたくてたまらない。そういえば、ボートがあったことを思い出した。家業が漁師だったころ使っていたもので、今は納屋で眠っている小型の手漕ぎボートを出してきて、村の被害状況がどんなか、見物しに行くことにした。

道路は今や濁流がゆっくりとながれる川のようになっている。車はプカリと浮き上がり、その他にも犬小屋や郵便受けや編戸などがそこらじゅうにプカプカ浮かんでいる。そんな中、でっかい牛が一頭 、流れを掻き分けゆっくりと歩いていく。中国の山水画のような趣きのある光景だが、牛のその背中には女の子が乗っている。見覚えのある女の子だ。よく見たらカリンちゃんではないか。聞くと、農業高校で育てている牛をたまたま夏季休暇中なので預かって家に連れて帰ってきていたのだそうだ。でっかい牛で、人が3人くらい背中に乗れそうだ。農業高校では災害など緊急事態の時に、牛や豚をどのように救助活動に役立てるかのノウハウを学ぶカリキュラムがあるそうだ。せっかく学んだことを生かすチャンスだそうで、カリンちゃんは、はりきっている。それでこれからもう一人、農業高校に通う同級生のピリカちゃんの家に行くところだそうだ。ピリカちゃんの牛も連れて来れば、牛2頭になり、そうすればでっかい舟を牽引することが出来るので、もっとたくさんの人を助けることが出来るのだそうだ。

さすがは農業高校。地に足のついた人間を育てているなぁ、と感心してしまった茶吉であった。

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