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突然プロローグ消してしまってすいません:(´◦ω◦`):


初めに考えていた内容からだんだん書いているうちに別のものになってしまって……。

あらすじも改めて変えました。題名も。

1話はこのままで行こうと思っています。

こんなんでもいいよと言う方は引き続き読んでいただけると嬉しいです。

さぁ、物語を始めよう。

【ダーヴニム・ダーヴノ】

主人公は君だよ、レイア・アングレカム。足掻いて、踠き苦しみ続ける悲劇の物語を見せてくれ。

それとも君は……、果敢に運命に立ち向かって行くのかな? それはそれで面白そうだ。但し一つだけ。僕を飽きさせないでくれよ?



‎✿*❀٭✿*❀٭



「愛しているよ、レイア……」

そう言って私を見るのは、燃えるような赤い瞳の色とはまるで正反対の氷のようにどこまでも冷たい眼差し。そして、貼り付けたような微笑み。

普通のご令嬢ならばコロッといってしまいそうな微笑ではあるけれど、長年一緒にいた私にはそれがどんな意味を持つかハッキリとわかる。本当に虚しいくらい、ハッキリとわかってしまった。わざとやっているのかしらね。苦笑しそうになる自分の頬を心の中で叱咤し、前を見据える。

これは恐らく最初で最後の彼からの愛の言葉。嬉しくないといったら嘘になってしまうけれど、そうだな。どうせなら何もかも言葉通りにして欲しいものだ。彼の言葉と瞳では明らかに『色』が違う。だから、仕方がないと思う。私が戸惑ってしまったのは。それに婚約者に愛を囁くのなら、もっと言葉に温かみがなければ。春の日のぽかぽかとした日差しのように……。

たったの一言で色んな考えが頭をよぎるけれど、どれも顔には出してあげない。これは意地。彼、ライアン・フォン・ナルシサス様の偽りの愛に対する私のせめてもの意地なのだ。


「ですからこれくらいは許してくださいね?」


俯き、ポツリと聞こえるか聞こえないか程度の声量で呟く。彼の気持ちが私にないことは初めから知っている。そして、私が愛に飢えていることを彼が知っていたことも。その上でのあの言葉は決して許されるものじゃない。私に対する冒涜だ。けれどそんな彼を嫌いになる事は出来ない。元々、愛すること以外はあまり得意ではないから。性分、というやつだろうか。上手く言えない自分がもどかしい。

------いや、今はそんな事気にしている場合ではないわね。

脱線仕掛けていた思考を無理やり戻して考える。そうだ。私はまだ答えていなかった。けれど彼の偽りの言葉に対する答えはすでに決まっている。いつも言っていたから向こうは聞き飽きているだろうけど……。一度くらいは私が彼の心を動かしたかったな。

考えても仕方のないことを考え続けている自分に嫌気がさす。

今、貴方がしないといけない事はただ一つ。そうでしょう?レイア。

『心』からのその問いに頷きつつ、もう一度俯いていた顔を上げる。氷と目が合うこと数秒。見つめ合うのはこれが2回目だ、だなんてまた下らないことを考える。本当に学べないのね。

流石に堪えきれなくて苦笑してしまう。それを見た彼が怪訝そうに眉を顰めたのは見ていないことにしておこう。傷つくのは私ではなく、『心』なのだから。


(ふぅ----)


息を吐いて、ゆっくりと吸う。するとすぐに新鮮な空気が体内を巡る。妙に頭がスッキリするのは、今日という日が来るのを知っていたから。知っていた上で全ての準備をしていたから。見つめ合ったままの視線を固定し、用意していた言葉をそのまま伝える。一言一句違わぬように。最後くらい想いが正しく伝わるように。

彼に見えないように、白くなるほど握りしめていた手をもう一度軽く握り、覚悟を決める。お手本のような微笑みを浮かべて、今------。


「私も貴方様をお慕いしておりました。愛して、おりました」


初めて、彼の瞳に動揺の色が走る。馬鹿王子だと周囲に言われているだけあって意味をしっかりと汲み取ってはくれないかと思ていたけれど……。良かった。伝わった。ホッとしたのもつかの間、直ぐに切り替える。言わねばならない多くの事を今ならきっと伝えられる。彼が何事か言おうとして口を開こうとしたのを目で制し、半ば強引に続けた。


「私、全部知っているんです。貴方が本当は私を愛してなどいないこと。貴方が件の彼女と生涯を共にする為に私を手に掛けようとしていること。他には……そうですね。貴方が私を一度既に殺そうとなさったこと、でしょうか?」


青ざめていくライアンを見ていると流石に良心が傷んでしまうけれど、それにはやはり見ないふりをしなくては。私は全てを平等に、できる限り愛しているけれどそこに優先順位が存在しない訳では無い。そして、愛していると言っても恋愛感情なんていうドロドロとした気持ちの悪いものでもない。私が何かを愛するのは同じように私が誰かに愛してもらいたいから。優先するものにおいて、貴族・王族は下位。平民や『心』が上位を占めている。

今回はあくまで『心』の為。それならば、愛する婚約者様を傷つける結果になったとしても仕方がないと割り切れる。そうなるように、そうしなければならない世界で生きてきた。

それに、ライアンを傷つけるというのは少し語弊があるかもしれない。知られていないと思っていた罪を被害者から並べ挙げられたら……何を言いたいか分かってもらえただろうか。ようは自業自得というもの。

だから『心』が傷つく必要はコレっぽっちもないんだよ。



‎✿*❀٭✿*❀٭



「以上がこの国の現状についてと貴方の犯した罪ですよ。アモール・アドニス王国第一皇子ライアン・フォン・ナルシサス様。けれどこれは貴方だけの問題ではありません。国王陛下も大きく関わってくる重要なもの。ですから、いくら馬鹿王子などと言われている貴方だろうと怒りに任せて無かったことになどしないですよね?」


口を挟む隙さえないほどのスピードで話していたから、てっきり何か言われるかと思ったが……。ピクリと青筋が額に浮き出ているけれど何も言わないのは返す言葉がないからだろうか。今話して聞かせたのは、豊かな土地であふれ、周りの国からも遠巻きにされる程の軍事力を誇り、侵略は到底不可能であるほどの強固な国といわれる我が国アモール・アドニス王国の様々な問題点についてだ。

戦争をどれだけ起こそうと貴族階級はまだいい。しかし、税を払う平民が兵士として送り出され、必死に戦った平民たちが飢えを訴えていたのだ。減税を行う訳でも褒美を与えるわけでもない。これは果たして正しいと言えるか。勿論、答えは否。それ以外ありえない。また、この現状を知っていながらそれを聞き入れてこなかった領主、高位の貴族・王族が近いうちに平民による反乱に敗れる恐れがある。これは可能性の話ではなく、ほんの数年で起きる確かな未来だ。予知ができる訳では無い。けれど私にはわかる。平民の傍に居、共に過ごした時間が長いからこそ、彼らがどういった事に対して反応し、何を行おうとするかが手に取るようにわかる。

だからこそ、次期国王陛下となるライアンに聞かせておいたのだ。私の言葉の意図を汲み取ってくれたかと思っていたから。けれど所詮、馬鹿王子は馬鹿王子だったらしい。


「先程からお前は何を言っているんだ? 税を払うのも兵士として我が国の為に戦うのも平民の義務として当たり前のことだ。それに兵士には功績に応じた褒美は与えている。そんな事も知らないとは……。みなはお前を優秀だというが果たして本当にそうか? ユカリの方がお前よりどれだけ優秀か知らないんだろう。父上もそうだ。知識ばかり求めすぎている、他のことにも目を向けるべきだろうに。」


「あぁ、そういえば、私がお前を愛していないと言ったな。それも初めから……よくわかっているじゃないか。そう、政略結婚のよる利益の為に婚約したまでで愛しているはずがないだろ? つくづく馬鹿な女だな。そしてもう一つ。お前は近々反乱が起きると言った。それは確実な未来だと。ならばこういうのはどうだろうか。私とユカリが恋仲なった事を知った婚約者が嫉妬に狂い、平民を誑かし反乱を起こす。そして、それを事前に知った私が国の為に涙をのみ、自らの剣で婚約者を公開処刑する。中々良いだろう? お前を公の場で殺すのに丁度いいじゃないか。一度目はやり方の問題もあり失敗してしまったが、今回は大丈夫だろう。」


同じ台詞を敢えて返しますよ、ライアン。貴方は何を言っている? 本当に、何を言っているの? 確かに目の前で話しているのにまるで遠くから聞いているみたいにどんどん小さくなって聞こえる。私の言った言葉の意味を理解していなかったのはわかった。その狂気に満ちた氷のような瞳に怯えているわけじゃない。けれど体が震えた。どうしてかなんてわからない。考える時間すら今は惜しい。ただ、言わなくては命乞いの言葉ではなく、それは間違っているのだとハッキリと伝えておかなければ……。でないと、沢山の民が苦しむ。それは何としても、たとえこの命に変えても、防がなければならない。意を決して口を開き、言葉を発っそうとした。けれど、突然首の後ろに激しい衝撃が加えられ発することなく、その場に崩れ落ちる。意識が途絶える直前にライアンの言葉が耳に届いた。


「喜べ。明日、お前が愛した民の前で愛した婚約者によって殺される。大罪人としてな。」


はははと高らかに笑う声がした。いつの間にか暗くなっていた空は血のように真っ赤だったように見えた。

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