ていくふぉー
昔々ある国に野心家の将軍が居ました。国王を暗殺して権力を握り贅沢な暮らしをしている将軍の元に勇者がやって来たという知らせが入りました。
ていくふぉー
将軍「勇者か」
副官「勇者ですね」
将軍「国王を暗殺したことがバレたらまずいな」
副官「勇者の名の元に成敗されてしまいます」
将軍「一応聞くけど本物の勇者なんだよな?」
副官「残念ですが本物です。信託を受けて聖剣を抜いた正真正銘神に選ばれた勇者です」
将軍「とりあえず持て成そう。精一杯持て成して賄賂を渡して見逃してもらおう」
副官「戦ったり罠に嵌めたりはしないのですか?」
将軍「馬鹿者!勇者にケンカを売るのは最後の手段だ」
副官「分かりました。肉と豆スープとパンの準備をさせます」
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将軍「よし、何事もなく勇者は国から出て行ったぞ」
副官「良かったですね」
将軍「王様が隠していた綺麗な宝石と自費で賄賂を渡したのが良かったみたいだ」
副官「自分の財布から出したのですか?」
将軍「国から出すよりも自分の財布から出した方が恩着せがましいだろ」
副官「それもそうですね」
将軍「城に住んでいれば衣食住は保証されているから金はそうも要らんのだ」
副官「よ、悪徳将軍。国のお金で贅沢し放題」
(注 将軍の給料が高いだけで、城で食べた分は給料から天引きされています)
おまけ 勇者の視点
数年前、国王がモンスターと入れ変わっていた過去を持つ国にボクはやって来た。入れ替わっていたモンスターはこの国の将軍が退治して表向きは病死になっている。
ボクの役目がもうないこの国に来たのはこの国に魔王と戦う為に必要なアイテムがこの国の宝物の中に有ると啓示を受けたからだ。この国の王女様にその事を知らせこの国に入るとモンスターが国王に成り代わっていたとは思えないほど平和だった。街道を歩いてもモンスターや夜盗と遭遇せず通行人は安心して歩いていた。ボクは王都まで一度もモンスターとエンカウントせずにお城までたどり着いた。
お城に着くと将軍が出迎えてくれた。将軍は質素な軍服を着て、とてもこの国の実権を握っているようには見えなかった。後で聞くと実権を握ってからずっとあの軍服で過ごし着飾った姿は見たことが無いという。住む場所も城の宿舎に泊まり屋敷を持たず、過度な調度品は部屋に置いていないという。
そんな将軍はまずは旅の疲れを取るべきだとお風呂に入るように勧めてくれた。広い浴場で湯につかり手足を伸ばすと豪勢な食事でもてなしてくれた。
食事を終えると将軍はボクに宝石を渡してくれた。なんとこの宝石はボクが必要としていたアイテムだった。他の国では交換条件に難しい事をやらされていたのに将軍は何の見返りもなくアイテムを渡してくれた。さらに将軍は自分の財産から旅の費用にとたくさんのお金をくれた。将軍の暮らしぶりからお金を必要としていないのは分かっていたけどこれだけのお金を何のためらいも無く渡してくれた将軍の器の大きさに感激した。
旅を急ぐのでお城に一泊するとボクはこの国を出た。今まで通ってきた国の中でこの国は一番平和で心が落ち着いた。魔王との戦いが終わったら正体を隠してこの国に移り住むのもいいかもしれない。
そう言えば後で会った王女様に将軍の事を誉めたら睨まれたけどどうしてだろう?




