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OVERWORLD’s  作者: swallow drop
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1話 星との邂逅

初めましての方は初めまして。Mot0(モト)と言います。何度か加筆修正をしています。

「もし、もしもこの星に奴らが来なかったら…俺達は出会えてたのかな。俺は出会えなかったと思う。だって奴らがいたからこそ、俺達はまた出会えたんだからな。…皮肉なもんだよ。」


そう言ったのは赤い髪の少年。人の気配のない、元の姿はどこにもないその街に彼ら4人はいた。


「ありがとう。君たちと出会えて本当によかった。」

「なんてね。さぁ仕事だ。やってきたぞ。」


高速で4人に近づく大きな黒い結晶体の集合体。"ロマーニア"。

それらに臆することなく彼らは立ち向かう。


赤い髪の少年は笑顔で叫ぶ。

「さぁ行こうか!」


「「リベアライズ!」」






もし、あの日星が落ちなかったら、少年たちはどんな運命を辿っただろう。あぁ、星が落ちる。それは平穏の終わりを告げるものであり、新たな物語の前奏曲でもあった。とある少年が落ちた星の、そのカケラに触れたことから全てが始まったのだ。


夕焼けが沈みかけていた高校からの帰り道、急いで帰っていたその時、空に流れる星を見た。それは空でいくつかに分かれ、それのうち1つはユウマのすぐ近くに落ちた。

落ちたカケラは2mほどで、黒い八面体に赤紫色の十字のラインが入っている。

その中心部分が開き、黒い帯のような物をユウマに逃げられぬよう巻き付け、恐怖を感じる間も無くそのまま中に取り込んだ。

ユウマの意識はそこで途切れた。


(夢だ…。)


ふとユウマの視界に何かが写り込む。それは直ぐに夢の中だと判断できた。暗い海に沈んでいく夢。誰かが何かを俺に言う。


(…ーーーー。)


声。しかし言葉になっていない、言語かどうかも怪しいその声。


(何言ってるんだ?でもこの声に聞き覚えがある…気がする…。)


暗い海の中、その声だけが頭の中に響く。沈んでいく。足掻かなくちゃ、そう体に言い聞かせ、必死に上へ上へと足掻く。


(も……だ……じょ……ぶ…ユ…マ。)


声が聞こえる。どこかで聞いた声。その声が聞こえると同時に暗い海の中に一筋の光が差し込む。


「状態…良好…す。今日……覚ます…定です。」


ぼんやりとした意識の中途切れ途切れの女性の声が聞こえる。誰かに話しかけているようだ。


(夢から覚めたのか…。なら、起きなくちゃ…。)

「ユウマ君、目が覚めたかい?」


ハッと目を開けると、そこは真っ白な病室のような場所だった。見知らぬ女性が心配そうに顔を覗き込み、声をかけた。ユウマはその女性に支えられながらゆっくり体を起こす。


「初めまして。私は神代メグ。ここの研究者の代表だ。あ、ここはね…。」


やや小柄なその女性はフフン、と胸を張って自慢げに名乗った。

そしてその横に佇む色白の男性が割り込むように話しかけた。


「初めまして。自己紹介をさせてもらうよ。

私は三笠キョウヤ。ここは七星教会。私はその司祭…と言っても君には分からないだろうけどね。まぁ、ここの一番偉い人とでも紹介するよ。茜ユウマ。」


そう言って微笑み、ユウマを見た。ユウマもそれに気づき、


「えぇっと…初めまして。」

「三笠でいいよ。」


三笠はなんと読んでいいのかわからないことを察し、優しくそう返す。


「分かりました。初めまして。三笠さん。」


ユウマはベットの上で軽くお辞儀をしてから、こんがらがった頭を整理するため質問をする。


「えぇと…三笠さん、ここはどこですか?何故俺のことを知ってるんですか?」

「ここはさっきも言った通り、七星教会。浦安…千葉県にあるロマーニアに対抗するための組織。…まぁそれはおいおい説明するとして。君の名前は"あの日"倒れてた時の持ち物とか、君の親族に確認取ったりとか。」


ロマーニア。それはユウマにとって初めて聞く言葉。そして"あの日"。いつの日か、ユウマには分からなかった。


(記憶がぼんやりとする…。何も思い出せないな。"あの日"…。俺がここにいる原因なんだろうけど…。)


ユウマが手で頭を押さえながら考え込んでいると、明石が優しく声をかける。


「君は"あの日"の事を覚えているかい?」

「…いいえ。」


ユウマが覚えていないのは、"あの日"と呼ばれるものだけでは無かった。それまでの記憶がないのだ。

そんなユウマに神代は一つ一つ説明した。


「"あの日"…それは10年前、星のカケラが落ちてきた日。東京に1つと他の様々なところに4つ。そして東京に落ちてきた星のカケラは地球外生命体のロマーニアを生み出し、東京の人口のほぼ全てを行方不明にしたの。行方不明なのは、死体も何も見つからなかったから。」


それはユウマにとって信じ難く、受け入れ難い事だった。むしろ信じろという方が無茶である。


「……うん?10年前?」


ゆうまの頭の中にふと疑問がよぎる。ユウマの予想では自分が倒れたのは"あの日"ーー星が落ちた時だと思った。ユウマに今までの生活の記憶はないが自分の名前や年齢、顔だってイメージできる。今は15歳で高校1年。それからの記憶が無いということは15歳の時に倒れたということになる。その10年後…つまり、


「そう。今君は25歳。」


なんてことだ。いや、10年も寝た状態で体が無事でいるはずがない。体を起こすこともままならないはずだ。しかし、腕が痩せ細っているわけでも、体を起こすだけで精一杯ということも無い。というか既に体は起こしている。


「はい。手鏡。ビックリするよ。多分。」


そう言って神代に手渡された手鏡を見る。そこには驚くべきものが写っていた。


「何これ…全然変わってない…。髪も伸びてない…顔も…何もかも!まさか…歳を取ってない?」

「そう。みんないい反応だねぇ。全く羨ましいよ。年取らないって。」


神代は愚痴っぽく言った。しかし、その言葉の中に聞かなければならない単語があった。


「みんな?他にも俺みたいな人がいるんですか!?」


ユウマは体を前のめりにして、神代に言い詰める。


「ハイハイ落ち着いて。君と同じ境遇の子は君を入れて4人。みんな昨日とか一昨日とかに目覚めてるよ。みんな君が起きるのを心待ちにしてる。」


起きれる?と神代に聞かれ、頷いた。ふわふわした感覚の足でなんとか歩く。

三笠に連れられてしばらく歩くと東京と埼玉の南部が赤く塗りつぶされた日本地図が写った壁一面の大きなモニターのある部屋に案内された。

ユウマの前を歩いていた三笠は部屋に入ると正面に見えるモニターを背にして向き直り、


「改めてようこそ、七星教会へ。茜ユウマ。」


そうニッコリと言った。

神代が奥にいた3人に手招きをして、左側に立っている人から順番に名前を言っていく。


「紹介しよう!天城トウヤ君に涼風ミオちゃん、それと瀬戸アミちゃんだ!」


3人は苦笑いをしながらこちらに歩いてきた。

その中の一人、よく目立つ金髪の瀬戸アミはユウマの顔を見るなり、こちらに走ってきた。


「ユウマ!…やっぱりユウマだ!久しぶり!」

「……?えっと…?」


ユウマはいきなりのことに驚いて言葉を上手く言えなかった。もちろん、上手く言えないのは咄嗟のことだったからだけではない。

しかし、そんなことはお構い無しにアミは畳み掛けてくる。


「ユウマも聞いた?私たち10年も寝てたんだよ!」


アミと名乗る女の子はどうやらユウマと面識があるようだった。

ユウマはどんな顔をしていいのか分からず、とりあえずただ笑顔を浮かべていた。


「ねぇユウ…」

「もうやめろ瀬戸!」


尚もユウマと話そうとするアミに見ていられないとでも言うようにアミの言葉を遮る。

アミがうなだれて黙り込んでしまい、ユウマは申し訳なさそうな顔をする。


「ごめんな…覚えてないんだ。」

「私こそ…ごめん…。」


その場に重い空気が流れる。全員が黙り、誰も動けないでいた。

少しでもこの空気を変えようと神代が三笠に提案する。


「三笠、彼らに皆を会わせてみたら?」

「あぁ、アイツらか。混乱することを増やすだけだと思うけど。まぁ…直ぐに必ず会うんだしなぁ。まぁいいや。今会わせよう。」


三笠はそう言って、4人と神代を連れて部屋を後にする。

階段を降りて、しばらく進んだ先。神代が扉のロックを開き、薄暗い部屋の中に案内された。


「さっきも言ったけど、君らを余計に混乱させることになる。でも彼らは君達が必要で、君達も彼らを必要とするだろう。」


倉庫のような、ドックのような部屋の奥まで進んで、更にその奥の扉を開ける。そこには真っ白な部屋が広がっており、その中心に"何か"がいた。

何かの側まで進み、三笠はそれに声をかける。


「リベリオン、連れてきたぞ。」


その声と同時に、それの目に光が灯った。

それは黒い体に4体それぞれ違う色のラインのある、細長い8面体5つで頭部、胴体、両腕を構成する、謎の物体。生き物であるようにはとても見えない。

そのうち白いラインの入った物が前に進み出た。


《初めまして。私たちはリベリオン。まずは私達の紹介からした方がいいですよね。私はGuardian。》


その声は音ではなく、声として直接頭の中に優しく響いた。その声に4人は驚いて声も出なかった。


《こちらの赤いのはBeast。青いのがSaber。そして黄色いのがSniperです。》


Guardianは一通り他のリベリオン達の紹介を終える。ふと暗い青の髪の男の子、トウヤが三笠に質問する。


「これって"あの日"の星のカケラとよく似てるんですけどこれは…?でも大きさが全然違いますよね…。1mぐらい小さいですか?」


その問いには三笠は答えられなかったが、代わりにGuardianが答えた。


《ええ。私達はロマーニアとは敵対する存在なので。根本的に種類が違う…とでも言いましょうか。》


全く意味不明な返答をされたトウヤには疑問が残る。


(そもそもロマーニアってなんなんだよ…。こいつらも…。)


トウヤだけでなく、4人全員のモヤモヤとした表情を読み取ったのか、アワアワしたような動きをして説明を始めた。


《あ!そうでした。皆さんは説明を受けてないんですよね?》


Guardianの問に対し、三笠が頷く。


《そうでしたか。少し長くなりますがお付き合い下さい。えぇと、キョウヤさん、写真を見せてあげてください。》


そう言われ、三笠は懐から数枚の写真を取り出す。


「端的に言おう。この写真には君たちも良く知る"東京"が写っている。」


暗い表情でそう言ってから、それぞれ4人に手渡す。

そこに写っていたのは、別世界と言うのがふさわしい、黒と赤紫の2色だけで彩られた景色。

どこかで見たことのあるようなビルや東京タワー、それら全てが面影を残したまま星のカケラや目の前のリベリオンとよく似た材質に変化している。


《ロマーニアは体のラインの色が違いますが、それ以外の見た目はほぼ同じです。そのロマーニアが"あの日"に大量にやって来ました。そして…東京を取り込んでいったんです。ビルも…人も。私たちリベリオンはそれらに対抗するため、この世界の人達の中から私たちと波長の合う人達…つまり皆さんを選んで、一緒に戦おう、という訳です。》


感情の変化は無い代わりに、声のトーンを落としてGuardianが説明した。

リベリオンの目的や、外がどうなっているのかがようやく分かっ

た。しかしそれでもまだまだわからないことだらけだ。

すると赤いリベリオン、Beastがややぶっきらぼうな口調で、


《まぁ、習うより慣れろだ。外に出りゃ少しは分かるさ。それより奴さん、来たみてぇだぜ。》


そう言うといきなりユウマの手を両腕で挟んで(指が無いため握れない)外へ連れていく。他の人たちも追いかけるように追いかけた。

しばらく進むと外に出ることが出来た。


(海だ…。そんで滑走路?…ここ飛行場なんだっけ…。)


目の前に広がるのは真っ青な海と青い空。山育ちのユウマにとってそれは珍しい光景だった。

そんな景色に見入っているのも束の間、リベリオンに引っ張られて滑走路をしばらく進んでから右を見る。すると荒廃した街の向こうに写真で見たビルと同じ黒と赤紫の街が見えた。

息を切らした三笠にGuardianがロマーニアが来ている、と伝えた。


《向こうから来てるな…。5体か。》


Beastはいかにも人間らしい動きで、腕で目元に影を作って遠くを見た。

不味いな…とBeastが呟くと反転してユウマの方を向き、深刻そうな声でユウマに言った。


《普通にするんじゃ間に合いそうにねぇ。すまねぇな、ユウマ!多少手荒だが、緊急事態だ!》


そう聞こえると同時に、リベリオンの腕が伸び、ユウマの胸を貫いた。



「ーーーーーーーーッッ!!ぁぁあああああ!!」


ユウマは悲痛な叫び声を上げて、立ったまま悶えた。


4体の内、ユウマを突き刺した一体が更に速度を上げて距離を縮め、衝突するかに思われたが、貫いたまま1本の槍のようになり、そのまま体を縮め、ユウマの体の中へ消えた。


《体を少し借りるぞ!少し辛抱してくれ!》


胸の傷口から黒い結晶が生え始め、岩に生える苔のようにユウマの体を埋め尽くし、次第に全身を覆った。

全身を覆われるといきなり誰もが目を覆うほど眩く輝き、次第に輝きが収まる。


ユウマがいた場所に立っていたのは輝く小さな結晶がびっしりと生えたモノではなく、

体は黒い大きな結晶で構成されており、そのフォルムはほぼ直線で出来ている。顔には大きな赤い道化のような十字の目、指先は尖り、二の腕と腕など、関節は繋ながっておらず、結晶と結晶の間はバチバチと青い電気が発生している。腰周りは細く、全体的に角張っている。それは頭身やシルエットこそ人間とは言えなくはないものの、あまりにもかけ離れたその姿に一行は驚愕する。


リベリオンだった。


その顔にはユウマの面影はなく、表情すらもないその顔を猫背の背とともにゆっくりと起こす。

その双眸が赤く煌めき、ロマーニアを見据える。

いかかでしたか?誤字、脱字等は報告していただけるとありがたいです。

主人公は茜ユウマ、15歳です。

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